「まわれ、右!!」 ゴールドの言葉に、テッポウオが一度口からの水を止めて、ルギアの方を一斉に向いた。 「全砲一斉発射!!」 その瞬間、テッポウオは口から勢い良く水を噴射する。 一匹の力は弱くても、大量の力が集えば、相当な力になる。 大量のテッポウオの攻撃は、ルギアに真っ直ぐ放たれた。 「すごい!!」 このまま行けば海に引きずりこめるかもしれない、とクリスは身を乗り出してゴールドの様子を見ていた。 シルバーもリナもマグマラシも、みんなみんな驚く。 まさかあのゴールドが そんな時に、ルギアはゴールドを鋭く睨み、仰け反った格好から、頭を振ってマンタインをゴールドごと突き落とした。 仰け反った格好から頭を振った訳なので、凄い勢いで吹っ飛んで行く。 「ああ!!」 ゴールドは沖の方へと墜落していく。 「うわあああ!!」 ザシャア、という凄い音をたてながら手へと叩き付けられてしまう。 スピードも高さも結構な物だ。 決して平気では済まされないだろう。彼は大丈夫だろうか。 「島に落ちた! 失敗だわ! ルギアを空気のない海中にひきずりこんで主(メイン)攻撃『空気弾』を封じる作戦が!!」 「いや…ちがう! 見ろ!!」 「あのルギアの口のヤツって!」 今までゴールドを見ていたから気付かなかったが、ルギアの開かれた口には、キューが挟まっていた。 「ヤツは別の方法で『空気弾封じ』を実行した!!」 ルギアは閉めたくても閉められ無いようで、もどかしそうな顔をしていた。 確かに、海に引きずり込むよりは、こっちの方が手っ取り早いかも知れない。 「口の開け閉めそのものができなくては、あの攻撃ははなちようがない!」 空気を思いきり吸い込む事も、空気を思いきり吐き出す事も出来ない今が勝機(チャンス)だ。 「勝機があるとすれば今しかない! アリゲイツ!」 「クレールとマリルも!」 シルバーがアリゲイツを出して船を沖に向かうように押させる。 それがわかったリナは、ランターンとマリルにもアリゲイツと同じ事をさせた。 沖に向かう間にも、ルギアが鋭い瞳でこちらを睨んでいた。 そしてこちらに向かってくるが、構わず三人はゴールドの方へ向かった。 「オイ!!」 「ゴールド!!」 「ううっっ」 近寄ると、ゴールドは体を強く打ったのか、マンタインをボールに入れながら呻いた。 「おい、来たか凡人ども! どーでえ!? オレの天才的作戦はよォ…。 水流あびせてひるんだスキをねらってたんだぜ!! オレ、天才だからな……!」 リナを見ながらも、辛そうに一筋の汗を流すゴールドにマグマラシが心配そうに駆け寄った。 内心、少し、いやかなり心配しながらリナはゴールドをじとっと睨んだ。 「真似、しないでよね」 「へへ、今まで言われてきたからな。たまには言い返さねぇと……」 辛そうにしながらもゴールドはリナに笑みを見せる。 それから、心配そうに駆け寄ってきたマグマラシにマンタインのボールを見せた。 ボールの中のマンタインは呑気なのか、笑顔だった。 「よう、バクたろう…。こいつは海の中で知り合った新しい…、よろしくたのむぜ…く…」 「大丈夫!?」 「ゴールド!!」 ダメージがじわじわと駆け巡り、ゴールドはガクッと地に顔をつけた。 慌ててリナがゴールドの頭を抱えるように支える。 「ハア…ハア…、叩き落とされんのは予定外だったがな…」 「アンタ……本当に馬鹿よね、そんなに無茶して……」 「お……なんだ、心配してくれんのか?」 「ち、違、ア、アンタなんて誰が心配すんのよッ」 「……」 ゴールドの言葉に、つい顔を赤くしてツンッとした態度を取ってしまう。 そんなリナを、ゴールドが黙って見つめてくるので、たじろぐ。 「な、なによ」 と、その時 ふにっ。 音は鳴らなかったが、軟らかい感じを漫画のように擬音化したらこうだろう。 リナは一瞬、何が起こったのか分からなかった。 「あー……ちょっと回復したわ」 今、リナの胸に堅い何かが当たる感覚がしている。 なぜだろう。 多分、それはゴールドの顔がそこにあるからだろうな。 ……。 「あ、なんかスゲェ心臓鳴っ 「なにすんのよ、馬鹿ぁぁぁあ!!」 「ぶほぁ!?」 ゴールドの腹部に拳が埋まる。 先程地面に叩き付けられた時よりも凄い衝撃が走る。 それを見ていたシルバーとクリスタルは驚いていたが、リナを止めなかった。 なぜなら、自業自得だから。 マリルとランターンに至っては、ダブルハイドロポンプ≠ナトドメをさした。 たとえ「勝負はついていたはずだぜ。なぜトドメをさした」と言われようと、「お前の行動は万死に値するからだ」と返すだろう。 安らかに眠れよ、アーメン。 「なんて事してたら……」 「来た!!」 ルギアがこちらへと迫ってきた。 そして、エアロブラスト≠使えなくなったからか、踏みつけ≠トきた。 216sのルギアが地を踏みつけ≠黷ホ、たちまち砂煙が上がり、地を揺らした。 その反動で、四人はバラバラに散る。 ゴールドは右翼、シルバーは左翼、クリスタルは尾、リナは首へと。 その部分を、各々に叩きつける。 悲惨な音がして、四人は踏み潰された しかし、それは違っていた。 四人は各々のポケモンに庇われるような形で、倒れていた。 「ヴェルテ……」 他は研究所のポケモンなのに、モココは違う。 だが、それがどうした、という目付きでモココは必死にリナを守っていた。 守りたい時に、守る。 それは研究所のポケモンだろうと、なかろうと、変わらない。 そんな意思を、示しているように感じて、リナの目頭が熱くなる。 「そうね……ヴェルテ」 リナが呟けば、モココはふっと笑って、より一層力を入れた。 すると、モココが、いや、モココだけでは無い。 四人のポケモン達がめきめきと体の姿形を変えていく。 ←|→ [ back ] |