009 : 戴冠式1


それから二、三日もすると、男はすっかり回復した。



「本当にお世話になりました。
見ず知らずの私に、こんなに良くしていただきまして感謝しております。」

男は、名をブランドンと言った。
ステファンの亡くなった父親の屋敷を探していることは、すでにステファンから聞いていたので、私達はそのあたりのことをブランドンに詳しく聞く事にした。
私達も今までに幾多の町を旅して来た。
何か手掛かりになる情報があるかもしれないと思ったのだ。



「そもそも、僕とフランクリン…ステファンの父親なんですが、彼との出会いは船の上だったんです。
遠い異国での戴冠式を見に行くために、僕は船に乗りこみました。
半年近い長旅です。
船内をうろうろしているうちに、彼に出会い、そのうち親しくなったんです。
なんでも、彼の一族はその国の王家の血が流れてるとかなんとか…
きっと、先祖の作り話だと思うけど、それでつい気になって戴冠式を見に行く気になったと彼は言ってました。
町はお祭り騒ぎで大変賑わっており、どこからこれほどの人が集まって来たのかと思う程のものすごい人でした。
彼とはしばらく一緒に行動するつもりだったのですが、その人並みに紛れて途中ではぐれてしまったのです。
ずいぶんと探したのですが、とうとう彼をみつけることは出来ませんでした。」

「あれっ?おかしいな。じゃあ、なんであんたがステファンを連れてるんだ?」

「それが、またまた不思議な巡り合わせなんです。
僕は、しばらくその大陸を見て歩きました。
そのうちに好きな女性が出来、そんなこともあっていつの間にか六年もの年月が過ぎていたのです。
ところが、その女性と少しばかり嫌な別れ方をしてしまいまして…
僕はもうその大陸にいること自体、我慢ならないと感じるようになっていたのです。
僕は大陸を離れることを決意して船に乗りこみました。
そして、その船でフランクリンに再会したのです。」

「六年ぶりに乗った船で再会なんてすごい話だな!」

「ええ、僕も信じられない想いでしたよ。
彼はもうとっくに自国に帰ったものだと思っていましたからね。」


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