リナがズササァァという音をたてて、足を使って岩場を滑り落ちる。

三人は一瞬不思議そうな顔をしたが、リナの後を追うように洞窟を後にした。

彼女が立っていたのは、先程までいた場所だった。

そこでルギアがいた方向を見つめていた。

「ねぇ、シルバー。さっき言った事は違ったのね。ルギアは別に光幕に紛れた訳でも、わたしの能力≠ェ効かなかった訳でも無い」
「ああ、オレたち以外にも、どこからかボールをはなっていた人物(トレーナー)がいた! そしてそっちのボールの方が一瞬早くルギアの額を捕えた」

もしかしたら、リナはその人物に利用されていたのかも知れない。

そう思うと、凄く悔しくなった。

シルバーはそんなリナの横で、ボールからヤミカラスを出して飛び上がった。

「ちょ、ちょっとどこへ行くの!?」
「オレの勘が正しければ、それはおそらくこの巣を襲った攻撃者でもある! すべては仕組まれていた!」
「まさかあなた一人でその攻撃者を探すつもり!? まずはオーキド博士やウツギ博士に相談しましょう!!」

クリスの言葉に、シルバーは身動ぎ一つしない。

「オイオイ学級委員ギャル、アイツにオーキドのじーさんやウツギ博士と連絡をとれなんてこたぁムリな話よ」
「どうして!?」
「……」
「ム、ムリなもんはムリなんだよ! 雰囲気で察しな!!」

そう、ムリなのだ。

連絡どころか会う事すらムリだ。会ってしまった瞬間に、刑務所入りかもしれない。

だからムリなのだ。それでなくても、シルバーは誰かに相談なんて無縁な人生を歩んできている。

「あなた達はいいの!? 彼を1人で行かせて!?」

クリスが必死な面持ちでゴールドとリナに言う。

ゴールドとリナがシルバーと多く接触してきた事は、会話などや想像で分かったのだろう。

リナとしては構わなかった。

なぜならそれが宿命、というか運命なのだろうから。

さて、ゴールドはどう思うだろうか、と思って彼を見ると、ゴールドは後ろ手を組んで黙っていた。

「………。ああ、べつにいいぜ」

シルバーが少し反応した事を見逃さなかった。

「ちょっと前までならオレも言ったろうさ、『オイ! また1人で行くのかよ!』ってな」

今まで旅立ってからずっとそうだった。

最初はリュックを盗まれたと思ってシルバーを追い。

リュックの犯人はシルバーじゃないと分かった後も、なにかを知っていたシルバーを追い続けた。

その時は、まだ全然シルバーの事を知らなかったから。

しかし、追い続けた後に、シルバーが何を思っているか、何を追っているかを知れた。

だから  

「だが、今はそうは思わねえ! アイツとオレは同じ敵を追ってる!
 だからたとえ別々に動いてようと、その敵に行き着く時にゃあ、ぜってーまた顔を合わせる、そう思ってっからよ!」

ゴールドはそう言って、口許に弧を描いた。

なんの根拠も無くて良い。そう思っている内にはそうなるものだ。

クリスが「同じ…、…敵!?」と不思議そうに言う。それもそうだ。クリスはシルバーの事も、二人の関係も何も知らない。

その内に、シルバーがゴールドの言葉を聞き受けたようにヤミカラスで飛んでいく。

それを、ゴールドは背を向けていて、見てはいなかった。

ゴールドが後ろ手を組みながら、クリスがシルバーの去った方を見ながら、リナが海を見つめながら、黙っていた。

しかし、突然二人が声をあげた。

「あ!!」
「そうだ!!」

本当に突然だったもので、リナは顔をしかめて耳を塞ぐ。

「イエローさんとルナさん無事かしら!?」
「つりびとのおっさん無事か!?」

二人が同時に言った。

しかし、リナは聞き逃さなかった。

「ねぇ……今、なんて?」
「つりびとのおっさん無事か、って」
「アンタじゃないアンタじゃない」

すぐに反応したゴールドを退けて、クリスタルの側に行く。

「え、わ、わたし!?」
「そうよ」
「えっと……イエローさんとルナさん無事かしら……って」
「……ッ!」

やはり、聞き間違いでは、無かった。

確かに今クリスは、イエローと「ルナ」の名前を言った。

イエローとセットからして、人違いでも無いだろう。

リナはへなへなと力を無くしたように地べたに座り込んだ。

「ど、どうしたの!?」
「なんで……よりによって、こんな所に……」

しかもクリスタルがその人の無事を心配する、という事はクリスが乗っていたあの小型船に同乗していたと考えられる。

急いでリナはルナに電話をかけた。

ルナはたまにポケギアの場所をバタバタと探すから、20コール位は待たなくてはならない。

「……ルナさんとどういう関係なのかしら」
「あいつの姉ちゃんだとよ」
「ええ!? あれが!?」

言ってハッとして口を押さえるが、リナは電話に夢中になっていて聞いていなかったようだ。

しかし、それにしても、……似てない。

リナにとってのNGワードだが、本当の本当にそう思ってしまう。

「わかるぜ、その気持ち」

オレも似てねぇって思ったぜ、とゴールドはケラケラ笑う。

そりゃあ、向日葵のような天使のルナと薔薇のような悪魔のリナでは差がありすぎた。

「でもよ、結構あれで可愛いとこも  
「ああ、もう!! 繋がらない!!」
  あー、やっぱなんでもねぇ」

繋がらない事に苛立って地面に蹴りを入れ、亀裂を作るリナを見て、言いかけた事を止めた。

「お、落ち着いて!」
「落ち着ける訳無いでしょ!!」

怒鳴ってから、クリスは関係無いのにそんな事を言ってもしょうがない、と後悔したように目を逸らした。

しかし気が収まる訳でも無い。

嗚呼、どうしてこんなにも自分を心配させるんだ、と。

「……探しに行く」

そう言ってレディアンを出せば、レディアンが背中にピトリと張り付く。

「あ、ちょ、ちょっと待って!」
「……何?」
「ポケギアの番号を登録しておくから、わたしの方で見つけたら連絡するわ」
「……ええ」

有り難う、なんて言えもしなかったが、クリスは悪い顔一つせずに笑ってくれた。

自分と違い、なんて優しい子なんだろうと思って、尚更無愛想になる。

「ちょっと貸せ」

と、ゴールドが自分のを登録し終えたクリスから奪い取る。

「オレのも入れて置いたからよ」

ポイッ、とリナに向かって投げられたポケギア。

受け止めればポケギアの画面にはゴールドの名前が表示されていた。

「わたしがアンタに電話すると思う?」
「思わねえ。けどよ、連絡手段位はあった方が良いと思ってよ」

ゴールドが笑みを浮かべながらに言う。

まぁ、確かにいざと言う時に役立つかも知れないが。恐らくいざと言う時は訪れなさそうだ。

「……例え別々に動いてようと、また顔を合わせる、か」

ポケギアをギュッと握り締め、ゴールドに微笑みかける。

二人が驚いたように目を見開いていたが、気にせずに飛び上がった。

次に合うときは、きっと  


また出会う、だから
(さぁて、どこを探そうか)


20140126

[ back ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -