「シルバー!」 「……お前か」 「アンタねぇ、わたしの名前はお前じゃないわよ。わたしは人の事をアンタとか言うけど、わたしの事をアンタとかお前とか言われんのは嫌いなの」 名前を知らなかった時は仕方なかったが、今はバッチリ知っているはずだ。 なのに「お前」呼ばわりとは腹立たしかった。 リナでさえ名前で呼んでいるというのに。 「……リナ」 「ええ、それで良いわ」 上から目線……だが、どことなく自分の大事な人に似ていた。 「それで、ルギアがこんなに暴れてる原因、分かった?」 「いや。完全に我を失っている原因がある事自体はわかるが……」 「そうよね……」 「お前、リナの能力≠ヘ無理だろうな」 「波や自分の鳴き声で聞こえないわよ」 だが、逆に言えば、雑音をなんとかすれば使えるかも知れない。 ただそれをどう狙う? シルバーが一粒流れてきた汗を拭った。 と、その時、破壊された小型船の一部を見つける。しかも人が乗っていた。 それをシルバーはしばらく見つめた。 リナはその様子を眺めてはニィ、と笑う。 「シルバーの事だから……助けるんでしょ、あの人」 シルバーは何も答えずに、ヤミカラスから手を話し、海にボールを放った。 放ったボールからはアリゲイツが出てくる。 「アリゲイツ、行くぞ!」 やれやれ、素直じゃないと言うか口下手と言うか。 リナも降下しながらボールを放った。 少々、荒い波だが、まぁ、こちらには水ポケモンが二匹もいる。問題は無いし、抜かりも無い。 「マリル。クレールが進みやすいように道を切り開いて」 あいあいさー! とでも言うかのように、したっと手を挙げると、見た目の小ささに似合わず大きな水の力を引き起こした。 すると、一直線にレールのような道が出来た。 これで荒海でも安心して進める。 リナはランターンに乗って、先程上空から見た船の片割れへと向かった。 そこにはツインテール(というべきか不明な重力に思いっきり逆らった髪だが)の少女と、その隣にベイリーフがいた。 その女の子に向かって手を伸ばすと、誰かの手と重なった。 ついでに脇にも女の子に伸ばされた手。 重なった手はシルバーの物で、伸ばしたが届かなかったのはゴールドの物だった。 ゴールドはゴーグルをかけながら、手を取ったシルバーの方を見た。 ゴールドの事だから、ギャルだ、と意気込んで来たのだろう。 「て、てめえ!! スズの塔の時に続いて、またいいカッコか!? ギャルを助けるのはオレの役目だぜ! 手をひっこめやがれ!! ついでにリナから手を離せ!!」 「アンタ……わたしを挟んで怒鳴らないでくれる?」 「うるせぇ!!」 ゴールドは構わずリナを退いて、その隣のシルバーに掴みかかった。 こんなに騒がしければ、当然、『ギャル』は起きてしまう訳で。 『ギャル』がゆっくりと、透明な水色の瞳を開いた。 すると、ゴーグルをかけた少年がギラギラとした銀色の瞳の少年に掴みかかっていて、その真ん中でゴーグルをかけた少年の頭を手で押している様子が目に飛び込んだ。 「きゃああ!! 不良が3人!!」 『ギャル』の起きての第一声はそれだった。 しかし無理も無い。こんな目付きの悪い三人が目の前にいたら。 ……ん? 三人? 「ふ、不良!? こいつはともかく、オレは…」 「なんでわたしが不良なのよ!! ……?」 「?」 「え!?」 四人が顔を合わせた時、ピピピピピピという機械音が鳴り響く。 それは、ゴールド、シルバー、クリスタルの図鑑から鳴る『共鳴音』だった。 新ポケモン図鑑所有者は、こんな形で揃ってしまった。 其処に集うは西の英雄 (第一印象は) (不良でした) 20140121 ←|→ [ back ] |