005 : 歴史は繰り返す1


「なんだか、故郷を離れるような気分だな。」

「確かにその通りだな。
少しばかり長居をし過ぎてしまったようだ。」

「しんみりしてても仕方がないよな。
俺達は、旅人なんだから。」

「君には帰るべき場所も、待っていてくれる人もいるじゃないか。」

私の言葉に、リュックは苦笑いを浮かべた。



「いつ帰るかわからない奴を待ってるような馬鹿はいないと思うぜ。
でも、それで良いんだ。
いや、その方が良いんだ。」

「リュック……」

「でも…心の中では、支えにもなってんだぜ。
たまに、彼女の笑顔を思い出すだけで、俺は幸せな気持ちになれるんだ。」

「……やもめの私の前で惚気るつもりか…」

私はリュックの脇腹を軽く小突いた。



「あんたが、先に言い出したんだろ!」

少し怒ったような顔をしながら、リュックが私の身体を押し返す…

本心から怒っていないことはわかっている…
偶然の出会いから始まり、気が付けば、いつの間にか私の最も信頼出来る親友になっていた。
明るく開けっぴろげなその性格の裏側で、彼はいつもどこか冷めた所があった。
それは、彼が気の遠くなる程の長い時を、たった一人で生き抜いて来たためか…



「どうかしたのか?」

「……いや、なんでもない。」

「……あんたはいつもそうやって何かを考えてるんだな。
そして、そのことを話さない。」

「話す程のことじゃないからさ。
そんなことより…」

私は、先を歩くクロワとクロード、あご先で指し示した。



「今日は妙に仲が良いんだな。」

「……ん?もしかして妬いてるのか?」

「まさか……」

「俺は、クロワさんにはあんたの方が合ってるように思うんだけどなぁ…」

「そんなことを言ったら、先生が怒るぞ。」

私とリュックがそんな他愛無い話をしているうちに、隣の町が見えて来た。
以前、試合に欠員が出た時に、連絡のために来たことがある。
私達はその町を素通りし、もう一つ先の町まで足を伸ばすことにした。
暗くなる頃には、着けるだろうということだった。
今夜はその町で、休む事になりそうだ。


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