側に近寄ってみれば、先程の暴走が嘘だったかのように二匹は静かになっていた。

やがて顔を見合わせ、頷き合うと、上空へ飛び立っていった。

「2匹が天へ帰っていく。悪しき呪縛から解き放たれて…」
「ああ! たくさんのポケモンたちの想いが悪に勝(マサ)ったんだ!!」
「良かった……」

おかげで、ポケモンは誰一人として傷付いた子はいなかった。

強い想いは、こんなにもポケモン(人間)に勇気や希望を与えてくれるのだ。

なんて  素敵な事だろうか。

「おかげで、あのほこらにオレたちを近づけまいとしていた敵の思惑は消えた」
「さあ、ブルー! フリーザーとサンダー、それに上空のファイヤーもボールに戻してくれ!」
「え? ええ」

不思議がりながら、ブルーは三鳥をボールに仕舞う。

それを見て満足げに笑って、レッドはボールを二つ取り出した。

「オレたち、やっぱり最後はこの4匹だろ!?」

「返しとくよ!!」レッドが放り投げたのは、借りていたボールだった。

何も貸していなくて、オマケに博士からポケモンを持っていないルナはちょっぴり寂しくなって俯いた。

そんな時、突然視界が黄色で占められた。

「ひゃあ!?」
「チュカだ!」
「え、なんで……」

受け取ると、確かに耳に真っ白なリボンを付けているのは、ルナのピカチュウであった。

側にはレッドのピカチュウもいる。リュウとイエローのピカチュウはいないが。

「ルナといえば、コイツだろ?」
「……っ、うんっ!」

満面の向日葵の笑顔を見せると、レッドはしっかり頷いてくれる。

そうして、四人は地を蹴り、走り出した。

「行くぞ!!」


# # #



大勢のトレーナーの想いで、ルギアとホウオウが解放されたのを間近で見たのは、レッド、グリーン、ブルー、ルナだけでは無かった。

ピエロのような格好をした少年  イツキも立ち会っていた。

だがイツキの場合は暖かくなるなんてとんでもない、焦っていた。

「ホラ〜、なんだかたくさん集まっちゃって! ルギアとホウオウまで解放されちゃって!! この場は…」
「ダメだ」

こっそり逃げ出そうとしたイツキの前に、何かが邪魔をする。

「わ!!」
「…逃げることは許さん…!!」

その声は、小さな頃から聞いてきた、自分が弟子入りをした人物だった。

「あ、あなたはマスク・オブ・アイス!! 仮面とマントはどうされたので…」

イツキの言う通り、「仮面の男」は大事な仮面とマントが無くなっており、人形の氷に乗った、




チョウジジムのリーダー、ヤナギになっていた。




しかもウリムーを膝に置きながら、かなり疲労した様子だった。氷の体にはお腹に穴が開いてしまっている。

だが、そんな事を気が立っているヤナギに言えば怒られる訳で。

イツキはヤナギに、氷の体の足に踏み潰された。

「しつこくはむかう者がいてな…。時のはざままで追いかけてきたが、ひとまず片付けた…。…ところでイツキ…」

一番腹ただしい事を言い出そうと、踏み潰した足で、グリグリと強く押し付ける。

「あれほどここに誰も近付けるなと言っておいたではないか!
 ところがどうだ、このずいぶんにぎやかな気配は?」

だが、強く踏み潰されているせいで、目をぐるぐると回しているだけで、返事は無い。

「そして…、
 草陰にいるのは」

「オレだ! やっと会えたな!!」



  シルバー。



「こっちもいるわ!!」
「ルギアとホウオウとの空中戦は制した!!」
「おまえの持ちゴマはもうない!!」
「さぁ、観念して下さい!!」



  ブルー。

  グリーン。

  レッド。

  ルナ。



「わたしもいます!!」
「クリス!」



  クリスタル。



「みんな!」
「イエロー!」
「イエローさん!!」
「イエローさんっ!」



  イエロー。



「わ。ヒカリにチュチュ!!」
「バクたろう!」



  リュウのピカチュウ。

  イエローのピカチュウ。

  ゴールドのバクフーン。



「ほら! アンタらが馬鹿みたいに夫婦漫才してるから出遅れたじゃない!」
「だから夫婦じゃないっての……」
「ウフフ、あたしは嬉しいわぁ!」
「リナ!!」
「リュウさん!?」
「ナナお姉様!?」



  リナ。

  リュウ。

  ナナ。




これで全員、揃った。

10人と、10匹+3匹。

こんなに大勢いるというのに、視線の先の標的は皆同じ。

ヤナギへと向けられていた。

「おまえの野望、今こそついえる時だ!!
 これだけの戦力を前に、もはや太刀打ちできまい!!」

一斉にポケモン達から、其々のタイプの技が繰り出される。


(全員……? 全員じゃ、ないわ!!)






  ゴールド!!!!






強き想いに救われた
(どこにいんのよ!?)


20140201

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