ゴールドと半ば喧嘩別れをし、とりあえずキキョウシティに向かう事にしたリナ。

その顔は一転して真剣そのものだった。

(『キミにとってポケモンとはなにか』……か)

ずっと道中、その事に関して考えていた。

(そういえば、ずっと引っ掛かってたな……)

姉であるルナが、ポケモン達の事を『家族』だと言う度に、自分はポケモンをどう思っているのかと考えてしまうのだ。

答えは自分の中にあるのだが、上手く言葉に出来なかった。

そんなご主人の真剣の様子に気付かないのか、マリルが楽しげに弾むように隣を歩く。

このマリルは昔から一緒にいたが、変わった様子が無い。それ所か、前よりもやんちゃになり子供っぽくなった。

全く手が焼けるパートナーである。

まるで  

「まるで……」

リナはハッとしたようにマリルを見つめる。

見つめられたマリルは頭にハテナを浮かべ、体を傾けた(この行動は恐らく首を傾げているのだろう)。

「……何でも無いわ」

一瞬でかかった「答え」。

しかしそれは酷く自分らしく無く、考えを払った。

「この先がキキョウシティね」

31番道路に足を運ぶと海に繋がっている道に出た。

「あ、ちょっとマリル!」

水タイプのマリルは嬉しそうに水に飛び込んだ。

マリルの無鉄砲な行動はいつもの事だが、思わず頭を抱えてしまう。

(こんな時お姉ちゃんなら一緒に喜んで遊びそうだけど、わたしは早くジョウトから離れたいんだけどなぁ……)

そう思い、マリルを連れ戻そうとイーブイを出した時、マリルが水から飛び出して来た。

ただし、

「野生のポケモン連れて来んなああああ!!」

水の中にいたポケモンもわんさか連れて。

当のマリルは楽しそうに笑っている。また頭を抱える。

「確かあのポケモンは」

頭の中のポケモン図鑑に検索をかける。

誰か脇にいたらその人に任せるが、今リナは一人だ。ついでに一匹と最早役立たずのトラブルメーカー一匹だが。

「チョンチー!」

脳内ポケモン図鑑にヒットした。

「マリル気を付けなさい! 相手はただの水タイプじゃ無いわ!」

一緒に戯れていたマリルが不思議そうにする。

その時、わんさか居る中の一匹がリナに向かってスパーク≠放つ。

「ッ!」

地面を蹴り、勢い良く身を引いてなんとか避ける事が出来た。

それを見てやっと事の重大さに気付いたらしいマリル。おろおろとし始めた。

「チョンチーは水タイプだけじゃない……電気タイプも持ってるのよ……!」

チョンチーは二つの触手の先からプラスとマイナスの電気を流して相手を痺れさせる。

そうオーキドの博士のポケモンデータの書類に書いてあった。

戦いながらそれを思い出した。

「シャルフ!」

素早くイーブイをボールから出す。

すると、鋭い目付きをしたイーブイがすぐさま敵であるチョンチー達を睨み付ける。

「集団でしか戦えないアンタらにわたし達を倒せないわ! シャルフ、電光石火=I」

もともと素早いイーブイは技によって、より素早くチョンチー達に体当たりをかます。

電光石火≠食らったチョンチー達はボトボトと元の深海へと落ちていく。

リナは溜め息を吐き、近くで涙ぐんでいたマリルを抱き上げる。

「マリル、もう無鉄砲な事しないでね……」

そう言うとマリルはしょぼんとしたように耳や尻尾を垂らす。

「まぁ、いつもの事だけど」

ハッと耳や尻尾をピンとさせたマリルの鳴き声がリナの耳をつんざく。

何事かと後ろを振り向くと、まだ残っていたらしいチョンチーが自分に向かって来ていた。

イーブイに指示をしようとするが、チョンチーの触手が突如光り、リナは手で目を覆う。

(くっ……目が……目がッ)

某大佐のように目を閉じて唸り声を出す。

目が開かなくとも、声があれば。

リナはイーブイに目を閉じながら指示に徹底しようとした。

しかし、

「シャルフ……!」

シャルフは水鉄砲≠受け、飛ばされた音が派手に鳴った。

「……ッ」

目を閉じながら唇を強く噛む。

チョンチーは、マリルでは無く、目が見えない状態のリナに静かに近づいた。

そして自らの触手から、これまた静かに電気を流し始める。

これを人間に食らわせれば、スタンガンのような効果がある。

つまり、食らえばどんな人間も気絶すると言う事だ。

ジリジリと近く。

5、4、3、2、1……

今だ、と言う時に攻撃を仕掛ける。


だが周りには誰もいなかった。

チョンチーは驚き、辺りを見渡す。

「残念。普通の人間だったらアンタの思惑通りになったかも知れないけど、生憎わたしは気配に敏感でね」

フフン、と得意気に笑う。

「今よ、マリル!」

マリルはポヨンと跳ねながら丸くなり、チョンチーに向かって転が≠チた。

その威力は跳ねた分だけ強くなったようで、チョンチーは目を回してる。

「でもアンタ結構賢いわね。そこは誉めてあげる」

そう言いながらモンスターボールを投げた。

2、3回動いた後、カチンと音を発してボールの中に収まる。

フッ、と笑いマリルに目線をやる。

何だかんだで一番リナと息が合っていた。

「ナイス。マリル」

優しく撫でてやると、マリルは嬉しそうに笑った。

それから捕まえたばかりのチョンチーをボールから出した。

「アンタは今日からわたしのポケモンよ。名前は……そうね」

目線を上げて考える。

さっきの行動を思い返す。

チョンチーにされた事と言ったら光攻撃だった。

「そうね、さっきのアンタの光は他のチョンチーより眩しかった気がするから、クレール≠ゥしら」

クレール、それは余り馴染みが無い名前だが、音楽用語で「明るい、輝く、清らかな、高い」という意味がある。

比較的どれもこのチョンチーに当てはまる。

馴染みが無い為、ピンと来ないかと思ったが、語感が気に入ったのか何なのか、チョンチーは嬉しそうに頭の触手をピコピコ動かした。

「よし、決定ね」

ジョウトに来て2日、早くもリナのポケモンは三匹となった。


目映いばかりの光
(目が痛いんですけど)


20131016

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