いかりの湖付近、シルバーが行動を開始した時、ゴールドとリナが到着した。 ゴールドは息切れしているが、相変わらずリナは涼しい顔でマリルを頭に乗せている。 「ちくしょー。ここらで見かけたと思ったら、もういねえ! シルバーのヤツ、どこへ行った!?」 「アイツは素早いものね」 「ああ……少し…休むか」 「体力無いのね」 「おめえがありすぎなんだよ!!」 ゴールドが湖の囲いに右手を預けると、リナが冷たく言い放つ。 それは聞き捨てならねぇ、とすぐさま突っ込む。 エンジュシティからいかりの湖まで走り通しなのに、どうしてそんなに体力が有り余っているのだ。 まぁ、聞いた所で「わたし、天才だから」と言ってくるだけだが。 「ん…?」 湖を見つめていると、水面に影が出来てユラリと動くのを見た。 その瞬間にギャラドス達が数え切れない位に飛び出してくる。 「なんだー!?」 「ギャラドス」 「いや、それはわかってんだよ……」 気配で出てくる事を見越していたリナが冷静に言うと、ゴールドは脱力した顔で突っ込む。 なんだ、わざとボケてるのか。 だがそんなキャラでは無いから、きっと本気の返しなのだろう。 それにしてもギャラドスがさっきから視界から消えない。 「オイオイ…ずいぶんにぎやかな湖だな…」 「にぎやかってレベルじゃない気がするけど」 「キミ達! 早く逃げるんだ!」 逃げ惑う人々の中から一人の男性がそう話し掛けてくる。 「これもこの湖の名物なんすか?」 (こんな名物あってたまるか) 「とんでもない!! ギャラドスの大量発生なんて、はじめてだ!」 ゴールドの呑気な質問に、思わず心の中で突っ込んでしまう。 こんな名物があったら皆逃げ出すしか無いじゃないか。 「もしこのギャラドスが暴れ出したりしたら、町にまで被害がおよぶかもしれないぞ!!」 どうしてこんな事になったのかを聞こうとした時、ゴールドが何かが逃げ惑う人々と逆走している事に気付く。 「シルバー!!」 「いたの!?」 「ああ、追いついた! 行くぜ、リナ、バクたろう!!」 「ええ!」 自分達が向いていた方向と真逆に方向転換し、シルバーが駆けて行った方向に二人は駆け出した。 シルバーは逃げ惑う人々をくぐり抜け、ある場所で止まり、「よし」と言ってポケギアに触れた。 「おっと」 その手を掴む、手。 その手の主が分かったのか、シルバーは特に反応を示さなかった。 「またまたひとりで『目的』『任務』か!? オレにも手伝わせろよ!」 ニッ、と笑うゴールドの脇には当たり前のようにリナがいた。 「あの『指令』を受けてからなにをつかんだんだ?」 核心を突くような言葉を、強い口調で言うと、シルバーは掴まれた手を振りほどいてゴールドを突き飛ばした。 「いて!」 突き飛ばされた事に腹を立て、ゴールドが文句を言おうとした時、自分がさっきまでいた所にギャラドスがズシンと落ちてきた。 シルバーが突き飛ばしていなければ、危なかった。 ちなみにリナはゴールドに忠告もせずに自分で行動し、避けていた。 せめて一言くれよ、と思う。多分無駄だろう。 「ついてきたいのなら自分でも周囲に目を向けてみろ」 「なんだと!」 「……気づかないのか」 「気づく?」 「アレよ、アレ」 流石天才。気付いていたのかゴールドの鈍感さに脱力しながらも、コイキングを指差した。 だが、それはただのコイキングで、ゴールドは眉根を寄せた。 なんだ、ただのコイキングじゃないか、と。 だがそう思っているのも束の間。コイキングは何か光線でも受けたようにビクリと震え始めた。 それに対して不思議に思っていると、そのコイキングは、赤から青に姿を変えていた。 ギャラドスに進化したのだ。 「これは!?」 「さっきからこの一帯に怪電波が流れている。電波による強制進化。これがギャラドスの大量発生の原因だ」 「なんだって!?」 「成る程ね……」 腕に着けたポケギアを見せながら、ギャラドス大量発生の真実を告げた。 二人は反応はそれぞれなものの、その事実に驚いた。 「ならその怪電波の出所ってのはどこ…、あっ、待てコラ」 ゴールドの問いには答えず、ヤミカラスで上へと飛んでしまう。 「おまえ等はそこでそいつらの足止めをしてろ」 「なにーっ、オレに命令すんな!」 しかしその時、またギャラドスがこちらに落ちてきた。 「しょうがないわよ、やるしかないわ」 「……珍しいな。いつもなら『わたしは人の指図は受けないわ』とか言うのに」 「なにそれ、わたしの真似? 全然似てないわ」 フンッ、と鼻を鳴らしてゴールドから背を向けて歩いていってしまった。 怒らせたか、と思い「どこ行くんだよ?」と聞くと、「わたしは反対側に回るから、アンタはここで足止めしといて」と言われる。 別にリナは怒った訳ではない。 自分の動揺を表に出さないように、わざと怒ったような口調で誤魔化したのだ。 やっぱり自分は変わっているらしく、それが怖く感じてしまった。 自分が自分で無くなるような気がして。 「さて、不本意だけど水タイプはわたしの得意分野よ」 そう言ってサンダース、ランターン、モココを出す。 「さぁ、10万ボルト≠諱v 三匹が一斉に10万ボルト≠豪快に放った。 もちろん、水タイプであるギャラドス達は一気に片付いた。 だが、それでもコイキングは次々とギャラドスになり、絶える事は無かった。 「キリがないわ……! やっぱりその怪電波って奴を無くさなきゃ!」 「もとからたたなきゃダメなんだ。こいつらを進化させている電波を止める!」 「おかしい! この辺りのはずだが、人口物が見あたらない!!」 『中継点(アンテナ)はどこだ!!』 その時、ある一匹のギャラドスが光を放っていた。表情は酷く苦しそうだった。 「赤いギャラドス!? しかもなにかを発している……ゴールドの方に行くわよ!」 赤いギャラドスに向かい、駆け出す。 その途中でポケギアが砂嵐のような画面がより強いものとなり、怪電波を煩い位に発し始めた。 「電波が……!」 あの赤いギャラドスが出た途端に電波が強くなった。 タイミングとしては合っている。 「あの赤いギャラドスが中継点(アンテナ)!?」 駆ける足は自然と早くなっていた。 確証は確かに無いが、明らかにタイミングとして出来すぎている。 そして苦し気な顔。間違いないだろう。 ←|→ [ back ] |