『海に引きずりこむ!』



同時に言葉を発し、重なった二人の言葉に、ゴールドとクリスタルは衝撃を受けた。

「海に引きずりこむだと!? あのデカブツをか!?」
「ヤツのメインの攻撃は空気弾。大気が供給されない海中では放てない」
「でも、どうするんだ?」
「少しは考えろ。相手の飛行能力を奪うんだから、至近距離から翼や頭部へ攻撃するしかない」

確かにこちらの攻撃力は、ルギアに対抗するには弱めだ。

だが、近くから放つなら、可能性はある。

至近距離といえば、先程シルバーとリナは迷わずに空へ、しかもルギアの周囲へと向かっていた。

最初から二人は知っていたのだ。

「空を飛べないおまえは戦力外だ! アリゲイツたちが離れたくないというのなら構わない、おまえたちはここにいろ!」

ゴールドが何か言いたげな顔をしている中、ゴールドに続いて、クリスとリナも空へ向かおうとする。

「ヤミカラス!!」
「わ、わたしも…。ネイぴょん!」
「エネル」

ヤミカラスとレディアンは空から、ネイティはクリスのボールから出てくる。

少しだけクリスがつけているニックネームに引っ掛かりを感じながら、レディアンが背中にくっつく。

だが、その時、ルギアが四人の行動を見透かしたように、こちらにエアロブラスト≠放ってきた。

それがヤミカラス達に当たってしまう。

「うわ!!」

それと同時に、ゴールドが船の端にいたために、船から海に放り出される。

「な、ゴールド!!」
「がばっ!」
「ちっ!!」

海面から出てくるゴールドに、シルバーはすぐにロープをカウボーイのように回して、放り投げた。

「これにつかまれ!!」

それを見事に掴んだゴールド。

シルバーとクリスタル、リナとアリゲイツまでロープを引っ張る。

「とっととこっちまで泳いで来い!!」

しかし、ゴールドの姿はなんだか段々遠退いている気がする。

無理も無い。こんなに荒い波の中だ、戻ってくるのは困難を極めるだろう。

だが、こちらはこちらで力を使う物で、ロープを引っ張っている面々は額に汗を流していた。

ほとんど四つ足で過ごすマグマラシとベイリーフが何も出来ないのは分かるが、モココは二足歩行なのだから手伝え。

ポカリ、と殴ればモココは嫌〜な顔をしながらもロープを引っ張った。

よし、これで楽になる  と思われた。

ところが、その瞬間に一気に重量が無くなり、今まで力いっぱい引っ張っていた分の力がこちらに向く。

見てみると、ロープだけが帰ってきていた。

「!?」
「まさか!!」
「ロープを離したの、あの馬鹿!?」

ヒヤリ、とした冷たい感覚に襲われた時、ゴゴゴゴという轟音が轟(トドロ)いた。

「なんだ!?」

その轟音は海の中から聞こえてくる気がする。

リナが海の中を覗き込もうとすると、海の中からテッポウオの沢山付いたマンタインが飛び出してきた。

しかも、人をハングランダーのように乗せて。

うおおお!

その人というのは勿論、ゴールドだった。

ハングランダーのようになっているのは、マンタインに付いているテッポウオの口から噴射された水の勢いで、空に浮いているのだ。

「なにィ!?」

シルバーが驚いたような声を出したが、リナも目を丸くしていた。

「マンタイン!! タイプ!『みず』、『ひこう』!! 海と空の両用ポケモン!!」

クリスタルが図鑑を読み上げた時、横からは「はっ」という息を吐く音が聞こえてきた。

その音には、色々な意味が感じられた。

呆れ。

驚き。

安堵。

「……あんな発想、わたしでも無かったわよ」

思わず、笑ってしまう。

彼はつくづく自分の考えや世界を、いとも簡単に壊してみせる。

「つりびとのおっさん!! 大量のテッポウオ、オレには最高の助けになったぜ!!」

その当人は近くにはもういなかった。だが、もしいたのなら、きっと酷く驚く事だろう。

「シルバー! リナ! それからマジメな学級委員ギャル!! 見てな!!
 至近距離に飛び込んでヤツの空気弾攻撃を封じるその役目、このオレが引き受けた!!」

ゴールドは、マンタインと大量のテッポウオを引き連れて、海の神様のルギアへと突っ込んでいく。

いくぜえええ!!


いつだって
(わたしの堅い考えを)
(軟らかくしてくれた)


20140122

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