「そうだ! あの人もまきぞえくっちゃったんだった! なんとかしなきゃ!」
「あ、待ってください!」
「だいじょうぶですか!?」

少しだけ距離が離れていた為に、クリスは走って麦わら帽子の少年の元に駆け寄った。

そしてクリスはずっこける事になる。

なぜなら麦わら帽子の少年は「くー、くー」と気持ち良さそうに寝息をたてていたのだから。

(ね、寝てる  !?)
「起きてくださーい!」

向日葵の少女が両手を口にかざして上へ声を飛ばしやすくしながら、麦わら帽子の少年を起こそうとした。

「…ん…」
(本当に起きた!)
「ふあ〜〜。なんかいいにおいがして、ついうとうとしちゃった」

麦わら帽子の少年が、両手をあげて欠伸をする。

どこまでマイペースなんだ、とクリスは寧ろ心配になってくる。

「あ! きみの葉っぱから出るにおいなんだね」
「おーい、下を見てみてくださーい!」
「え、下? あれ? ええええ!! 体が浮いてる!! わあ! 野生ポケモンに襲われてるぅ!!」

やっと気付いたのか、麦わら帽子の少年は慌て始める。

ベイリーフが脱力したような顔をし、クリスは唖然としていた。

だが、すぐにクリスがボールを構える。

「今、助けますから!」
「だいじょうぶですよ〜」

麦わら帽子の少年がちょいちょいと指を差す。

その差した方を見てみると、地にはラッタの入ったボールがあった。

どうして、と思っていると糸が付いているのに気が付いた。

その糸を辿って上を見ると、それは麦わら帽子の少年が持っている釣竿だった。

「釣りざお!?」

釣竿にボールを繋げて、どうすると言うのだ。

「今だよ、ラッちゃん!」

くん! と釣竿を引くと、ラッタの入ったボールは転がり、やがてラッタ自身がボールの中で走ってボールを転がす。

そうすると糸は周囲を囲み、一周した。

「よし!!」

それを真っ直ぐ上に引く。

すると、糸はベロリンガ達の足を縛り、ベロリンガ達のバランスを崩した。

崩した先はアサギシティの海で、クリスタルは「あ!」と声を出す。

「あぶない!!」

今度はピカチュウでは無く、麦わら帽子の少年とベイリーフが弧を描いて高く飛んでいってしまう。

「たいへん!!」
「あ、大丈夫ですよ」

麦わら帽子の少年が海に投げ出されそうだというのに、のんびりと向日葵の少女がさとす。

疑問に思っていると、少年がベイリーフを抱えながら、なんと  羽根が生えたのだ。それも蝶々の。

「え」

これには目を点にした。

「ふう、よかった」

羽根が生えたと思っていたのは、バタフリーの羽根だったらしい。

ベイリーフは身が縮む思いであった。

「さあさ、みんなをボールにおさめて。あ、それから少しくらいなら飛べますよね」
「ハ、ハイ」
「私は海を渡っていきますね!」
「ハイ!」

向日葵の少女はジュゴンを出して、その上に座った。

ちなみに、後方のピカチュウ達が乗っているのはシャワーズだ。

「じゃあ、行きますよ」
「え? え?」

麦わら帽子の少年は、クリスの手を取った。

そして少年はバタフリーで、クリスはネイティで空を低空飛行していく。

勿論、少女が波乗り≠セからだ。

「クリスタルさん、あなたの目的は『新ポケモン図鑑のデータ完全収集』でしたよね」
「は、はい」
「集まり具合はどうですか?」
「ええ…、めぼしいところはおおかた捕まえたんですけど…まだまだ手強いのが残ってて。特にエンジュでめざめたっていう伝説の3匹のうちの1匹、スイクンが今、一番の目標です!」

少女はクリスタルの事を本当に凄いと思った。

自分なんて物は捕まえた事があるのは、赤い少年と捕まえたサンドただ1匹である。

だから目標をつけるとしたら「まぁとりあえずポッポ捕まえようぜ」といった所だ。

クリスにそんな事言ったら苦笑いされて「目標低っ!!」とか思われてしまうかもしれない。

「そのことであなたの力になってほしいと頼まれてます」
「え!?」
「あ! 見えた見えた、おじさ〜〜ん!!」

麦わら帽子の少年は一気にスピードをあげてそちらへ向かっていく。

「お  い」

おじさん、と呼ばれた人は正しく釣り人、という感じの人だった。

その人は少年に向かって手を振っていた。

「あの…伝説の3匹のことでわたしの力にって…!? あのポケモンたちについて、あなた何か知ってるの?」
「知ってるも何も…」

少年が少女に視線を投げ掛けると、お互い顔を合わせて微笑みあった。



「あの3匹を眠りから呼び覚ましたのは、
 ボク達なんですから」




(あの人達のペースに)
(引き込まれてしまう)


20140119

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