クチバの港。

サントアンヌ号から逃げた人と、プラスアルファで港周辺の人達は、無惨に沈みながら煙をあげるサントアンヌ号を見つめていた。

そんな中で、その無惨になってしまったサントアンヌ号の乗客であるおじさん  ポケモン大好きクラブの会長は、ての指をペキペキと鳴らしてロケット団に近付いた。

「ぬおお〜悪党らめ!」

ロケット団は縛られている。会長の明らかにこれから殴るぞ蹴るぞというオーラを出しているので、げっと顔をひきつらせた。

「イエローくんとルナくんじゃったね。わしも仕上げの一撃くらわしてもいいんじゃね!?」

その言葉に、イエローは「え?」と言っておたおたとし始めた。

ルナは、まぁしょうがないかみたいな微妙な顔をしている。

「ネコにこばーん!!ネコにこばーん!!」
『わああ〜っ』

こうしてロケット団三人組は、会長によってネコに小判≠フ餌食になったのだった。

会長は豊作の小判を大事そうに抱えながら高笑った。

「ふいーっ、悪者はすべてわしがやっつけたぞい」

あ、そうだ、とルナに振り返った。

「キミ、あのポケモンリーグの三位入賞者のルナくんじゃったんじゃね」
「あ、はい」

うなずくと、ガシッと会長が手を握ってくる。

いきなり過ぎる事に、あぅあぅと混乱して疑問符を沢山頭に浮かべた。

「あのバトル、すばらしかったぞ! もうあのオニスズメのオウムがえし=A痺れてしまった! あれまでポケモンは可愛がるだけのわしも、今ではポケモンバトルをするようになったんじゃ!」
「そ、そうですか。それは良かったです。ポケモンバトルも良いものですよ」

嬉しそうな会長を見て、ルナも嬉しそうにニコニコ笑っている。

イエローがそれをじっと見ていた時、会長がイエローの方を向いた。

「ところでレッドくんは元気かの?」
「そ…それが…」

それまで屈託の無い笑顔を見せていたイエローとルナが、うつむいてしまった。

会長が不思議そうに首をかしげる。

イエローとルナは顔を見合わせた。この人はレッドを知っている。

何か情報が聞けるかもと思い、二人は交互に今までの事を会長に話した。

「なにい!? レッドくんが行方不明じゃと!?」
「ええ。四天王という人たちからの挑戦を受けて出かけていったままこのピカだけが帰ってきました」

イエローの顔も、ルナの顔も、不安で一杯な顔でピカチュウを見た。

「ボクはこのピカをつれてレッドさんを探しに行く役目をオーキド博士から言いつかってきたのですが…、手がかりはまだ少ししか…」
「私も、友達であり大切な人であるレッドを探す為にイエローさんに同伴させて頂いています……」
「そうか…そうじゃったか」

会長が同情したような顔で二人の悲しげな顔を見つめた。

イエローとルナが一斉に、勢い良く顔をあげて会長に詰め寄る。

「なんでもいいんです、もっと手がかりが欲しい!! 会長さん、レッドさんの知り合いならなにか…心あたりありませんか!?」
「どんな些細な事でもいいんです!!」

切羽詰まったように、ルナとイエロー、二匹の電気鼠に哀願された会長は、静かにイエロー達から背を向けた。

「フム。わしがレッドくんに最初に出会ったのは2年と少し前じゃ…。あのときレッドくんは…、イヤ。その話をする前に…」

会長は実に勿体振る話し方をする。

その思惑通りに、純粋なイエローとルナは唾を飲んだ。

「このクチバの港にまつわる伝説を話しておこうかの」


笑顔が恐ろしい悪魔
(ロケット団と関わると)
(人が変わるのは相変わらず)


20121229

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