「…う…いててて」

金色の少年  ゴールドが起き上がると、腰辺りの痛みに顔を歪ませる。

「ハァ、ハァ…グッモーニン…エーたろう」

隣で一緒に起き上がるエイパムに、日常で起きる時と変わらず話し掛けた。

ゴールドが起きるとすぐに触れたのは、髪の毛だった。

「…ハァハァ、やべえ、前髪のキマリぐあいがイマイチ…。いつものやつ、…ハァ…ハァ…たのまァ」

起きて早々それか、とか思うが、ゴールドにとっては欠かせない事だった。

ゴールドが息切れ切れに言うと、エイパムはゴールドの腹ポケットからクシを取りだし、いつも通りに手よりも器用な尻尾で梳(ト)かす。

「…それにしても、どこなんだ、ここは…?」

エイパムに前髪を梳かされながら、辺りを見渡す。

どこかの洞窟内のようだが……。

「…そういえばたしかオレは、『いかりの湖』であの仮面ヤローとの戦いをシルバーとリナといっしょに…」

そこまで考えて「あ!!」と思い出した。

「そうだ、シルバー、リナ!!」

ガバッ、と立ち上がり二人の居場所を探し始める。

何度も二人の名前を呼んだ。

頭に浮かぶのは、氷の礫(ツブテ)によって沈んでいったシルバーと、自分が攻撃されたのを見たリナの張り裂けそうな顔、それと自分の名前を必死に呼ぶ声  

その時、エイパムが自分の服を引っ張ってくる。エイパムを見ると、手で何かを差していた。

「シルバー!! リナ!!」

なんで横に二人が並んでいるんだ、と違和感を感じた。違和感というか、まぁ、それは置いておこう。

「へっ、二人共、だらしなく気絶してやがんのか、……ハァ、ハァ」

二人は目を閉じて横になっていた。

こうして見るとシルバーは女に見えなくも……無い訳が無かった。

隣のリナを見ると、はた、と止まる。

待て、これってリナなのか?

リナはリボンがどこかへいったのか、髪が流れている状態だった。

しかも、いつも吊り上がっている目は、閉じられていて、

よくよく見ると、凄く綺麗な顔をしていて、初めて会った時の感じを思い出す。

今ならルナの妹だというのが分かるかも知れない。

  というのをゴールドはコンマ一秒で考えていた。

「起きている」

急に寝ていると思っていたシルバーが口を開けたので、ゴールドはぎょっとした。

「おまえが目ざめるより、ずっと前にな」

そう言って、むくっと起き上がるシルバー。

自分はこんなに腰やらなんやら痛いのに、どうしてケロッとしているのだ。

「こいつもな」
「は?」
「……アンタって寝起き悪いのね」

ふぁぁ、と欠伸をし、伸びをしながら言うリナは、やはり自分が知っているリナだった。

……逆に安心してしまったのはどうしてなんだろうか。

「おまえも、目が醒めたからってはしゃぎ回らない事を勧める。オレたちが受けたダメージは大きい。あそこでオレたちを引き上げたあの存在がなかったら、間違いなく命を落としていただろう」
「あの存在!? おい! あの存在ってなんだ!?」

あの存在……。

リナは、夢を見る直前に感じた、物凄い気配を思い出す。

姿は見ていない。だが、見なくたって分かる位に、強大な力を持っている事は分かった。

そして今も周りに残った紅蓮の炎。

これは湖から引き出した三人を温めるというので無く、もっと強大な力を与えるような……。

そう、例えば「生命エネルギー」を与える、いわば「命の炎」のような物。

しかし、気配はもう消えている。今ある気配は、三つだけ。

「そういやあ、思い出したけど、ここで気を失ってる間、ずっと何かに見守られていたような気がするぜ」

とその時、周りに残っていた紅蓮の炎が、消えてしまった。

それはまるで、三人が意識を取り戻したのを見届けたかのようだった。

「なあシルバー、リナ! オレたちをここまで連れてきたのはいったい…」

ゴールドの言葉の途中で、三人は何かを感じてハッとした。

「な、なんだ!?」
(この気配は……ポケモンね)

ゾロゾロと出てくるトゲのボール……にみえる何かのポケモン。

あんなポケモン、ジョウトにいただろうか。

「こいつらは!?」

気が付けば、周りを埋め尽くす位の、大量のトゲのボールが集まってきていた。

しかもそのトゲのボールは、三人に向かってくる。

「うわわわ!!」
「く!!」
「ちょ!!」

トゲのボールの大群から逃げる為、三人は走り出した。

「ポケモン図鑑を! って、ゲッ。またリュックをなくしちまったのか!!」

また、というのはシルバーが盗ったと思って旅立った時も、リュックを無くしたからだ。今度もシルバーは無実だ。

リナも鞄をなくしてしまったな、といつも鞄を下げていた自分の腕を見る。

「おまけにクツは片方だけ。クソ、走りにくいぜ!」
「……ッ痛」
「あん? どうした、リナ」
「……ちょっとね」

ちょっと、じゃないだろ。そんな顔を歪ませておいて。

ゴールドは視線を下げると、リナの靴が無い方の左足が赤く地で染まっていた。

こんなに凸凹した地面だから、鋭い石を踏んだのだろう。

「リナ」
「なによ  わッ」
「これ履いてろ!」


ゴールドは、丁度自分は左足の靴を履いていたので、脱いでリナにぶん投げてやる。

うん、むしろ走りやすくなったかも知れない。

「はぁ!? アンタ、両足裸足になるわよ!?」
「んなの関係ねえ! オレに必要なのは」

フードから伸縮自在のキューを取りだし、腰のボールを取る。

そして、ジャキンとキューを伸ばす。

「こいつらだけだ!!」

キューで4個のボールを弾けば、マグマラシ、ニョロトノ、ヒマナッツ、トゲピーが出てくる。

「行け!!」

シルバーも続いてボールを投げると、アリゲイツ、ヤミカラス、リングマが出てくる。

「行って!!」

靴を履きながら「なんかデカイな……」と思いつつ、ボールを放った。

ボールからはサンダース、モココ、ランターン、レディアン、デルビルが出てくる。

三人のポケモン達は、トゲのボールに対して攻撃を始める。

三人のポケモンにかかっても、なかなか片付かない。

(こうやってポケモンを皆出すと、なんか寂しく感じるわね……)

いつもはこういう時、マリルが先陣切っているから、いない事を感じさせられる。


(………マリル)

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