「バクたろう!」
「ニューラ!」
「シャルフ!」

三人はそれぞれ力のあるポケモンを出した。

マグマラシは自慢の炎を燃え盛らせ、ニューラは自慢の爪を光らせ、サンダースは自慢の体毛を鋭くさせた。

三匹共、真っ先に仮面の男の元に行くには適切だ。

『ククク…、ばか者どもが…』

今度は左手を右へ流すように出した。

『一気に片づけさせてもらう!!』

男の手に反応してか、ゴールドの方にはデルビルが、シルバーの方にはアリアドスが、リナの方にはゴースが出てくる。

『!!』

三人はすぐさま反応し、同時に手を振った。


「かえんぐるま!!」
「こごえるかぜ!!」
「ミサイルばり!!」

技が交錯する。

ゴールドはゴースに火炎車≠し、シルバーはデルビルに凍える風≠し、リナはアリアドスにミサイル針≠した。

攻撃したのは自分に向かってきたポケモンではない。

まるで、お互いがお互いを援護するかのように攻撃をしたのだ。

『ほう…、向かってくることはあるな』

珍しい男の関心したような言葉に、ゴールドはニヤと笑い、「へっ」と笑った。

『…だが、しょせんにわかじこみのコンビネーション…ククク…。いつまでもつかな』

その刹那に、ゴースの力で三匹が姿を消してしまう。

「! 消えた!!」
「落ちついて! 別にいない訳じゃない、いないように見えても確かにそこにいるのよ!」
「そんな事言われても……うわっ!」

消えてしまったポケモンと戦うなんて不可能に近い。

マグマラシもニューラもサンダースも見えない敵に攻撃されてしまった。

ただ、リナだけが気配を感じ、そして避けていた。

「なろォ」
「! ゴールド、後ろ!」

しかし時すでに遅く、ゴールドが見えない敵によって背中を攻撃されてしまう。

(とにかくゴースを倒さなきゃ……!)

マリルが心配そうに見つめる中、リナは瞳を閉じた。

そして小さく息を吸った。

最初、ゴールドは何をやっているのか分からなかった。

それどころか、こんな時に何をしているのだ、と思いもした。

しかし、その考えは次の瞬間に吹っ飛んだ。



それは凄く細くて綺麗な音≠セった。

音楽なんてちっとも分からないゴールドにでも、凄い、と思わせるほど。

その音≠ヘ、リナの口から発せられていた。

つまり、口笛だ。

だが、口笛なんてちっぽけな物では無い。これは。

本物の笛のような  そんな綺麗な音=B

ゴールドはその音≠ノ囚われていた。

そして気付いたら、耳を澄ますように目を閉じたサンダースが、まるでその音≠ノ知らされたように、軽やかな足取りで歩いていた。

ある一定の場所に行けば、その体毛からチリチリと電気を少しずつ出していき、そして  10万ボルト≠発した。

すると、ゴースがボトリと目を回しながら落ちてきた。

それが認識出来た瞬間に、他の二匹の姿も認識出来るようになった。

「見えるようになった!」

興奮したようにゴールドが身を乗り出してリナを見ると、目を逸らされた。

どうしてだかは分からない。しかも酷く悔やんだような顔だった。

(ん? 待てよ? あの音=A前にもどっかで……)

先程の音≠頭の中で響かせながら、思い出そうとする。

しかし、それどころでは無い位に、シルバーが冷静さを失っていた。

一体何があったんだ。

「お、おいシルバー落ち着け! さっき冷静になれと言ったのは、おまえだろ!?」
「アンタが冷静じゃなくてどうするの!」
「!!」

ゴールドがシルバーの肩を掴めば、振り返ったシルバーの顔は、それはもう憎しみに満ち溢れていた。

その間に、仮面の男がデリバードで空へと飛んでいってしまう。

「む、空へ!!」

それを見れば、シルバーが「どけ!!」と言ってゴールドとリナにニューラが凍える風≠繰り出した。

「うわっ」「ちょっ」

しかも凍える風≠ヘ二人の足を凍らせ、動けなくしてしまった。

「なにィ!? お…おい!!」
「シルバー!」

そんな二人を置いて、シルバーは男を追うようにヤミカラスで飛んでいってしまう。

凍った足をなんとかしようとゴールドは氷を掴んで引っ張ったが、リナに馬鹿にした視線を浴びせられただけだった。

そして勿論、二匹のポケモンの郭公の餌となってしまう訳で。

「くそっ」
「……ッ」

二人は歯を噛み締めた。

とりあえず、今は  

「バクたろう!」
「デルビル!」
『火の粉=I』

ボッ、と小さく放たれた火の粉≠ヘ、互いの足下の氷を溶かした。

そう。二人は、自分よりも相手の氷を溶かそうとしたのだ。

その事にお互い、笑みを浮かべた。

そして笑みを浮かべたまま、いつもの売り言葉に買い言葉。

「熱ィなぁ、燃えたらどーすんだ?」
「こっちだって大切な服が燃えたらどうするの?」
「さぁな、露出して色気が増すんじゃねぇか?」
「あら、そしたらアンタみたいな輩に絡まれちゃうわ」

ゴールドが「へへっ」と笑い、リナが「ふふっ」と笑った。

こんな時だが、いやこんな時だからこそ、相手の言葉に、力付けられる。

お互いがお互いを信じる事が出来る位に、二人は互いを知り始めた。

最初は互いに、ムカツク奴だと思っていたが、今はそれだけじゃない事を知っている。

「とにかく逃げるぞ、リナ!」
「ちょっ、ゴールド!?」

ゴールドがリナの手を取って走り始めた。

いつの間にか名前で呼び合う仲になった事も、成長した証だった。

そして、走りながら他人の心配をする位に、リナは柔軟になっていた。

(シルバー……無事でいて)


# # #



そのシルバーは、仮面の男を追っていた。

仮面の男はわざとシルバーに自分を追わせたのだと言う。

だが、シルバーは先刻の挑発はゴールドとリナから自分を引き離す為の物だと知っていた。

そして、あえてその誘いに乗ったのだ。

「各地から子どもをさらい、カゲで人を操るキサマの非道!」

ヤミカラスに掴まりながら、仮面の男に直接攻撃し、デリバードに攻撃する。

「それを今ここで阻止する!!」

今までの記憶が蘇る。

大きな鳥に拐われた事や、仮面の男の元で苦しい思いをした事、そしてある人に連れられて逃げ出した事。

「そのためにキサマを誘導したのだ! この湖の中央まで!!」

一つのボールを構えた。

その瞬間、数多のギャラドスが湖から仮面の男を囲むように飛び出してくる。

「! これは強制進化させたギャラドス!?」
「自分の策略に逆にハマる気分はどうだ?」

焦る仮面の男を見て、ニヤ、と不敵な笑みを浮かべる。

ギャラドス達が仮面の男の周りを凄いスピードで回る。

すると、流石の男も、汗を一筋流した。

「電波の中継点(アンテナ)として働いていたこの赤いギャラドスがオレのポケモンになったことで、湖中のギャラドスたちは一方的なコントロールから解放された!」

いつの間にか先程のボールから赤いギャラドスが出されており、シルバーはそのギャラドスに乗っていた。

「こいつらの怒りは今やキサマに向いている!!はかいこうせん!!」

赤いギャラドスの口から、仮面の男に向かって大きな光線が吐き出された。

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