ピピピピピピ、と鳴り響く三人の図鑑が響く中、ベイリーフがマグマラシとアリゲイツにすりすりと擦り寄った。目には真珠のような涙が。 恐らくこの三匹は、研究所のポケモンなのだろう。 きっと今リナは新ポケモン図鑑所有者の集合、並びに研究所のポケモンの再会に立ち会っているのだろう。 しかし、なんとも腹立たしい気持ちになる。 多分、自分はそれに関係は無いから だが新ポケモン図鑑も、研究所のポケモンの事も関係無くても、もうこのジョウトに起こった事は無関係では無い。 だから、リナの一番嫌いな、『自分だけが蚊帳の外』状態でも、黙って見ていた。 どうせこんな修羅場じゃ、麗しい感動場面も台無しなのだから。 「って…、オイオイオイ!!」 ルギアの口からは三発、光線が吐き出された。 「わあ!!」 この小さな小型船の一部が、側で光線が落ちて波がたったせいで、跳ねあがる。 しかも、ただでさえ小さいこの船の一部だから、ゴールド、シルバー、リナは固まって同じ場所にいってしまった。 「じゃまだ!!」 「なにを!!」 「……アンタら、離れないと」 リナはあまりの密着に、羞恥以上の何かが沸き上がった。為に、凄く、怖い。 二人は船が着水すると、黙って離れた。 あれは怒気というより (こ、こわい。この2人…。主に黒いリボンの子が……) 三人の図鑑所有者である彼女 「………。行くぞ、アリゲイツ」 「おい、待てよ、シルバー!!」 シルバーが立ち上がり、また一人で行動しようとした時、ゴールドが止める。 「ここでかたまってたら攻撃対象になりやすいうえ、反撃しにくいことくらいオレにだってわかるぜ」 へぇ、意外。わかってたの。 なんて事をリナは思うが、本当にそんな事を言ったらまた喧嘩が勃発する事だろう。 「だが、おめーのアリゲイツを見てみな!」 くいっ、と親指で差し示したのは、上空のルギアを睨み付ける三匹のポケモン。 「こいつらは本能的に共闘のかまえをとってるぜ!」 「だからなんだ!?」 「今回ばかりはオレたちトレーナーの都合よりも優先してやりてぇんだ」 まだ立ち上がって背を向けるシルバーに、ゴールドは鼻の下を人差し指でぐいっと拭った。 「こいつらの心持ちをな!」 目を逸らそうとしないポケモンと、そのゴールドの言葉に折れたのは、シルバーだけでは無かった。 リナはボールを三匹の後ろに放った。 モココは、ルギアの光線に向かって攻撃をする三匹と同じ方向に、電気を放つ。 しかしその四匹が放った攻撃は、ルギアの光線の軌道を変えただけで、ルギアに当たったり、光線を跳ね飛ばしたりは出来なかった。 「ちぃ! 4匹がかりでも軌道を変えるのが精一杯かよ!」 「そんなことためす前からわかってる! 感情に流されるな!」 「んだとォ!?」 「やめて!!」 「アンタ達ねぇ……状況を考えなさいよ、状況を」 ゴールドとシルバーがいつものように喧嘩を始め、クリスがそれを止め、リナはやれやれと首を振った。 「ケンカはよくないわ! あなたたち、本当にオーキド博士に選ばれたトレーナーなの!?」 二人はオーキドの博士に選ばれたトレーナー、とは言い難いのだが……とか思っていると、ゴールドのこめかみに青筋がたつ。 そして顔を歪ませ、「あ〜ん?」とまさしく不良な声を出す。 「いきなり説教か? ギャルかと思えば、さてはオレの苦手な『超〜マジメ系学級委員タイプ』だな? おい!?」 「…マ、マジメ系って…。マジメはいいことでしょ!?」 クリスの根っからの真面目な性格が滲み出た一言を聞きながら、だから、そういう場合じゃないだろ、と溜め息を吐いた。 リナはゴールドなんて無視しようと 「ねぇ、シルバー。アンタなら、最初からあのルギアの攻撃の正体、わかってたでしょ」 「……ああ。あれは、空気だ」 そう。あの光線やエネルギー弾に見える攻撃は、ただの空気だったのだ。 さっきからルギアは攻撃をする前に、周りの空気を吸い込んでいた。 ルギアの呼吸、その息吹き一つに、足場を崩したり船を壊したりと、あれだけの破壊力があるのだ。 いわば、ひと息(BRAST)≠フ空気弾(AERO)=B エアロブラスト=Bあれがルギアの攻撃の正体だ。 「という事は、どうするかも、きっとわたしと同じ事を考えてる訳ね」 「オイ! なんの事だよ!」 「うっさいわねぇ……アンタもうちょっと静かに出来ないの?」 「なんだとォ!?」 「ちょ、ちょっと!!」 ゴールドはシルバーと喧嘩し、クリスタルと喧嘩し、そしてリナと喧嘩し、よく飽きない物だ。 「それで、その方法って?」 なんとかクリスタルが軌道修正する。 その言葉に、シルバーとリナは顔を見合わせた。 ←|→ [ back ] |