「な、なにィ!」 右翼の方からゴールドの驚きの声が聞こえてきた。 「4匹同時に!!」 「最終形態に…!!」 「なっただと!?」 ベイリーフは マグマラシは アリゲイツは そしてモココは 「信じられない! この前ベイリーフに進化したばかりなのに! どうして!?」 クリスは信じられない、というように目を見開いて呆気にとられていた。 そういえば、成長度の似通った数匹がそろうことで、互いに負けまいという気持ちがはたらき、体にまで影響するという話を聞いた事があるな、とシルバーは驚きながらに思っていた。 理由はどうであれ、リナは自分の為に進化してくれた事は分かったから、デンリュウを抱き締めた。 「理屈なんてどーでもいいぜ!! 押し負けてねぇ! 今ならこのデカブツに勝てるぜ!!」 四匹は、三段進化を経た事により、大きさもパワーも倍に跳ね上がっているはずだ。 ゴールドが言った通り、勝てるかもしれない。いや 「シルバー、教えてくれ!! いつかてめえが言ってた『当てどころ』、生命エネルギーの集中するっていう一点を!」 いつか、というのはリングマ親子の一件の時だ。 あの時はリングマが腹部の円、ヒメグマは額の月だった。 ルギアが伝説のポケモンだろうと、海の神様だろうと、きっと変わらないだろう。 「このデカブツにもあるんだろ!? そいつが! オレがそこめがけてボールをぶち当ててやるぜ!! どこなんだ!?」 「額だ!! 放ったボールが最大の効果を発揮する『当てどころ』!! 額をねらえ!!」 「その話、わたしも乗ったわ!!」 リナが声をあげた。 クリスタルは不思議そうな顔をしたが、ゴールドとシルバーはリナの言葉の意味に気が付き、頷く。 「さて、ポケモン達の力を引き出すのと、ルギアの動きを止めるの、どちらが良い?」 そう言うと、シルバーは眉根を寄せて考える素振りを見せたが、ゴールドは一言でサラリと言った。 「どっちも、だ!!」 ニィ、と笑う彼に驚きながらも、ある程度予想済みだった言葉に、ニィと笑い返した。 「簡単に言ってくれるわね」 だが出来ない訳でも無い。 今までならそんな事するなんて、地球が逆に回る事くらいに難しい事だったが、今は違う。 マリルを大事な兄弟≠セと気付いて、更にデンリュウの素直な気持ちを見せつけられたら、リナの気持ちは180度変わった。 この能力≠、ポケモン達や守りたい人の為の能力(チカラ)≠ノする バトンのように腰から出したフルートを回せば、口元に持っていった。 吹く度に、伸びやかになる音。 聞いただけで目の前がキラキラと輝いて見えた。 まるで 初めて聴いたクリスは物凄く感動していた。 音≠ゥら沢山の感情を受け取る事が出来た。だからだろうか、このリナという人物が一気に格好良く思えたのは。 「うおっしゃあ」 ゴールドはほんのしばらく聞き入っていたが、ボールを素早く構えた。 右翼の下から、リナの能力によってゴールドの方を向いたままで止まっているルギアに、モンスターボールを投げた。 「いっけえ!!」 シャッ、という風を切る音がする程に思いきり投げると、ギュウウウと飛んでいく。 だが、速い球というのは、素早さはあっても正確性には欠けてしまう。 ゴールドのモンスターボールも例外では無く、ルギアの鼻辺りに当たってしまった。 「しまった!! いつもみたいにキューで打ってねぇからはずしちまった!!」 そんなゴールドの前を、誰かが滑り込んでくる。 誰か、というのはクリスタルで、ゴールドがはずしたボールが返ってきた所を狙うつもりらしい。 「まかせて!!」 そのままクリスは地を滑りながら、ボールまでの距離を縮めた。 そして足元にボールがくれば、それを 「たあ!!」 先程のゴールドのボールが非にならない位の素早さで、ボールは飛んでいく。 一直線にルギアの額まで行き、直撃する。 ボム、という音が閃光と共にした。 辺りはフルートの音も止まり、静かになっていた。 ただ先程までルギアの口の中に挟まっていたゴールドのキューが、ヒュンヒュンヒュンと空を回っている音だけが鳴り響く。 そのキューが地へと刺さる。 それを見たゴールドが、静寂を破った。 「…やった!」 視線の先には地に刺さったキューと、その隣にあるモンスターボール。 「オイ、やるじゃねーか学級委員! よくぞオレの作ったチャンスを生かしてモノにしたな!」 「……」 背中を叩くゴールドに、クリスタルが引いていた。 なにしろ今のクリスにとってのゴールドの印象は「不良」、「変態」、「お調子者」だったのだから。 ゴールドに対する皆の最初の反応なんてそんなものだ、気にすんな! とかリナが思っている事は誰も気付かない。 その時、ボールを拾ったシルバーが目を見開いた。 「オイ、どーしたよ、あ〜〜ん?」 「……」 聞くだけでいちいち不良みたいな声(まぁ、実際不良だが)を出すのは止めて欲しい。 「見てみろ!」 三人はボールを差し出される。 シルバーの黒い手袋に乗っているのは、普通のモンスターボール。 まじまじと見てみると、三人は異変に気付いて、ハッとする。 「…んな!!」 「えええ!!」 「……な!!」 三人は知った。さっきの歓喜が 「中身がねえ!? 空だとォ!!」 独り善がりに別れを告げ (もう独りだなんて) (有り得ないんだ、) 20140124 ←|→ [ back ] |