「まぁまぁ、こんなに申し訳なさそうにしているのですから、許してください。グリーンのお陰で解決したんです、結果オーライです!」

にこっ、とルナがまるで向日葵のような微笑みを見せるものだから、マサラやトキワの人達は黙るしか無かった。

みんな各々「ルナちゃんが言うなら……」「まぁ、大惨事には結果的にならなかった訳だから」「許してやるかぁ……」と言う。

ポケモン協会の人達は安心したように息を吐いた。

「理事!」
「ハ…ハイ!!」

グリーンが理事を呼ぶと、理事は気を付けをしたようにシャキッとした。

「オレに資格がないというなら、それでいい。だが協会の威厳を保つためにも、レッドの代わりをつとめられるやつをしっかり選定しておくんだな」

その言葉の威圧感に、理事はやっと「ハ…ハイ……」と言葉を捻り出しただけだった。

「レッド!」

グリーンはすぐにレッドに向き直り、ボールを投げた。

「おまえが探していたものの情報が見つかったらしい。そいつを使え」
「!」
「見つけたのはルナだ。ルナに聞くと良い」
「え!? グリーン、なんでそれを!?」
「さきほどの言葉、口に出ていた」

そう言うと、グリーンは背を向けながら手を振り、去ってしまった。

「グリーン…」
(あ、あれ、そうだったんだ……!)

さきほどの言葉、というと(早く、治療法を教えなきゃ……)の事だろうか。

口に出したつもりは無かったのだが。



その後、トキワジムの次のリーダーは決定した。


# # #



レッドは自宅の前で準備を整え、立っていた。

「よし」

ぎゅ、と絶縁グローブを引っ張り、皺を伸ばした。

そこに三人が近付いてきた。

「レッド!」
「レッドくん!」
「レッドさん!」

ルナ、ナナミ、イエローだ。

「もう、出発するの?」
「ああ、早いほうがいいと思って」

ルナにとっては、分かっていた事だった。

レッドなら絶対にそうする。そういう人だから、と。

「せっかくこの手を治す情報をつかんだんだ。じっとしていられないよ」
「情報って…!? レッドさんの手足が治るんですか!!」
「はい、そうなんです! リュウさんから聞いたので、まず間違いないです!」
「え……リュウさん、来てたんですか?」
「え? はい。かなり急いでましたけどね」
「そう、ですか」

はぁ、と小さく息を漏らす。

まさかあのイエローが溜め息を吐くとは思わず、かなり驚いた。

「あ、あの、その方法って?」
「あ! それはですね、シロガネ山にポケモンが傷をいやしに集まる、特別な秘湯があるようなんです!」

ルナは、リュウの言葉を思い出しながら、イエローとナナミに説明し始める。

確か、リュウは花畑の中で  




「カンナの技は、赤ちゃんだけじゃなく、オレの元同僚であるナツメも受けてる」
「じゃあ、ナツメさんも痺れが!?」
「ああ、まぁ、つってもあいつは左手首だけらしいけどな」

一体どうしたらそこだけしか受けないんだ、と苦笑する。

「ま、それはともかく、あいつはそのシロガネ山の秘湯で治療してる」
「では、その秘湯に行けば、レッドの手足がなおるんですね!?」
「ただ  

興奮するルナの言葉を遮るように、リュウはルナに手を差し出した。

それに対してキョトンとするルナ。

「あの山はかなり強いポケモンがうじゃうじゃいやがる。だから秘湯にたどり着くにはかなりの覚悟と実力が無いと駄目だ」

厳しい眼と口調で言うリュウに、ルナ自身が少し身構えてしまう。

だが、

「レッドなら、絶対大丈夫!」

純粋にレッドを信じ、向日葵の笑顔を浮かべた。

リュウはあまりの眩しさに頬を染めながら、ルナのレッドへの信頼を憎らしく思ったが、それを偽る≠謔、に笑って見せる。

本当は、どうか気づいて欲しいと思いながら。





ルナがイエローとナナミに丁度説明を終えた時、レッドがグリーンに借りたリザードンに飛び乗った。

「さあ行くぞ、リザードン!」
「ま、待って!」

飛び立つ前に、ルナがレッドに近付いた。

「やっぱり……一緒に行っちゃ、駄目ですか?」

やっぱり、というのは、先程レッドにシロガネ山の秘湯を話した時にも言ったのだ。

切なそうにするルナに、レッドは強い瞳を向けた。

「ダメだ」

たった一言聞いただけで、泣きそうだった。

しかし、ぐっと耐えて拳を握る。

「なら、これを持っていって」

鞄から出したのは、大きなお弁当だった。

レッドは思わぬ差し入れに、目を白黒させる。

「ハピの卵で作った栄養満点の卵料理……いっぱい作ったから、だから」

  頑張って。

その言葉に、レッドは驚いていた顔を緩め、太陽のような笑顔になった。

「ああ!」

それに対して、太陽も劣る眩しさを持つ向日葵が咲いたような笑顔を向けたルナ。

「ピカ、おまえもルナと待ってろ」

レッドのピカチュウは、衝撃を受けたような顔をした。

まさかいつも一緒だった自分を置いていくとは思っても見なかった。

「ピカをたのむ、ルナ」
「……いいの?」
「ああ」

迷いなくうなずいた。

レッドは、ピカチュウに「この傷の原因は自分だ」と思って欲しく無いと思っての事だった。

ピカチュウは1年前、レッドが目の前で四天王に負けた所を見た為に、悪夢を見る位に苦しんだ。

だから、今回もきっと一緒に連れて行ったら、苦しんでしまうだろう。

それだけは絶対に嫌だった。

ルナの事にしてもそうだ。

きっと彼女の事だから、危険なシロガネ山にも、自分の為に無理して頑張ってくれるだろう。

だが、体力が無い彼女には辛い。

確かにこれは置いていってしまう事になるし、彼女は1年前の事もあるから、きっと恐いだろう。

しかし、そう思われる以上に、ルナが自分のせいで無理されるのも嫌なのだ。

大丈夫。今度は帰ってくるから  

「レッドくんの案内を頼むわね、リザードン」
「私からお願いします、リザードン」

ナナミとルナが両側からリザードンを抱き締める。

そして、リザードンは飛び立った。

「シロガネ山へ出発!!」

レッドの飛び立った姿を見送りながら、ルナとピカチュウは寂しそうな顔をしていた。

大好きな赤い人は、また、遠くに行ってしまった。

そんな事を思っていると、イエローが近付いてくる。

「あのルナさん、ピカ、ボクはこれからおじさんといっしょにジョウトへ行くことに決めました」

その言葉に、一瞬理解出来ずに首を傾げる。

「西へ消えたあの大きな鳥のことを調べに行くんです。もしよければ、ボクと一緒に来ませんか?」

途端に、一人と一匹はパァァァアと顔を明るくした。

つまり、肯定だ。

一人と一匹の眩しい笑顔に、イエローもまた笑顔で答える。

「よかった!」

イエローの優しさに、ルナは目頭を熱くした。

「さあ、ジョウトへ!!」

ナナミが見守る中、イエローとピカチュウ三匹は野原を駆け出した。

「あ、すみません。その前に家に寄っても良いですか?」

イエローとピカチュウ三匹は野原を駆け出した勢いそのままに、ズザァァァァと滑った。

そういう事はもう少し早めに言って欲しい。



(お互いに無理をして)
(欲しくないだけで、)
(想い合ってるんです)


20140116

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