「え、えと、母を御存知なのですか?」
「ああ! あやつの小さい頃は小さなポケモンと一緒になって遊んだわい!」
「そうだったんですか!」
「それで、なんの用じゃ?」

もう少し母との事を知りたかったが、ルナはイエロー達を介抱して欲しいと頼むと、二つ返事で了承してくれた。

ピカチュウ4匹も、ぐっすりなので四匹共預けておく事にする。

お婆さんが、ルナを中へ招き入れようとすると、ルナは首を振った。

「今、ジョウトに何が起きているのか、知りたいので」
「ふーむ……そうか……まぁ、気が向いたらここへ来るとよい。いつでも歓迎じゃ!」
「はいっ、有り難う御座います!」

優しいお婆さんに、向日葵のような笑顔を向けて、踵を返してキュウコンに乗り、去っていく。

お婆さんは、その様子を視線で追いかけるように、見送る。

そして見えなくなると、中へと戻っていく。

お爺さんに今の事を伝える為に  

(マリア。お前に似て、向日葵のような子じゃな)


# # #



ルナは先程まで自分が倒れていた34番道路に戻って、誰かに電話していた。

「……あ、もしもし」
『お姉ちゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!』

    ン……、

いきなり大声で叫ばれ、鼓膜が破れるんじゃないかという位に、耳をつんざく程の声だった。

そんなに大声で叫ばれるような事を、自分はしただろうか?

「え、えと、リナ?」
『リナ? じゃないよ!! どんだけ心配したと思ってるの!! っていうか、なんでジョウトに来てるのよ!! よりによって、このタイミングで!! せめて連絡頂戴!! お姉ちゃんは連絡する癖をつけたほうが良いよ、うん!!』
「えと、あ、あの」
『何!?』
「あ、あぅ!?」

凄い剣幕でガミガミと言われ、さすがにオロオロしてしまう。

「……えと、とりあえず」
『うん、何!?』





「都会、だねっ!」





これにはリナも頭を抱えてしまう。

ルナは「あ、あれ!?」とか言っている。うん、わかる、わかるよ。天然だって事位。

『わたしがどれだけ心配したと思って…………はぁぁぁ……』
「ご、ごめんなさいっ」

リナは脱力したように画面の向こうでペタン、と床に足をつけた。

なぜそんなに心配してたのか、わかったような、わかってないような感じだが、相当心配してくれていた事は伝わった。


『……………良かった』


ポツリ、と呟かれる声に、とくん、としてしまう。

別に同性愛とかでは無く、妹が心配してくれた事に、自然と胸が鳴ったのだ。

「うん……有り難う、リナ」
『どういたしまして。お姉ちゃんはいっつも、わたしを心配かけさせるんだから』

リナの切羽詰まった感じや、苛々とした感じはもう無く、いつもの余裕の表情だった。

「えへへ、心配性だなぁ」
『(うん、そんな事言うのお姉ちゃん位だけどね)誰だって心配するよ』
「ううん! リナが優しいんだよ!」
(だから、そんな事言うのお姉ちゃん位だよ)

きっとゴールド辺りが聞いたら、その言葉に首を振るに違いないとか思ったり。

「あ、そうだ。……ねぇ、今、ジョウトに何が起きているの?」
『! ……お姉ちゃんの事だから、きっと首を突っ込むんだろうね』
「私だって、突っ込むべき所と、突っ込まざる所の区別はつくよ」

リナは溜め息を吐いた。

こうなってしまえば、ルナを止める事は出来ないだろう。

ジョウトに来たと知った時点で、こんな事になるだろう事は分かっていたが、仕方無くクリスから聞いた話と仮面の男の事を話した。

ルナは、ただただ、真剣な顔付きで聞いていた。

「……なるほど、ね」
『で、お姉ちゃんはどうするの?』
「行きたい所が出来た」
『……どうやって行くの?』
「なんとかする」
『なんとかって……』

また溜め息を吐く。

姉の目付きは完全に本気だ。というより、いつもより本気だ。

「大丈夫、絶対。ね?」
『……わかったよ、お姉ちゃんは頑固だもん。折れないよね』
「えへへ、ごめんね?」

可愛らしく笑いながら謝られたら、だれが許さないんだよ。

相変わらずの可愛らしさに鼻血を吹き出しそうです。誰か助けて。

『お姉ちゃん、今、どこ?』
「え? 育て屋さん近く」
『あちゃー、そっちか……ウバメじゃなくてそっちにいれば良かった。今、向かえに行くから』
「ええ!? 良いよ、大丈夫!!」
『何が大丈夫なの! 方向音痴の癖に!』
「ゲッコウがなんとか手伝ってくれるよ!」
『ポケモン任せって、あのねぇ!?』

呑気な姉に小言染みた事を言う。

どうしたら姉の呑気さは治るんだ。否、血筋だからどうにもならないか。

どんどん不安は募るばかりだ。

「任せっ切りじゃないよ! ちゃんと自分でもなんとかする! ゲッコウの指示も抜かりは無いし!」
『お姉ちゃんがゲッコウに意識向いてる時に、お姉ちゃんに攻撃って事……も……』
「大丈夫だよ! 後ろにはエヴォも……って、リナ?」

自分の言葉の途中で、何かを考え込んでしまうリナ。

まるで、自分の言葉に何かの手がかりを掴んだような。

『ご、ごめ、やっぱりお姉ちゃんなら大丈夫だよね!?』
「え、うん、勿論!」
『じ、じゃあ御免! 切るね!』
「あ、リナ  

ツーツー……。

虚しい会話終了音がポケギアから聞こえてくる。

何をしに行ったのかは、分からないが、どうか上手くいくと良いと思う。

さて  

「私も行こうか!」



(私達は一心同体だから)


20140128

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