「……と、とにかく、ボスを狙おう。たのむぞ、エーたろう」

どうやらエイパムをボスの所へ飛ばす気なのか、腕にエイパムを乗せた状態で言う。

そんなゴールドに、いつのまにやら男の後ろのドンファンの背中に乗って足を組んでいるリナが余裕の表情で声をかける。

「動き止めてあげるわよ」

どうしてコイツはいちいち上から目線なのだろうか。

しかし、その提案はゴールドにとって助かる事だった。

目だけで肯定を示し、改めてエイパムを飛ばすフォームになる。

「せーので…」

「たぁりゃああ!!」と叫びながらエイパムをボスの鼻先に投げた。

「ばかか!? むれのボスの鼻先に自分のポケモンを投げるなど! 狙ってくれと言わんばかりしゃないか  !!」

男は人相の悪い顔で笑いながら自分の乗っているドンファンに合図を送る。

エイパムを、自分の乗っているドンファンや周りのドンファンでタコ殴りにしようと思ったのだ。

しかし  

「おい……ドンファン!? ドンファン!?」

大声を出すも、ドンファンはただ走るだけで、攻撃しようという動きは無かった。

ドンファン自身も不思議なのか、少し困った顔をするばかりだ。

しかもその内にボスの鼻先に居たエイパムが姿を消した。

「なにっ!!?」

消えたと思えば、ゴールドの腕にエイパムの伸縮自在な尻尾がついていて、それを利用してゴールドの元へと戻っただけだった。

「かかったね、エーたろうカムバーック!」
「しっぽで!! 攻撃される寸前に身を引いた  !!」
「エイパムのエーたろう。しっぽの方が手足より器用ってわけっスよ。
 ところで驚いている場合じゃあないんじゃない!?」

男のリアクションがゴールドにとって、快感になったのか口許が得意気に吊り上がっている。

「空ぶりしたボスが回転しちまってるっスよ  !!」
「うわあぁあ!!」

気づけば目の前が壁で、男は叫び声をあげた。

このままではゴールドとリナも壁さんとこんにちはしてしまう所だが、流石に二人は余裕の表情だ。

ゴールドはキューでスケボーの方向転換をし、リナはドンファンの硬い皮膚を蹴り、被害の無い場所に着地した。

その際に、飛んで来たポーチをゴールドが見事にキャッチした。

そしてゴーグルを上げながら意気揚揚と笑う。

「ボスがコケたらみなコケた〜っと!」
「それ亀じゃないの?」


# # #



「ウワ  ハハハハッ!」

高らかな笑いが響き、それと一緒にパリパリパリパリという音も響く。

「悪いっスね、悪いっスね〜〜。こんなにごちそうになっちまって!!」
「ん、美味しい」

ゴールドは両手にキキョウ煎餅を持ち、交互に食べるという豪快な食べ方だった。

リナは豪快な食べ方はしていない物の、食べる速度が尋常で無かった。

むしろ上品に、味わって食べているのは二人のポケモン達の方なんでは無いかと思う。

「いやあ良いことをした後は気持ちがいい。ひったくりを見た瞬間『これは放っておけない』と思いましたよ!」
(うそつけ)
(うそつけ)
(うそつけ)

名菓子店の店員、ひったくりの被害者、リナは揃いに揃ってゴールドの言葉に対して心の中で突っ込んだ。

「ワタシはジョバンニ。このキキョウでポケモン学の塾をしてるのデスが。まあ、でも良かったデス。このポーチと中の書類が無事で」

そんなに大事な物ならもっとしっかり、盗られないように持っているべきだと思うが。

そんな事をリナは思ったが、言わぬが花という事で煎餅をかじりながら心の中にしまっておいた。

「今日はウツギ博士の助手がみえる日でこの書類が必要アルね」
「ぶっ」
「うっわ、汚ッ!」

ゴールドが驚いて煎餅を吹き出し、リナがばっちい物を見るような目でゴールドを見た。

気にせずゴールドはジョバンニを何故か回しながら問いただした。

「本当っスか!? 本当にウツギ博士の助手が来るんスか!?」
「そんなに焦る事なの?」
「やべーんだよ!! バクたろうを持ち逃げしたって責めに来るんだ、きっと」

あんなボケーッとした博士なら大丈夫だと思うが……と思ってしまう。

「しょうがない。少しマジメさをアピールすっか!」
「ぷーっ! マジメさ!? アンタが!? 無理無理!! その爆発頭でもう不合格!」
「やかましい!」

お腹に手を当てて大爆笑するリナに怒声を浴びせる。

気にしてないように見せて、実は気にしてるのか頭を影で触る。

自分の趣味や好みを人に否定されると物悲しくなる。

「オイ、そこのひったくり!!」

当のひったくり犯は紐でぐるぐる巻きにされ、宙吊りにされている。

果たしてそこまでする意味があるのだろうか。

「オレの名はゴールド。ワカバタウンから来た。今、ある泥棒の行方をおってる。おまえの同業者で、こういうヤツいねぇか!?」

例のゴロウ特製モンタージュを取り出してひったくりに見せる。

「赤い髪でワニノコを連れてる。ウツギ博士の研究所からポケモンを盗み出した犯人だ  !」


食べ物の恨みは怖い
(食べ物は大切な)
(エネルギー源)


20131018

[ back ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -