思わず感嘆の声が漏れた。

それにしても、色々さっきの赤いお兄さんと被る所がある。

それでも、赤いお兄さんとリュウとでは随分その時々の感動や気持ちが違う気がする。

「んーと……あれか?」
「うん! そう! あれが私のお家だよ!」
「そうか」

ほんの少しだけ寂しげな表情になる。

イエローはその表情を見て、自分も悲しくなった。その反面、そんな秘密に包まれた彼に、不思議と引かれていた。

そんなのは、彼女自身幼いため、それがどういうことなのかはわかっていなかった。

ただ、彼には何か黒いものが渦巻いていて、自分がそれを無くしたいと心で誓っていた。

「ほい、とーちゃく」
「あの……リュウお兄ちゃんありがとう」
「おー」

少し、彼女のお日様のような眩しい笑顔が誰かさんに似ていて、リュウは照れたように目を逸らした。

そのままカイリューの背からイエローを下ろすと、またカイリューは羽ばたいた。

バサッバサッという力強い音と共に、強い風が吹き荒れた。

「あ、あのっ!」

イエローは羽ばたく音や吹き荒れる風の音に負けないように、お腹の底から声を出した。

それに気付いて、リュウはカイリューに軽く手を挙げて制止の合図を送ると、先程まで耳が忙しかったせいか、それが止んだら静寂が耳を刺す。

「……ん?」

不思議に思ってイエローの方を向くと、イエローは途端に顔を赤くしてうつむいてしまった。

「……?」

首をかしげるリュウ。イエローが何をしたいのかいまいちわからない。

じっと見つめるが、彼女は顔を上げて口を開いたり、かと思えばうつむいて強く目を瞑ったりしている。

しばらく言うのを待ってみるが、言う気配が無い。

リュウはカイリューから降りてイエローから続きを聞こうとした、その時  



  お帰り≠チて言うから!!」



「……え」
「だから、あの、またこのトキワシティに来て、くれますか?」

しばらく呆けていたリュウだったが、我に帰るとイエローから顔を背けた。

その顔はまるで天使のようで、この世の生き物全てが劣るんではないかという眩しさだった。

「じゃあ……また≠ネ、イエロー・デ・トキワグローブ」


◆ ◆ ◆



思い出した記憶は美化されていたり、劣化されていたりするが、懐かしく、温かい記憶に代わりは無かった。

「……ちょっとー、思い出に浸るのは良いけど、説明してもらいたいんだけど」
「ん、えーと、それは  

可愛らしく上目使いで見てくるブルーに、色んな意味で言いにくそうに目を逸らすと、リュウがよく知る人物がいた。

「お! お前ら久し振り!」
「そうね」「そうだな」「だな」

ロケット団三幹部近づいていくリュウ。

三幹部と違って、リュウの場合はロケット団を復活させる気は無いようだが、やはり元同僚だけあり仲良さげに会話をしている。

「やっぱりテメェもくたばっちゃいなかったか」
「当たり前だろ? お前達こそまだロケット団にこだわってるとは、執念深いね〜」
「貴方とは違って、私達はサカキ様をお慕いしているのよ」
「お前らのサカキ様教(狂)≠熨兜マわらずだな」

何だか普通に話が弾んでいるように見えた。

リュウは元ロケット団三幹部補佐なのだから、おかしい事は何も無いのだが、見た目は真面目なリュウが怪しさ全開な三人と同じ画面にいると違和感がある。

もっとも、ブルーとマサキにとってはリュウも三人と同レベルの怪しさを感じるが。

イエローに至っては、リュウがロケット団な事すら知らないので、物凄く不思議そうにしている。

「んで、ナツメのこの『もしもの時のスプーン』が曲がってんだけど、どうすりゃいいの? やっぱ四天王を倒すのか?」
「そういうことだ。さて…と、オレ達の調べによればこの鍾乳洞は島内で迷路のように奥へと続いていくらしい。
 ここで5組にわかれて、別べつに本拠地をめざそう」

別に自分は行くとは言ってないのだが。

肩を落とすリュウに気づいているのかいないのか、グリーン・キョウチームは五つの穴の内の一つに入っていった。

「グリーンさん…。よし、ボクも!」
「頑張ってください、イエローさん!」
「ハ、ハイ!」
「無理すんなよ」
「!   ハイ!!」

嬉しそうに笑うと、一転して真剣な顔でカツラの後について、中に入っていった。

続けてブルー・ナツメチーム、マサキ・マチスチームが中へと入ってく。

リュウは、他のチームを見つめていたルナの肩を叩いた。

「じゃ、オレらも行くか」
「あ、はい!」


  打倒! 四天王!!


日溜まりの中の記憶
(こうして私達はお互いの)
(目的の為に手を組んだ)


20130222

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