なつかれやすいというのは、時に災難を引き起こす事になる。

「ちょ、な、やめ」

リナは35番道路にいたはずだった。

しかし、メリープの時と同じくヤンヤンマに一目惚れなんかされたせいで、コガネシティまで追いかけられる事になる。

「だから! わたしはアンタを捕まえられないんだって! エネルがいるし、絶対炎タイプは捕まえたいし!」

どうしてポケモン相手に必死に訳を説明しなければならないんだ。

コガネシティを走り回ったせいで、桃色の髪の自称ダイナマイトプリティギャルや、ちんちくりんのツルペタちびアホ毛や、元お仕えの者のトマト、ポーカーフェイスの帝王%凾ノ好奇の目で見られてしまった。

しかもなんだかんだでコガネを越えて、34番道路へと逆戻りしてしまっている。

こうもなつかれてしまうと、傷付ける訳にもいかない。

ここはなんとか撒くしかない。

そう思い、草むらの茂みに飛び込み、気付かれないように隠れた。


# # #



リナが大変な目に遭ってる時、ゴールドはゴールドで面倒な目になっていた。

どうしようもなく不良なトゲピーを産んでしまった事により、ウツギ博士から育て屋老夫婦の所へ行くように言われてしまった。

なんでも、そこがタマゴが発見された場所だからって事らしい。

お陰で道を戻る事になってしまった。

育て屋はどこだとキョロキョロ見渡すと、後ろの茂みがガサガサと動いた。

「ん?」

なんだなんだと振り返ると、ピョ〜ンと何かが飛び出してきた。

「うわっ」

いきなりの事に驚くが、よく見ると小さなポケモンではないか。

「な、なんだぁ!? このちびっちいやつらは!?」

野生のポケモンなのだろうか、とかも思ったが何かが違う気がする。

そんな事を思っていたら、脇をヤンヤンマが凄い速さで通り抜けた。

「なんなんだよ!?」

この茂みはモンスターハウスかなんかか。

「こりゃ、待て待て待て〜〜」
「ばーさんも出てきた! もしかして、あんたが育て屋ばあさんか!?」

するとなぜかギロリと睨まれた。

まだ悪い事は何もしていない。

「こぞう〜〜。人をいきなりつかまえて、ばーさんとはなに言うか!?『この可愛いお嬢さん』くらい言え!!」
「ひ  、言えるか!?」
「失礼のおわびに、捕まえるのを手伝いな!! 早く!!」
「わっ」

半ば強引に押されて、捕まえる羽目になってしまった。

しかし、気付いたらちびっこ達は同じ方向へと向かっていた。

(なんだ? あっちになんかあんのか?)

茂みの草を掻き分け、ちびっこ達を追うと、やはり同じ方向  というより同じ目的物に戯れていた。

一瞬瞬きを繰り返す。

なんだかリナがちびっこ達になつかれ、ちびっこ達の下敷きになっている気がするのだが……。

目を擦ってみるが、目の前の景色は全く変わらなかった。

「……何してんだ?」
「もう嫌ぁぁぁぁぁぁあ!!!」

なつかれやすいというのは、時に災難を引き起こす事に以下略。


# # #



「ばあさんや良かったじゃないか。みんなが戻ってきてくれて。この少年少女のおかげじゃな」
(ただ単にわたしに寄って来ただけだけどね)
「飼育所のサクが壊れて困っとったんじゃ。助かった助かった」
「いやぁ、なんのなんの!」
「アンタなんにもしてないでしょ」

さも自分がやったかのように威張るゴールドに、リナが肘を思いっきり脇に打ち付けた。

あまりの痛さにゴールドは声にならぬ声をあげる。

「ウツギくんから聞いておるよ」
「キミがゴールドくんじゃろ。いかにも、わしらがキミが探しておった育て屋夫婦じゃ」

自分は全く関係無い事を訴えようとしたが、ちびっこポケモン達に甘え≠轤黷ト身動きが取れない。

ポケモンの技というのは人間にも影響を及ぼすから困った物である。

実はただ単に甘えているちびっこポケモン達が可愛すぎて身動きが取れないのかもしれないが。

「ここで見つかったタマゴを孵してくれたそうじゃな。たいしたもんじゃ」
「しかし、ウツギくんはタマゴから孵ったポケモンをわしらが見ればなにか発見があるかと思ったようじゃが、タマゴのことはわしらでもとにかくナゾでな。
 なにせ、ある時、突然タマゴが出現しとったんじゃから。2匹のポケモンをあずかっとっただけでな」
「え  っ!!?」

お爺さんの言葉に、ゴールドは驚きの声をあげる。

確かに意外で、突拍子も無い話だが、そのタマゴが預けた2匹のポケモンの子供とは考えられないのだろうか。

人間が二人の男女が交わる事で子供を授かるように、ポケモンも子供を授かるのでは。

だが、そんな事をリナが考えたってしょうがない。

すぐに考えるのを止め、ちびっこポケモン達の相手を再開した。

星形のポケモン  ピィは、くすぐられるのが好きらしく、ピンクの丸いポケモン  ププリンは頬っぺたを触られるのが好きで、赤いタラコ唇のポケモン  ブビィは頭を撫でて貰うのが好み、オカッパタラコ唇のポケモン  ムチュールは抱っこが大好きなようだ。

「それから何度もタマゴが出現する瞬間を見ようとしてみたが、だめじゃった」
「(そうか…。ならウツギ博士に報告するよーなこたぁ特にねーな)んじゃ、オレ帰るっスよ」
「じゃ、わたしも」
「待て!!!」

ゴールドがもう用は無いと、そそくさと帰ろうしたのに便乗し、リナもちびっこポケモン達に抱き付かれながら逃げ帰ろうとする。

だが、そこをババア  可愛いお嬢さんが止める。

最早嫌な予感しかしなくてリナは溜め息をいつもの2倍深い溜め息を吐いた。

「せっかく育て屋に来たんだ。育てのコツを知りたくないかえ!?」
「わたしは別に」
「お前さん達のポケモン達、ビシビシ強くなるかもしれないよ〜」
「結構で  
なに!?

結構です、という事は叶わず、ゴールドに掻き消されてしまった。

「やるぜ、やるぜーっ!! おしえてくれ!!」
「うむ、よかろう」

極めつけに、マリルがスイッチが入ったようにヤル気に満ちていた。

これはもう逃げられない。

シルバーと実力差を縮むようと意気込むゴールド、仕事を楽しようと企むお婆さん、その二人をみて同情したような目でゴールドを見るお爺さんを一瞥し、溜め息も出ない位に脱力してしまった。

なつかれやすいというのは、時に災難を以下略(本日三回目)。


ちびっこに人気者の受難
(そりゃあ本当は、)
(可愛いと思ってる)
(でも、受難ばかり)


131203

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