013 : 雪解の川1


次の日からは、思った以上の忙しさが私達を待ち受けていた。
少し急ぎ過ぎではないかと思う程の勢いで、物事が進められて行った。

私は、町の教会に話しに行ったのだが、ちょうどそこの神父の関わる孤児院が建物の老朽化により困った状況になっていたということで、それもまたとんとん拍子に話が進んだ。



「神の思し召しに感謝致します。
こんな素晴らしいお話が舞い込むとは…本当に奇蹟としか思えません。
早速、すぐに知らせて来ます!」

教会の若い神父は、顔をほころばせながら私の手を堅く握り締めた。



なんでもその孤児院はいくつか先の町のはずれにあるそうで、とにかく建物が古く、しかも、狭い場所にたくさんの子供達を収容しているために、環境はとても良くない状況だったという。
クロードは町長やお偉方への資金援助の交渉に出掛け、リュックとブランドンは室内の改装のことをあれこれ手がけているようだ。
クロワはステファンの面倒をみてくれている。
ステファンはにわかに環境が変わりつつあることに多少戸惑いを感じているようだが、クロワにはとてもよく懐き、そのためか彼の顔には笑顔が増えたようにも思える。







やがて、瞬く間に一週間が過ぎた。
孤児院からは十六人の子供達と、二人のシスターが到着した。

屋敷の前で、皆、一様に口を開けて呆然としていた。
新しい住処のことは聞いていたのだろうが、予想していたものとはまるで違ったのだろう。
しかし、次の瞬間、子供達の間から大きな歓声が上がった。
これからはこの広くて綺麗な屋敷に住めると言う事で、嬉しくなったのだろう。
シスター達が止めるのも聞かずに、屋敷の中に走り込んで行く。
その様子を見ていたステファンも、何か感じるものがあったのか、子供達と一緒に駆け出し、その後をクロワが慌てて着いて行った。



「この度は本当にどうもありがとございました。」

年配のシスターが、私の傍に来て微笑んでいた。



「いえ…私は、お手伝いをしているだけですから。
お礼なら、この屋敷を買ったブランドンさんに…」

「もちろんですわ。
でも、ここまで来られたのは本当に皆様のお陰ですから。
こんな立派なお屋敷に住めるなんて、今でもまだ信じられない想いです。」

そう話すシスターは、とても慈愛に満ちた優しい眼差しをした女性だった。


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