レッド、グリーン、ブルー、ルナは、サ・ファイ・ザーに乗ってから暫く経つ。

ルナはレッドとグリーンと共にホウオウ達の攪乱(カクラン)をしていたからあまり詳しくは分からなかったが、ブルーはホウオウに乗ったカリンから攻撃され、ファイヤーの尾になんとか掴まっている状態だった。

「レッド、あれ……」
「あ! ブルーが!」
「フリーザー、お願い! ブルーの所へ行って!」

フリーザーはルナの気持ちを汲み取ると、コクンと頷き、ブルーの元へと急いだ。

その間にも、ブルーは手を離すまいとしているが、手は痺れだし力は抜け始め、限界に近かった。

綺麗な顔からは汗が滲んでいて、どれだけ一生懸命手に力を入れているかが窺えた。

だが、限界というのは急に来る物で、突然手が離れてしまった。

「あああぁぁ!!」
「ブルー!!」
「ブルゥゥゥ!!」

乗せようとした瞬間に落ちた為、高さが合わずにすれ違ってしまう。

レッドはルナがブルーを追おうとするのを、必死に止めた。

ルナまで落ちてしまったら、手に負えなくなるし、それに  

そこまで考えて、グリーン、つまりサンダーがブルーを受け止めた。

ほっ、とルナが息を吐いた。

「ありがとう、グリーン」
「……」

グリーンはブルーの礼に、一言も発さずに黙っていた。

「大丈夫か、ブルー!?」
「ええ!!」
「本当の本当に大丈夫だよね!? 怪我してないよね!?」
「してないわ!! ルナは相変わらず心配性ね!!」

ルナの心配性っぷりに、笑みを浮かべながら、空気の音に掻き消されないように目一杯叫んだ。

だけれど、大声を出したからか、少し、すっきりしたかもしれない。

「あとわずかでもルギアとホウオウとの距離をつめられれば、サンダーの電撃やフリーザーの氷攻撃が有効なんだが…!!」
「ああ」
「うん……でも」
「そのわずかがつめられない!!」
「く!!」

フリーザーとサンダーの間に、聖なる炎=芙エアロブラスト≠ェ放たれ、なんとか避ける。

先程からこの調子である。

どうすれば、二匹に攻撃されずに近付けるのだろうか。

「考え方を変える必要があるな!」
「考え方!?」
「伝説と呼ばれるあの2匹、本来ならトレーナーにつくことのない存在だ。それがここまで敵の支配下に置かれているということは…」

コクン、とルナは頷いた。

グリーンの言いたい事はわかる。

でも、

「逆にその呪縛から解き放ってやることが先決!!」
「確かにそうだけど…。でもどうやって…」

レッドが少し怒りを含んだ声で言う。

そう、問題はどうすれば良いのかという事だ。

技を当てる事も不可能、動きを止める事も不可能、となったらどうも出来ない。

「あれ……?」
「? ルナ? どうした?」
「何か聞こえない? 本当に微かだけど」
「そうか? 何も聞こえな……」

音なんてどこからするんだ、と辺りを見渡していると、レッドは視線の先に何かを見つけた。

「な、なんだあれは!?」

レッドが指差した方向を、ルナ、グリーン、ブルーがその方向を見る。

すると、確かにその方向には何かがあり、その何かはルナが聞いたと思われる声を発しながらこちらに向かってくる。

まだ、それがなんなのかは分からない。

しかし段々とシルエットは鮮明になっていき、声も聞き取れるくらいにはなっていた。

そして、ルギアとホウオウがそちらを向く時には  





数多くのポケモンという事がわかった。





「ヒワダの町からポケモンの大群が…。ルギアとホウオウに向かって行く!!」



それは、全国中のトレーナーの想いのすべてだった。

ポケモン大好きクラブの会長、

メノクラゲと一緒に風呂に入って感電した人、

ドードーを亡くしたおじいさん、

サファリの人々、

モーモー牧場の人々、

牢屋に入っている悪事を働いていた人、

コガネで喫茶店を営んでいる人々、

カジノの恐持ての人々、

ジョバンニ塾の子供達、

本当に色々なトレーナーの想いだった。

「この戦いをくい止めたい!」その想いがポケモンたちに伝わり、

ひとつひとつは小さかったが、それらが合わさり大きな力となった。

ルギアとホウオウを悪の支配から解放する、大きな力に!!

それは、四人にも伝わっていた。

「何かを感じる!」
「まるで…、凍てついた心を解かすような…」
「あたたかな……力…」
「なんだかお母さんみたい……」

四人の心まで温められた時、ルギアとホウオウの瞳が、いつも通りの生気に満ちた瞳へと変わっていく。

すると、ルギアとホウオウは地へと降り立った。

まるでもう何もしないという意志の現れかのようで。

「ルギアとホウオウが暴れるのをやめた!」
「アタシたちも降りましょう」
「うんっ!」

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