ブルーはファイヤーに乗り、カリンの乗っているホウオウと戦っていた。 先程、最後の一線を越える事ができたのだ。 カントー四天王との戦いが終わってから、すべてをシルバーにまかせて、ブルーが姿を消したのは、 やらなきゃいけない事があったから。 乗り越えなきゃならない事があったから。 克服したのだ。過去の忌まわしき記憶を。 自分の中の弱さを、恐怖を。 その時、地上にいる大切な仲間を三人、見つける。 「レッド! グリーン! ルナ!」 三人もこの戦いの場に来ていたのか、と驚くと同時に頼もしさを感じた。 この三人と一緒なら、俄然ヤル気も出る。 急いで三人の元へと下降していく。 『ブルー!!』 「レッド、グリーン、ルナ、乗って!!」 その声は三人に届き、一瞬の内にグリーンはサンダーに、レッドはルナと共にフリーザーに乗った。 大丈夫、この3匹の技や、強さは自分達が一番知っている。 三年前に敵として戦った三鳥を仲間に出来るなんて思っても見なかったが。 サ・ファイ・ザーは、其々得意な技を其々の部分からホウオウへ向けて放った。 それはホウオウの聖なる炎≠ニぶつかり、ホウオウは押されぎみであった。 だがそこに加わるのはルギアのエアロブラスト=B 炎に空気を与えてしまえば、炎の力は強くなる訳で。 三人は火力を増した聖なる炎≠ノ、押しやられてしまう。 その反動で、三人は振り落とされ無いように其々の首に捕まる。 しかし、相乗りしていたルナはフリーザーから落ちそうになってしまう。 「きゃ……!」 落ちた、という認識が、落ちた瞬間には不思議と無くて。 フリーザーが遠く離れてしまう。空が、蒼い。 それだけだった。 だけれど、段々とヤバいという感覚がついてきて、目に涙を滲ませて固く瞑った。 落ちる ルナの腕を、逞しい手が掴む。 「ルナ!」 「レッド!」 一瞬で力強く引き寄せられ、またレッドの胸の中に収まる。 なんだが、今日はやたらと彼と接近しているな、なんてぼんやり思いながら。 「しっかり掴まってろよ!」 「う、うん」 だからだろうか。 凄く逞しくて、レッドを、男として意識したのは。 彼の思う以上に大きい背中に掴まり、風邪でも無いのに顔が火照る。 そう思っている時に、ホウオウが迫ってきたので、ああ、だからかなんて検討違いの事を思ってしまう。 そしてそのホウオウは、フリーザーとサンダーを纏めて炙れる位の炎を発射した。 なんとか避けるが、危なかった。 レッドとルナは一緒になって「うひゃあ!!」と叫ぶ。 それから、なんとかホウオウから距離を取り、余裕がちょっとで出来てレッドは改めてフリーザーに声をかける。 「フリーザー、久しぶりだな! でもなんでおまえたちがこのウバメに? おまけにおまえたちと一緒に戦ってるのが、鳥恐怖症のブルーだなんて…」 「ええと……どうやら3匹共、ブルーに捕まえられたみたい」 「ブルーがか!?」 「うん、みたい……」 フリーザーの様子で分かった℃魔、レッドに伝えると、大層驚いていた。 「レッド! ルナ! 今飛びかかってる2匹は伝説に伝えられるルギアとホウオウだ!」 ルナは、エンジュで聞いたホウオウとは、あの鳥の事なのかとハッとした。 ルギアもよく見れば、渦巻き島にいたポケモンでは無いか。 逆に今まで気付かなかった自分に天晴れだ。 「動きを見るとこいつら…この森に何者をも近づけまいという勢い…」 「ということはやっぱり…!!」 「ああ! さっき聞いたセレビィの話…。リーグを襲った敵の最終目的はそれだ! 邪魔が入らないようこの森にあの2匹を配したにちがいない!!」 「と、いう事は……」 「その敵を阻止しようというのが…」 『ブルー!!』 確かに話は繋がった気がする。 鳥恐怖症が克服出来たのも、敵の野望を阻止する故の執念、みたいな物かもしれない。 でも、なぜ話してくれなかったのだろう。少し、寂しい。 「ルナ、落ちないように、しっかり捕まってろよ!」 「え 言われた瞬間に、ぼけっとしていたルナに襲う浮遊感。 まるでジェットコースターのように、上空に、それも少しアクロバットに、舞い上がった。 ヤバい、これは本格的にしっかり捕まっていないと落ちるぞ 咄嗟にレッドの背中に、ぎゅむむむむぅぅぅうと強く抱き締める。 なんだか背中を通して「ぐえっ」という声が聞こえてくるが……こんなに高くから落ちるのは御免だ。 しかも、ルナは今まで鳥ポケモンに乗った事は数える位だから、あまり特殊な動きは耐性が無くて そんなこんなしていると、サンダーとフリーザーとでホウオウの背に回る事が出来た。 だが、すぐにホウオウは反応し、こちらへ聖なる炎≠吹いてくる。 「うわあああ!!」 「ひゃあああ!!」 なんとかフリーザーが避けてくれたが、レッドの帽子からチリチリという音が。 「うわつつ!!」 「た、大変です!」 すぐにレッドの帽子にちょこっと点いた炎に、ルナが消そうと、レッドの帽子を思いきり叩く。 バンッ、バンッ、と。それはもう念入りに強い力で。 「痛い痛い痛い!!」 「ほっ、消えましたよ!」 「そ、そうだけど……」 「一度距離をとれ!」 こいつらはなんでこんな時も呑気なんだと、呆れながらにグリーンが言うと、フリーザーとサンダーがホウオウから距離を取る。 (マズい…! このまま相手をかく乱しつづけることはできるだろう。だがそれだけでは敵の思うつぼ…) 一刻も早く、首謀者の所にいって、本人を倒さなければ、野望は達成されてしまう。 そうなれば (戦いには…負ける!!) # # # 「絶対に……勝つ!!」 リナは、高らかにそう宣言した。 目の前にはリュウとナナの幼馴染みのウインディとニャース。 本気の、メンバー。 「オレ等も本気だから」 「簡単には勝たせないわよ」 そう言って、二人は不敵に笑う。 リナはボールから、よく仲違いをするランターンとデンリュウを出した。 だが、今は同じ敵を睨んでいて、喧嘩をする事は無い。 それどころか、二匹は似た者同士だから、きっと息が合うに違いない。 「クレール、ヴェルテ、10万ボルト!!」 ランターンは頭のライトから、デンリュウは額の宝石から10万ボルト≠出し、二匹の力が合わさるかのように、重なる。 そしてそれは二人のポケモンに向かっていく。 「カモミール、守る=I」 「ヒエン、火炎放射=I」 だが、その二匹の渾身の攻撃も空しく、素早く広範囲に広げられた守る≠ナ技は無効化し、その内にウインディが火炎を放射する。 それをデンリュウが避けるが、ふとランターンがノロノロと逃げるのが見えた。 一瞬イラッとするが、よく考えて見れば、ランターンは水タイプも持っているから陸上ではあまり俊敏には動けないのだ。 そう理解すると、デンリュウは自慢の怪力≠ナランターンを持ち、脇へと避けた。 (あのヴェルテが、クレールを助けた……) 主人であるリナは思わずポカンとしてしまう。夢でも見ているのか。 そう思って隣にいるマリルリに手刀を入れると、マリルリは叫び声をあげた。 良かった夢じゃないみたいだ。 ←|→ [ back ] |