「だいたいキサマはどういうつもりでいつもオレのジャマをするんだ!!」 「知るか! 今回はさっきの子を助けに来ただけだ! おかけでオレまで被害者だぜ!」 「……アンタ等、そんな言い合いしてたら余計酸素が尽きるわよ」 そう言いながら溜め息を吐き、大事な酸素を口から逃がす。 シルバーはその言葉を聞いて気付いたのか黙ったが、ゴールドは尚も文句を垂れるので拳を鳩尾にくれてやった。 なにしろ静かにしてもらわないと、よく聞こえないかもしれないのだから。 リナの予感だと 三人が静かにした時、メキメキ、やら、バキバキという音が聞こえてきた。 「……」 「!!」 「今度は、な…なんだ」 今までで一番酷いその音に、勿論嫌な予感がした。 すると、一秒も経たず内に壁が石の含んだ土砂で先程よりも勢いよく突き破られた。 「カベが!!」 「土石流だ! じきにつぶされるぞ!」 「くそーっ」 こんなとこで死んでたまるか、というようにゴールドが悔しそうな声を出す。 「バクたろう! 天井を破れ!!」 マグマラシが背中から炎を出し、天井に向かって放つ。 しかし、少し焦げ目がついただけで、破られる事は無かった。 「ダメか!」 そしてどちらにせよ炎を使ってしまった事によって酸素が減ったのだが。 そんな事を思っては見るものの、ゴールドなんだからしょうがない。 そうこうしている間に土石流はどんどん内部に侵蝕していき、当然三人も土石流に迫り上げられ、天井までの距離を縮められる。 こんな時でも、リナは汚れる事を気にしていられるのだから、大物である。 「うお、やべえ…。なんとかしろシルバー!」 自分でなんとかしなさいよ、という言葉を飲み込み、代わりに溜め息を吐いて置く。 その、なんとかしないといけないらしいシルバーは、ゴールドの言葉なんて右から左に受け流し、目の前の霜柱に気付いた。 それはリナも気付いていた。 ただ、霜柱というのは、冬に土中の水分が凍って細い柱状になったものであって、今は冬では無い。 という事は、氷タイプ≠ニ地面タイプ≠フ技による物であるという事。 氷タイプ≠ニ地面タイプ≠持つポケモン……それを持っていた人物を、リナは知っていた。 もしかしたら、この一連は 「オイ、おまえ達のみずタイプのポケモンを出せ!!」 「なにい! オレに命令すんな!!」 「アンタね……今はそんな場合じゃないでしょ」 その言葉にゴールドは、不服そうにしながらもシルバーの言葉に耳を貸す位には納得したようだ。 「ポケモンでこの地盤の地下水脈を引き出し、その勢いを利用して脱出する!」 「そうか!! ポケモンの力だけではムリでも、みずタイプのポケモンのわざで大自然の力を呼びおこせば…!」 「なるほどね」 シルバーの言葉を理解した二人がそれぞれ水ポケモンを出す。 「よし!」 「アリゲイツ!」 「クレール」 ボン、と音をたてて煙の中出てきたのはアリゲイツ、ランターン、そして王者の印を持ったニョロモ。ついでに肩から飛び降りたマリル。 「頼むぜ、ニョたろう!」 可愛らしく口からぷーっと水を出すニョロモを見て、シルバーとリナが呆れを通り越して硬直する。 しかもどさくさに紛れてマリルまでそれに便乗して小さな口から水を出すのだから困った物だ。 「? …なんだよ、オメエ等」 「そのチビでは話にならん」 「マリル……こっちおいで」 ゴールドとマリルが不思議そうにこっちを見るのに、思わず頭を抱える二人。 「しかたがない、ほかの手を考え…。ん?」 「……このタイミングかい」 シルバーがニョロモを見て言葉を止め、リナはそのニョロモの変化に気付き、溜め息を吐いた。 ゴールドのニョロモがブルブルと震え出すのだ。 これは 「やった! ニョロゾに進化した!」 だが、大きくなった事もあり、体勢がキツイ物となった。 「ぐぐ…、ダ…ダメか…。進化してもこの体勢じゃ…」 「このままだと、10分と経たない内に、わたし達は窒息死して化石になるわね」 「お前……なんでそんなに冷静なんだよ……」 リナの顔に焦りは無く、なんだか口調も他人事のように感じられた。 一体全体どうして彼女はこんなに余裕なのか。 「ゴールド!!」 そんな時、図鑑を持ったシルバーが同じ図鑑を持ったゴールドを呼んだ。 「そいつをボールに納めて図鑑をかざせ!」 「なに!!」 「『通信』するんだよ! 早く!」 「何か考えがあるのか!? 戻れ、ニョたろう!!」 いつもはシルバーの言う事を聞かないゴールドだが、こんな状況だからか言葉通りにニョロゾをボールに戻し、かなり無理矢理にポケットから図鑑を出した。 「お前と通信なんかしたかねーが、しょうがね…、ぐあ!」 その時 ゴールドの手から図鑑がすり抜ける。 そしてその強い揺れのせいで、少しずつ沈んでいたスズの塔が、一気に地中へとその姿を消していく。 もうすぐで最上部が沈み行く時に、ゴポ、という音がどこかからかした。 その音は次第に肥大化し、まるで海で起こる現象の音と類似していた。 いつの間にか、土石流は水流へと変化していく。 「うずしお!!」 「ドン!」とスズの塔の最上部からアリゲイツ、ニョロトノ、ランターン、そしてそのマスター達が飛び出してくる。 「なにーっ!! ニョたろうがさらに進化を! でもニョロボンじゃないぞ!?」 非常に驚いたように言いながらニョロトノに掴まって外へ飛び出るゴールド。よくニョロトノに掴まれた物だ。 ゴールドは尻を打ち付けながら地へ着地し、シルバーは忍者のように綺麗に着地し、リナに至っては薄い膜を纏いながら立ったまま片足で着地する。 その薄い膜はレディアンの神秘の守り≠ナ、汚れ防止と窒息死を防ぐ為だ。 だから、あんな状況でも余裕な顔をしていた訳なのだが。 「シルバー!! おまえ一体なにをした!?」 「通信による進化だ。こいつの最終形は2つある。そして水の力をより生かすならニョロトノ」 「なにィ!?」 リナ的にはあんなムキムキのポケモンより、こっちの方が可愛げがあると思うのだが。 それでもゴールドは納得出来ないのかシルバーに詰め寄る。 だがシルバーはゴールドを突き飛ばして駆けていく。 「おまえの相手をしてるヒマはない。オレに関わるなといったはずだ」 「な…。おい、シルバー!」 ゴールドの言葉は無視され、シルバーは耳も貸さず地面を調べ始めた。 シルバーが何を考えて地面を調べているのか、リナには分かったが、ゴールドは調べている事すら分かっていなかった。 「関わるな……か」 「勝手だよなァ!」 「……そうね。でもアンタもちょっとは人の気持ちを汲む事位しなさいよ」 「はぁ? どーいう事だよ」 「……いいわよ、別に」 はぁぁ、と深い溜め息を吐く。 ダメだコイツは、という気持ちが分かりやすく顔に出ていた。 ゴールドはその顔にカチンと来ると同時に訳が分からなかった。 だが無理も無いのかも知れない。シルバーは分かりにくいというか、不器用な所があるのだから。 「 「どうした?」 「凄い数の……気配!」 「あん? 気配?」 気配なんて並大抵の一般人には分からない訳で、ゴールドは辺りを見渡す。 すると、スズの塔の土砂崩れのせいで窪みになった所に立ってるゴールド達を見下ろす人影が無数。 「! な…なんだ?」 「………やっぱりね」 不思議そうに冷や汗をかくゴールドに対して、分かっていたかのようにリナが呟いた。 なぜか交わる三人は (息が合って無い様で) (すれ違ってるのです) 131223 ←|→ [ back ] |