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「でも…おかしいじゃないですか。
僕が着ていたものや、入れられてたバスケットは上等なものだったということですから、親はきっと貧しくて捨てたわけではないだろうと、シスター達も言ってました。
貧困以外にきっとなんらかの理由があったのでしょう。
僕の身元がわかるようなものは何もなかったそうですし…それに、ほんの少しでも愛情があれば…何か一言書いたものくらい入ってるんじゃないかと思うんですよ。
たとえば名前や…どうかこの子をよろしくお願いします…というメッセージが…
それすらもなかったというのは…悲しいことですが、僕のことが邪魔だったとしか思えないのです。」
「そんな……」
キャロルは、ブランドンの手を取り、目にはいっぱいの涙を浮かべていた。
「キャロルさん…ありがとう。
でも、僕はシスター達にとてもよくしてもらいました。
そりゃあ、孤児ということでいやな想いをすることも度々ありましたが、特に道をはずれることなくここまで生きて来られたのはシスターや孤児院の仲間達のおかげだと思っていますよ。
それに、大人になってしまえば、生い立ちのことなんてそう気にならなくなりますからね。」
「あなたは、ご両親のことを恨んでらっしゃいますか?」
「いいえ……
僕は、生まれつき親がいなかったんだと…そう考えて生きてきましたから。」
ブランドンのその言葉に、キャロルの瞳から熱い涙がこぼれ落ちた。
「ブランドンさん、そんな悲しいことをおっしゃらないで。
どんな事情があったかはわかりませんが、きっとあなたのご両親は…」
「やめて下さい!!
……僕には、親なんていない…!!
最初からいないんです……
……そうでも思わないと……僕はここまで生きては来られなかった……」
「ブランドンさん…
あなたは神のご意志によって、祝福されて生まれて来たのですよ。
それを信じなければ…」
「僕は、祝福なんてされてはいない!!
……だから、捨てられたんだ……」
いつも冷静で穏やかなブランドンの感情が一気に爆発した。
その場を覆い尽くす重い緊迫感に、シスターキャロルは何も言うことが出来なかった。
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