ともに戦うトレーナーとして、水タイプのエキスパート、カスミを選んだスイクン。 そしてスイクンと同じく目覚めたライコウ、さらにエンテイにも間もなく同じ決断の時がせまっていた。 伝説のポケモンとよばれる3匹。 この3匹が何のために、そしていかにして復活し旅立ったのか……!? 時は数週間前に遡る……。 地盤沈下により被害をうけたエンジュシティ。 その郊外、「焼けた塔」の地下でひびく3つの命の鼓動!! # # # 事件から数日。 町中の市民が総出で1日も早くもとの生活にもどすべく、復興作業を行っていた。 「さあ、スズの塔の修復を急ぎましょう!」 仕切っているのは、このエンジュシティの地盤沈下時の被害者である、アサギシティのジムリーダー、ミカンだった。 筋肉質のおじ様達の中で、真っ白なワンピースを着た可憐な少女がいるというのは、凄く違和感があった。 「ルナさん、おじさん、ここですよ!」 パタパタという音と共に、中性的な声が聞こえてきた。 そちらを向くと、バタフリーで飛ぶ麦わら帽子の少年と釣りびと、キュウコンで地を走る向日葵の髪の少女がこちらへ向かってくる。 「ラジオで言ってたとおりめちゃくちゃです」 「ああ、ひでえもんだ! うわさどおり人災だとしたら許せんな!」 「本当です! もとは凄く綺麗だったのに……」 眉を下げて、至極悲しそうにする。 「あなたがたは?」 その時、ミカンが三人に話し掛けた。 復興作業を開始して以来、普通の人はなかなか来ないのだ。 「突然申し訳ない、こいつはイエロー。オレはそのおじで、このお嬢ちゃんが」 「私はルナと言います!」 「ある調査でカントーから来たんです」 各々自己紹介すると、イエローが降下してミカンと握手をする。 その後に、ルナもキュウコンから降りて握手をした。 「復興作業のことも、ラジオで聞きました。何かお手伝いできることがあれば、言ってください」 「私達に出来る事なら、出来る限り頑張りますっ!」 「ありがとう! わたしはミカン。アサギシティのジムリーダーよ!」 ミカンがそう言うと、三人はキョトンとする。 「アサギ? じゃあエンジュのジムリーダーは?」 「マツバ…ここのジムリーダーなら、事件の前から仕事で遠くへ行ってるの」 その言葉を聞いて、おじが残念そうな顔をする。 「そうか…、事件のあった日のことを聞きたかったんだがなあ」 「あら、それなら、わたしが教えてあげられるわ。なにせ、その日まさしくここにいたんだもの」 ルナはミカンの側近であるデンリュウを撫でながら、ギョッとする。 それはつまり事件に巻き込まれたという事では無いか? 「沈下が一番ひどい時、わたし自身、このスズの塔に閉じ込められていたの」 「ええええ!?」 「この塔に!? 大丈夫だったんですか?」 「ええ! 助けてくれた人がいたの」 へぇ、その助けた人は勇敢だなぁ、と思って感心したが、まさかその人は妹で、しかも成り行きなんて事は知らない。 「そのあと、ケガをした人やポケモンをほっておけなくなっちゃって、そのまま手伝ってるんだけど…」 「わぁぁ、ミカンさん優しいんですね!」 「ふふ、そんな事無いわ。むしろ、こうやって手伝いに来てくれているルナさんの方が優しいわ」 いやいや、そんな! と照れたように否定し、手を横にブンブンと振る。 否定したって、ルナが優しい事はもうここにいる三人は把握している。 だから、微笑ましく彼女を見つめた。 「見たところ、この塔を優先して修復してるようだが?」 「ええ、マツバの指示なの」 優しく言うミカンだが、どこか凛とした表情で言う。 「この塔の塔主(アルジ)、ホウオウの怒りをしずめるため」 『ホウオウ!!』 三人は驚愕の表情で、ミカンの顔を見つめた。 流石に三人はホウオウの存在を知っていた。 ジョウトの数多くの伝説ポケモンの一匹。 虹色ポケモンで、七色の見事な翼で世界の空を飛び続けると神話に伝えられるポケモン、ホウオウ。 「聞いたことがあるぞ! 伝説に伝えられている虹色の鳥ポケモン! この塔と関係かあるのか!?」 「ええ。このスズの塔は、ホウオウの降り立つ場所。 そして『もうひとつの塔』とともに、150年前の出来事を伝えるいわくつきの塔」 ミカンは、鋼のようにシャキンとした面持ちで、言った。 「150年前の出来事……?」 「もうひとつの塔って…、どこにも見えないけど…」 その時、二人の疑問を遮るように、「たいへんだー!!」という声がした。 その声を発した工事現場の人はミカンの所へとやってくる。 「『焼けた塔』からまた火が上がったぞ!!」 「まあ!!」 「…焼けた」 「塔?」 「ですか?」 三人は、ミカンと共に『焼けた塔』に向かうと、その塔は燃え盛る炎に包まれていた。 その塔の周りでは、バケツリレーをする人達が。 「おい、たしか『焼けた塔』っていったよな!! これが塔なのか!?」 「むかし大火事があって、2階より上は焼け落ちたの! それより消火を手伝って!!」 『焼けた塔』というより『焼けている塔』とか『焼ける塔』という感じで、過去形という感じがしない。 しかも、さっきの工事現場の人は、『また』と言っていた。 「そんなんじゃ間に合いません! 上から一気に消します!!」 「私も行きます!! ロコ!!」 イエローは釣竿を持ってバタフリーで上に向かい、ルナはキュウコンで塔の上へ向かう。 キュウコンは炎タイプだ。こんな炎の中でもなんなく駆け抜けられる。 「オムすけ!!」 「エヴォ!!」 『ハイドロポンプ!!』 オムスターとシャワーズのハイドロポンプ≠ェ、塔の上へ降り注ぐ。 「イエローさん、あそこを消せばきっと鎮火します!!」 「わかりました! オムすけ、あっちだ!」 イエローが器用に釣竿を使ってオムスターの場所を移動させる。 それに対して、シャワーズは身軽な為、自分で移動して水を出す。 その甲斐合ってか、火は見事に治まった。 「ふう、もう大丈夫そうだ。オムすけ、帰っといで」 「エヴォ、お疲れ様! ゆっくり休んでね!」 オムスターが釣竿を辿ってイエローの元へ戻り、シャワーズが「ふふん」と得意気に笑ってルナの元へと戻ってきた。 「え?」 「イエローさん!?」 イエローが釣竿を引き戻そうとした時、くん! と竿が引っ張られる。 それも、物凄い力で。 ←|→ [ back ] |