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「何を言い出すんじゃ。
そんなことは気にせんでええ。
マノン達にはどうせ新しい家を建てようと思ってたんじゃ。」

結婚式の数日後、私達はそろそろ町を出ていこうと思っているということをルイスに打ち明けた。



「それだけじゃないんだ。
もう忘れたかもしれないが、俺達にはちょっとした目的があってそれには金が必要なんだ。
それで、旅をしながら働いてたりしてるわけなんだけど、ここは居心地が良過ぎるよ。
このままいたら、俺、ずっとここに居着いてしまいそうだしな。」

「ええじゃないか。
この町にずっと住んだら…」

「残念ながらそうはいかない。
このままここにいたんじゃ、本当に俺は目的をやり遂げられなくなっちまう…」

「……そうか、決心は強いんだな。」

リュックは力強く頷いた。



「残念じゃ…
おまえのことは実の息子みたいに思うておったのに…」

「俺もだよ。
今まで本当に世話になったな。
また、いつか立ち寄らせてもらうよ。」

「そうじゃな…わしが生きてるうちに来てくれよ!」

「良く言うぜ。
あんたは殺されても死なないだろうぜ。」

リュックは、ルイスの肩を叩き、二人は豪快に笑っていた。
仕事の引継ぎもあるため、私達は、あとしばらくここで世話になることになった。
私の代わりはすぐにみつかるだろうが、リュックの後釜はそうはいかない。
思い起こせば、私達がここに来てもう四ヶ月近い時が流れていた。
闘技場が開場したのと同じ長さの時だ。
激しい雷雨からの雨宿りのため闘技場に駆けこんだのが、つい昨日の出来事だったような気がする。
私達には特に大きな変化はなかったが、その間にマノンとリカールは結婚し、ニッキーはグランドチャンピオンになっていた。
そして、あと数ヶ月すれば、ルイスやテレーズは可愛い孫のおじいちゃんとおばあちゃんになる。
四ヶ月前、彼らは今のような状況を想像していただろうか?
本当に、人の将来とはわからないものだ…
そんなことを考えると、私は自分でも気付かないうちに微笑んでいた。


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