定期船サントアンヌ号 ロケット団に密輸船として使われていたところを正義のトレーナーによって救われ…、今、また人びとの夢を乗せた船として愛されている そんなサントアンヌ号の船の上に、麦わら帽子の少年が海を眺めていた。 ピカチュウ二匹が少年の麦わら帽子の上に飛び乗る。重くは無いのだろうか。 「アハハ! 落っこちるなよ!!」 無邪気に笑い、それから少しうつむいた。 「グリーンさんとルナさんとの特訓でちょっと自信もついたぞ。次の町・クチバシティで今度こそ会えるといいな。レッドさんに! な! ピカ!」 空を仰ぎ、レッドの姿を思い浮かべた。 なんだかまるでこの世にはいないかのようだった。 「ええ。きっと、いえ絶対に会えます」 そう言って、ルナがイエローに近づきながら腕につけたミサンガを見せた。 「ハイ!」 イエローもまた、笑って腕につけた色違いのミサンガを見せた。 ◆ ◆ ◆ 「ふあああ〜眠〜〜い」 「フフ。本当に眠そうですね」 「は、ハイ……」 大きな欠伸をするイエローにくすくすと笑うルナに、イエローは少し後悔したように顔を赤らめた。 もう少しお上品に欠伸をすれば良かった。 「ん?」 その時、三つの影が動力室から駆けていくのを二人は不思議そうに振り返った。 なんだろうとしばらく見つめるイエローと微かに目を細めるルナ。 するとどこかから薄黒い煙があがってくる。 「?」 「 ルナが最悪の事態を把握し、顔を青白くして叫んだ。 その瞬間 どうやら船がバランスを崩したかのように、上を向いてしまったらしい。 辺りは悲鳴や、船上員が客を落ち着かせる呼び掛け イエローとルナは手すりを掴んで、なんとか身体を持ちこたえさせていた。 (私の予想通りだったら、さっきの三人が……!) 「ピカ! 頼む!」 「チュカもお願い!」 二匹のピカチュウが船内へ駆けていく。 「……私達は動力室へ!!」 「ハイ!」 ◆ ◆ ◆ 動力室はあちこち壊れていて、ボロボロになっていた。 「動力室が…、何者かに壊されている…」 ルナが触れた所をイエローも見ると、まるでねじれて切れたような線があった。 「これ、何に見えますか? イエローさん」 「えっと、時限爆弾による破壊…プラス念の攻撃!?」 「おそらくそうでしょうね」 イエローの言葉に、真剣な顔付きのルナがうなずく。 「ウーン」 謎が多く、イエローは指を口元に当てて考え込んだ。 そんな時この動力室に、誰かが入ってきた事を感じてルナは振り返った。 暗がりでよく見えないが帽子を被り、サングラスをかけた白髭のおじさんみたいだった。 おじさんもこちらに気付いたようだ。 「ムム!?」 『?』 その反応に二人は首をかしげた。 「む。やはりわしのにらんだとおり、動力室が何者かに破壊されたんじゃね! よおーし!」 何がよおーしなのか理解出来ないルナは依然として首をかしげている。 いつのまにかおじさんのそばにはオニドリルとギャロップがいた。 しかもなんだか警戒しているような 「くらえ犯人!ネコにこばん=I」 「うわっとととと! なんだなんだ!?」 「な、何か勘違いしているんでは無いですか!? というかオニドリルとギャロップがネコに小判!?」 地味に痛い小判を身体中に受けて、イエローとルナは逃げるように動力室内を駆け巡る。 「ガ…ガーン! な、なんと! こ…こんな少年少女が犯人とは! じゃがわしは船に悪さをしたキミらをゆるすわけにはイカンのよ! 許せ少年少女!」 そう、泣きながら言ってネコに小判≠続ける。 おじさんは全く話を聞く気は無いようだ。 「いてて、いててっ! おーい! 誤解しないでくださいよーっ! …て、聞いてないなこの人」 「しょうがない人ですね、この人」 ルナが苦笑した時、また船が思いきり揺れた。 その拍子に、おじさんが手すりから落っこちそうになる。 「お」 『危ない!!』 慌てて手を伸ばした。その時、二つの影が素早くおじさんのもとにやってきた。 そしておじさんを二つの影が、手すりの上から支えた。 「ピカ!」「ピカァ!」 「ナイスピカ!」 「チュカもありがとう!」 船内を駆けていったレッドのピカチュウとルナのピカチュウが、おじさんを助けたのだ。 二人共濡れないような靴だから気付かなかったが、下が浸水している事に気がついた。 「ん!? ……浸水だ!?」 「イエローさん、ここに大きな穴が!」 「! 大変だ、穴もあいてたのか。オムすけ!」 「ゴンちゃん!」 『れいとうビーム=I』 ←|→ [ back ] ×
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