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「おめでとう!リカール!」



厳かに式が済み、二人が外に出ると、リカールのファンとおぼしき人々が、教会の外に群れをなしていた。
中には泣いている女性もいる。
それが、感激の涙なのか、悔しさや悲しさの涙なのかはわからない。
真っ白なモーニングコートを着込んだリカールは、どこかの人気俳優といった雰囲気だ。
ルイスは私達にもモーニングを新調してくれていた。
着替えた私達にクロワが「いつもとは別人みたいだ」とか、「とても素敵だ」等と誉めてくれたおかげで、屋敷を出る時にはお互い良い気分になっていたのだが、リカールと比べると自分たちがすっかりかすんで見えた。
いくら良い服を着ても、リカールには太刀打ち出来ないということをあらためて思い知らされた。

以前なら、ファンに対してほんの少しの愛想をふりまくこともなかったリカールだが、最近ではそういう態度もずいぶん軟化しており、教会に集まってくれたファンには笑顔で応えていた。
彼は笑うと、突然少年のような屈託のない表情になる。
男の私から見ても妙に愛しい気分になってしまうとても可愛らしい笑顔だ。、
あんな笑顔を向けられたら、女性なら誰だってメロメロになってしまうことだろう。



夜になると、屋敷で親しい人達を招いてのパーティが行われた。
パーティでのリカールは漆黒のタキシードを着こみ、昼間とはまた違ったクールな印象が魅力的だ。
彼はやはりどちらかというと白よりも黒が似合う。
マノンは、目の覚めるようなロイヤルブルーのドレスを身にまとい、二人並ぶとどこかの王子とその妃のように見えた。
そんな中、私達が驚いたのはクロワの出で立ちだった。
いつも地味な印象しかない彼女が、ピンクのドレスを着ていたのだ。
本人はとても照れていたが、テレーズの強いすすめでその色にしたのだという。



「クロワさん、とてもお似合いですよ。」

「本当だ。着てるものが変わるだけで、こんなに雰囲気が変わるもんなんだな。
クロワさん、これからはそういう明るい色を着た方が良いんじゃないか?」

「いやだわ、リュックまでからかわないで。
私にはこんな華やかな色は似合わないわ。
生まれてから今まで白や黒や紺しか着たことないんですもの。
恥ずかしいからそんなに見ないで。」

「クロワさん、本当によく似合ってますよ。
とても素敵ですよ。」

「マルタンさん…」

クロワは赤くなって俯いてしまった。


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