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それから私達はいくつかの町を通り過ぎた。
これといって特徴のない小さな町だ。
私達は、今までにこのような町を一体いくつ通り過ぎて来ただろうか…
記憶の片隅にも残らない…名前さえも知らない町を過ぎた後、やっと少しばかり大きな町に辿りついた。
今の所は、まだ路銀にも困ってはいないため、ここで職を探すつもりはなかった。
「うわぁ、こいつは馬鹿でかい屋敷だな!」
宿を探して町の中を歩いているうちに、一軒の屋敷の前を通りがかった。
リュックが、足を停めたのも無理はない。
彼の言う通り、その屋敷はとても立派なものだった。
背の高い門の遥か向こう側に、まるで宮殿のような屋敷が目に映った。
遠くからでもその建物がずいぶんと古いものだということはわかる。
今は灰色に近くなっている外壁も、元々はおそらく雪のように真っ白だったのだろう。
人間でいうならば、死期の近付いた老人のようだと私は思った。
「爺さんの屋敷も立派だったけど、こいつは比べもんにならないな。
とんでもない金持ちってもんはいるもんなんだな。」
「そういえば、地下庭園のバスティア家よりも敷地は広いような気がするな。」
「あぁ、あそこもすごかったなぁ…
この屋敷にもあんな施設があるのかな?」
「まさか…あんなものはそうそうあるもんじゃないぞ。」
私とリュックは、屋敷を見ながらそんな会話を続けていたのだが、ふと見ると、クロワとクロードは所在無さげにあたりの風景を見回している。
屋敷には二人共ほとんど興味が無さそうだ。
「リュック…そろそろ…」
二人のそんな様子に気付いた私がリュックに声をかけた時、一人の初老の男がリュックの傍に近付いた。
「でかい屋敷だろ?」
「あぁ、本当にすごいな!
あんた、この町の人かい?
あの屋敷にはどんな奴らが住んでるんだ?」
「今、あそこに住んでるのは…亡霊だけさ。」
「ぼ…亡霊?」
男は、リュックの反応にくすっと笑った。
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