「おかしいな…、まっすぐ進んでたはず…」

辺りを見渡してみると、驚くべき事が起きていた。

『!!』
「同じところをぐるぐるまわっていたのか!? 迷った!」

可笑しな事に、キャタピーの糸が二人と四匹を囲むように交錯していた。

また辺りがざわめき始める。

「何か変だ! ピカ、ルナさん! 気をつけ…」

その時、後ろから気配がした。

イエローもルナも、物が飛んできた時の修業をしていた為、素早く反応した。

「ピカ!!でんきショック≠セ!!」

普通に指示をしたイエローの隣ではルナがピカチュウと目を合わせて、イエローと同時に技を放っていた。

だが、それだけに留まらず、木の実は切りが無いほど沢山飛んできた。

「木の実がつぎつぎと!! くそっ!!」

イエローとルナ、カモネギは木の実を次々となぎ払っていくがこれでは本当に切りが無い。

どうしようかと二人して考え始めた時、木だと思われるものは生き物のように動き始めた。

しかも一本だけではない。一本が動き始めると、隣の木だと思われるものも動き始めた。その繰り返しであった。

それから、雑草も動き始める。

「うえ〜!?」
「こっ、今度はなんだぁ!?」

二人は驚きを隠せなかった。

「どうしますか!?」
「とにかく! この森をぬける!!」

素早くボールを構えた二人は、急いで中からポケモンを出した。

「ドドすけ!」「ロコ!」
「たのむ!! 森の外へ…!!」

足が速い二匹は、スゴいスピードで木の実をかわしながら真っ直ぐに駆けていく。

とにかく真っ直ぐ駆けていくと、草木が無い所が見えてきた。

「よし! ぬけた!!」

そして崖の上へと向かう。

崖の上といえばサスペンス劇場だよな、なんてうっすら考えながらルナはキュウコンに初乗りしている。

「見晴らしのよい所へ…」

着くと同時に、二人は目を疑った。

「こ、これは……!?」
「!! 森そのものが…、移動している!!」

いや、そうではない。

ルナがそう考えると、イエローも違うと気付いたらしい。

図鑑を開きながら自問自答していた。

「イヤ、違う!! 森だと思っていたのは…」

今まで木だと思っていたのは、ヤシの実ポケモン。

今まで草だと思っていたのは、雑草ポケモン。

「ナッシーに…、ナゾノクサ!!」

移動仕切ると周りは静かになったように感じた。


◆ ◆ ◆



まったく!! おまえ達はこんな時じゃなきゃ連絡をよこさんのか!?』

オーキド博士があまりの大音量で怒鳴る為、二人はびくと身体を跳ねあがらせた。

その後の聞き覚えがある声により一層驚く事になる。

『そうだよ!! こっちにも連絡よこさないし! 二年前の旅と状況が違うのはわかるけどさ!!』
「え、リナ!?」

ノートパソコンの画面には、自分と逆に結った髪と真っ黒なリボンを揺らす妹の姿が。

『これ。リナが出たらややこしくなるじゃろうが』
『ハイハイ。お姉ちゃん後で絶対連絡してね! 絶対よ!!』

そう言ってリナはノートパソコンからフレームアウトした。なぜに研究所にいるのだろうか……。

知らない女の子に驚いていたイエローがオズオズと口を開いた。

「だって通信は盗聴される危険があるからって…」
『まあいいわい。ナッシーやナゾノクサの大移動にあったんじゃな』

こくりとルナが静かにうなずいた。

まだリナの謎が頭に引っ掛かっているが……。

『カモネギが迷っていた原因は、わかったじゃろ。問題は…』
「『大移動がなぜ起きたか!?』ですよね」
『そうじゃ。…繁殖の時期ではないし…、もしかすると…』
『もしかすると?』

二人が声を合わせて聞き返すと、博士は真面目な顔付きでこちらを見た。

「野生の生物は大きな危機の前ぶれを、敏感にさとるものじゃ。天変地異や…、もしくは、それに匹敵する巨大な力を!

ルナは生唾を飲み込むのが精一杯だった。



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