日が昇りきった、快晴のクチバ湾の空にポンポンと撃ち上がる煙り。

クチバ湾はまるで運動会のように賑わっていた。

『今年もやってまいりました! クチバ湾サマービーチなみのりコンテスト!! さあ、今年もカントー中のなみのり自慢が集まりました』

イエローはコース上でヤドンに乗っていた。

しばらくキョロキョロしたかと思うと、観戦席にいるルナに大きく手を振ってくる。

なんて可愛らしいんだ!

ルナは今のいままで眉間に皺を寄せていたが、イエローに笑顔で手を振った。

『優勝者に贈られるのは!』

その司会者の言葉に、イエローとルナが運ばれてくる『賞品』の方を見た。

『長距離航海に最適!! なみのり好きたちが泣いて欲しがるこのポケモンでーす!!』

なんてキャッチフレーズだ、とルナは苦笑した。

  泣いて欲しがるんだ……。

対して周りの観客達からは思わず歓声が漏れた。

ちっとも怪しいとは思わないんだろうか。

『では、オープニングセレモニーへ移りましょう!!』

もう少しで始まるレースに意気込むイエロー。

そんな懸命な姿が愛らしくて顔をほころばせながらも、周りへの注意は怠らないルナ。

『オープニングセレモニーではこのハクリューのなみのりデモンストレーションが行われます!』

ハクリューに乗る場合は頭に乗らなければならないように感じるのは気のせいだろうか。

その時、ハクリューの様子に変化が訪れる。

それは進化云々の変化では無い。

『おや!? どうしたんでしょうか…』

司会者にとっても予想外の展開なのか、不思議そうにしている。

突如ハクリューを中心にして渦潮が巻き起こった。

『う…。うわあああ!!』

マイクから通した悲鳴がうるさくないくらいに、渦潮の音は大きかった。

幸いにも観戦席にはそれほど被害はこなかった。

ルナはボールを急いで腰から取ると、様子を見ながら席から身を乗り出した。

もう一度ハクリューの様子を見たら、先程まで無かった人影が現れた。

「あ、あれは……まさか!!」

        シナリオ
最低最悪な筋書き
(最も考えたくない)
(事態が起こってる)


20130106


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