「おまえの野望、今こそついえる時だ!!
 これだけの戦力を前に、もはや太刀打ちできまい!!」

一斉にポケモン達から、其々のタイプの技が繰り出される。

草(フシギバナ、メガニウム)、炎(リザードン、バクフーン)、水(カメックス、オーダイル、マリルリ)、電気(ピカチュウ×4)、超(エーフィ)だ。

だが、バクフーンの主人であるゴールドがいない。

なぜ、どうして  

リナは不安で不安で堪らなかった。それと同時に、どうしてこう最後の最後まで心配させるんだと苛立ちを感じる。

会ったら絶対殴ってやる。

そう思っていると、ポケモン達の技は、技の数程現れた氷の盾で防がれてしまった。

「なにィ!?」
「氷の盾で受け止めた!!」

グリーンとレッドの言葉に、ヤナギはそれだけではないと言う。

他にもなにか効果があるというのか、と思っていると、氷の盾は人形を形作っていく。

「氷の盾が周囲の水分を集めて10体の氷人形に!」
「10体って……オレ等の数じゃねぇか!」
「そんな!!」

そのクリスとリュウの発言を聞いた周りの人は、すぐに構えた。

なぜ氷人形が10体なのか、わかったからだ。

「行け、氷人形(レプリカ)たち!!」

思った通り、氷人形達はこちらに向かって来た。

それを、ポケモン達が技でねじ伏せようとする。

しかし、ひょろっとした体の割りには、氷人形は実に力強くて、そんじょそこらのポケモンよりも強かった。

ものの数分でポケモン達は逆にねじ伏せられてしまった。

そして、ポケモン達の次に向かってくるのは  自分達。

10人は揃いも揃って、氷人形に捕まってしまう。

勿論抗ったが、ポケモンに勝てない相手に勝てる訳が無かった。

どうしてこんなに力が出るのか、逆に不思議に思う位だ。

「フフフ…力が! 力がみなぎっている! 自分でもなぜだかわからないがもしかすると…」

ヤナギは懐から一つのボールを取り出した。そのボールは、誰にとっても初めて見る物だった。

「ついに完成したこいつが!! 私に新たな活力を与えているのかな!?」

ただ、一人は目の前でその完成を見届けた者がいた。

「時間(トキ)をとらえる…モンスターボール!?」

この場にいるクリスだけは、目の前でヤナギがガンテツにこのボールを作らせたのを見ていた。

クリスの言葉とボールを見て、側にいたリュウの眉根が寄る。

「おおおお、夢にまで見た瞬間だ!!」

今まで、開くような気配がしなかったウバメの祠が、手を出さずして開いた。

まるで時間をとらえるモンスターボールに反応したかのように。

『あれは!!』

ヤナギの陰から見える祠を見て、全員が目を見開く。

祠の中は神秘的に光り、そしてヒイイインという不思議な音を発しながら、奥の方から影が現れる。

それはまるで緑色をした、可愛らしい妖精かのように見紛う位の神秘だった。

しかし妖精では無く、あれは  

「シバが言っていた…」
「時渡りポケモン、
 セレビィだ!!

レッドが言う前に、リュウがその正体を述べた。

遮ってしまったからなのか、子供のようにムッとしてこちらを見るレッド。

だが、情報屋を嘗めないで頂きたい。

否、別に博識を自慢したかった訳では無く、あらかじめ調べは尽くしてるぜ、という事なのだが。

「その通り!!」

ヤナギ本人は投げず、ヤナギが乗っている氷人形がボールを投げる。

流石氷の人形、プロ野球選手顔負けの速さだった。

だからなのか、セレビィは逃げる事すら出来ずに、ボールの中に入ってしまう。

「ああ…」
「まさか……あんな簡単に……!」

ブルーが漏らした声に呼応したように、リナが有り得ないというように言葉を発した。

「さあ、セレビィ。連れて行ってくれ。
 私の失った過去を取り戻す時間の旅へ」

ルナは耳を疑った。

何を言っているんだ、と。

失った過去を、取り戻す? そんな馬鹿な。そんな事が出来るのなら、ルナだってやっていた事だ。

母と、そして父のいる世界へと。

だがそれはどんなに月日が経っても、どんなに部屋に籠ろうと、時間は取り戻せない。

だからその一瞬一瞬を噛み締めて生きるんじゃないか。

しかし、ヤナギの車椅子から二つの文字盤を見て、ルナはもっと驚愕する事になる。

「右側は時計、左側は温度計だ」

ヤナギがそう言って間も無く、セレビィは力を使ったのか、体がほのかに光る。

すると、右側の時計が狂ったように動きを出す。

「時計が逆戻りを始めた!?」
「いいえ、それだけじゃないわよ!!」
「右側の温度計はまもなく摂氏273.15度」

息が段々と白くなり始め、氷の匂いが鼻につき、また、鼻で息をした事により鼻の奥がツンと冷たくなっていく。

「すべてのものが凍結される、絶対零度だ!!」

寒くてガタガタと歯を上手く噛み締められない。

氷の人形が完全に固まった事により、巻き付いた腹回りも冷たい。……腹を下さなければいいが。

そう、特にナナとブルーが思った。

そして一瞬にして思う。なぜ、こんな服を着てしまったんだ自分は、と。

しかしまぁ、嘆いていても仕方が無い。そう自分に言い聞かせた。

そんなナナとブルーに対して、リナは見るだけで寒くなるから、目を逸らした。

リナは寒いのが大の苦手だった。

だから寒さを紛らわせる為に、別の事を考えようとする。

そして過ったのは  

「ねぇ、クリス……ゴールドと一緒にいたんじゃないの……!?」
「そうだ……ゴールド! どこなのっ!?」
「ゴールドか…。フフフフ、彼はよくやったよ」

その口振り、やはりヤナギとゴールドはもう戦っていたのか。

「この私の仮面をはぎ、『時間(トキ)のはざま』に入ろうとする私を引きずり落とそうと突っ込んできた…、
 強力な電撃(フラッシュ)≠ナいまだに目が見えないほどだ!」

確かにヤナギの目は盲目状態の、目に色が無い状態だ。

そこまで出来る位に、ゴールドの執念は強く、そして力量も強くなっていたのか。

リナは逸る気持ちを抑えて、この氷人形がどうにか出来ないかと思案した。

「じゃあゴールドは…」

クリスの言葉の途中で、クリスとリナの氷人形が何かの強い力によって溶け出した。

なんだか、前にも感じた事のある力だ。

力の方向である隣を見ると、そこにはシルバーと、側にはエンテイがいた。

「シルバー!」
(そうか命の炎=c…!)

前にも感じた事がある、というのはあの渦巻き島の中で感じた命の炎≠セったのだ。

「図鑑を見てみろ!!」
「図鑑?」

クリスが取り出したポケモン図鑑を見てみると、そのランプ部分が点滅していた。

だが、可笑しい。

「鳴ってない、わね」
「ああ、そうだ!『共鳴ランプ』は点滅しているが『共鳴音』はしない!
 図鑑もゴールドがこの場にいるのかいないのか、認識しかねている
「じゃあ逆に『この場にいるかもしれない』ってこと?」
「ああ!!」

だとしたら、尚更どういう事なんだ。

いるのに、いない。

前にゴースの力でポケモン達が消えた時にゴールドに言った言葉を思い出す。

『別にいない訳じゃない、いないように見えても確かにそこにいるのよ!』

確かにそこに、いる……!

「その声はシルバーか? さすが我が弟子、いい推理だ」

弟子、なんて言われたのが不愉快で、シルバーは目を吊り上げた。

「あんまりしつこいので『時間のはざま』中でちょっと細工をしてやった。かつて、ライコウ、スイクン、エンテイにしてやったのと…、同じ細工をな…」

その言葉を聞いて、ルナとイエローがエンジュシティでの事を思い出す。

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