マチスは、水中から出て、氷の塊から出てきた物を潜水艇の中に落とす。

「まちがいねえ」

くる、と振り向いてそれらを一瞥する。

「これはあの仮面の男が言っていた、湖に沈められたガキ3人の持ち物だ」

それは靴が片方ずつ3人分、誰かのリュック、誰かの鞄、ゴーグル、帽子、黒いリボンだった。

恐らくガキは男2人、女1人だろう。

「だが、その持ち主は影も形もねえ…。3週間も凍りづけになってたとなりゃあ、当然おだぶつだろうがな…。あのギャラドスとマリルもどれかのガキの手持ちだろう…」

そう思っていた時、ウィーンという機械音がリュックから聞こえてきた。

「なんの音だ?」

遠慮も無しに、リュックを漁ると、そこからはマチスの見た事がある機械が出てきた。

「!! こいつぁ!! ポケモン図鑑!?」

過去に、赤い少年が使っていたのはタイプが少し違っていたが、間違いなくポケモン図鑑だった。

マチスはポケモン図鑑に釘付けになった。

だから、気付かなかった。マリルがこっそり潜水艇に忍び込んでいた事を。


# # #



場所変わって、ここはアサギシティ。

ポケモンセンターから出てきたのは、図鑑を持った一人の少女だった。

後ろには大きめのポケモン達が少女を守るように付いていた。

「さて…と。ギアや図鑑の応急修理も完了したし、壊れたボールの開閉スイッチも直せたし。次はやっぱり、海を渡ってタンバ方面のポケモンをおさえておきたいわね」

彼女の名前はクリスタル。ジョウトの三人目の図鑑所有者。

丁度、挫折から立ち直った所だった。

「なみのり≠フ使えるポケモンがメンバーにいればいいんだけど、定期船を使うしかないわね」

何気無く言うと、背後から「ひゅ〜」という冷たい風が吹いてるのに気付く。

気付いてから後悔した。

「ゴ、ゴメン!! みんなは捕獲のためのベストメンバーなんだから、ガッカリすることないのよ」

しゅん、としているポケモン達にパタパタ手を振りながら弁解するが、なかなかポケモン達は立ち直ってくれなかった。

「メガぴょんもベイリーフに進化できたし、これからもガンバっていきましょー!」

クリスはベイリーフに抱き付かれながら、必死に笑みを浮かべてみせる。

と、その時、シュパーッと海を渡る何かの音がした。

そちらを見てみると、なみのり≠しているピカチュウと、その後ろに乗るリボンをつけたピカチュウ。

それから脇にはクリスからは見えないが、何かに乗った頭の跳ねたピカチュウと、花のついたピカチュウ。

なんとも、同じピカチュウなのに特徴的だ。

「め、めずらしい!なみのり≠ナきるピカチュウなんて!!」

野生かしら、とすぐにボールを構えて見せる所が、さすがは捕獲の専門家(ゲットスペシャリスト)だ。

ベイリーフが引く位の切り替えだった。

しかし、その前方にいる方のピカチュウ達は、前にいるピカチュウがあまりにも乗ってきてしまったせいなのか。

後ろに座っていたリボンをしたピカチュウが、投げ出されてしまい、弧を描いて高く飛んでいく。

「あ、あぶな…」

危ない、と言おうとした時、ドードリオとキュウコンが「ドドドドドド」と、それはもう凄いスピードで走ってくる。

「きゃ!!」
あぶなああい!!
チュカァァア!!

ドードリオの方がすぐに止まり、その上に乗っていた麦わら帽子の少年が、ピカチュウをキャッチした。

キュウコンの方は、そのキュウコンのやんちゃさの為か、すぐに止まれずに木にぶつかってしまい、わたわたしていたが。

「ふう、あんまりムリしちゃダメだよ、チュカ。ピカみたいに、なみのり≠ナきるようになりたいのはわかるけど」
「す、すいません、有り難うございます、キャッチして頂いて」
「いえ!」

キュウコンの上に乗っていた、ピカチュウと同じ真っ白なリボンを着けた向日葵の髪の少女はほっと息を吐いた。

それは、波乗り≠していたピカチュウと、後方にいたピカチュウ二匹も同じだった。

ついでに、クリスも。

「よかった」

様子を見ていたのか、クリスがそう誰に言うでもなく呟く。

それを聞いた二人は、クリスへと近付いていく。

「すいませ〜ん!! 今、ぶつかりそうになってえ!」
「急いでいた物で……!」

四匹のピカチュウは当たり前のように二人の側に寄り添うのを見て、クリスは内心ガッカリした。

やはりあの四匹のピカチュウはトレーナーつきか、と。

「だいじょうぶでーす、なんともありませんからァ!」
「あれ?」「あ……」

麦わら帽子の少年と、真っ白なリボンの少女は、何かに気が付いたようにクリスを見た。

そして、麦わら帽子の少年の方が、ガサガサと何かを漁る。

それからポケットから出てきた紙切れを広げて、クリスと比べる。

「あのー、すいません」
「あなた…、もしかしてクリスタルさん?」
「え? そ、そうですけど…」

突然知らない人に名前を言われ、困惑したように相槌をした。

そして、二人は声を合わせて、こう言った。

『会えてよかった!! 探してました』


刻は残酷にも流れる物
(誰にも止められはしない)


20140119

[ back ]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -