イエローがグリーンとルナのもとで、なかば押しかけ弟子(?)のような形でトレーナー修行を始め、約1週間が経過していた。 「だああああ!」 イエローの男らしい雄叫びが響いた。 岩を自身の前歯で砕くラッタ。 「次だドドすけ」 急いで次の指示へと移すイエロー。 ドードーは足で懸命に岩を蹴りあげた。 蹴りあげた岩は、ラッタの頭上に降ってくる。 その岩を受け止めたラッタは、今度は尻尾で砕いた。 「ふうーっ」 技の指示を終えたイエローは汗を拭った。 「やったぞ。ドドすけ、ラッちゃん」 なかなかまとまり始めた特訓に、無邪気に笑って意気込んだ。 ラッタも得意気だ。 少し息を吐いたら、イエローはまた特訓を始めた。 グリーンとルナはその様子をうかがっている。 「……。戦闘の技術…という点ではまだまだだが、それぞれのポケモンの力自体はかなり上がってきたようだな」 「もともとドードーとラッタのコンビネーションは良かったですからね」 自分の事のように優しく微笑むルナ。 「…あのやる気。よほど『進化』させるのが嫌らしいな。今の状態のままでも勝てるようにとの特訓か。まあ、理由はなんでもいい」 「そうですよ! イエローさんがやる気になってくれただけで良かったです」 「ルナの特訓ははかどっているのか?」 「はい! お陰様で、一匹一匹の力量が同じくらいになりました!」 ニコニコとよほど嬉しいのか、はち切れんばかりの笑顔を浮かべた。 今更だ、と言う顔をしてそっぽを向いてしまうグリーン。 「次は、オムすけっ! ゴロすけっ!」 すっかり最近では見なくなった二匹をボールから出した。 イエローはすぐさま二匹の技や何やらを調べる為に図鑑を開くが、その内に二匹が自由に離れて行ってしまった。 「ああ、アレ? オーイ! 2匹とも、オーイ!!」 慌てて二匹を呼び戻す。 そんなイエローを、グリーンは顔を全く動かさず、無表情で見守っていた。 ルナはおろおろとするイエローが可愛らしくて、少し微笑ましく思ってしまった。 なんとか暴れる二匹を連れ戻したイエローは、図鑑片手に難儀していた。 「ええっと…。そうか、技名を言わなきゃいけないんだっけ! オムすけとゴロすけの覚えている技は…」 図鑑を弄くってみるが、なかなか思い通りに操作する事が出来ずにいた。 「アレ!? このボタンじゃないか、技は…アレ!? これか!?」 なかなか技名が表示させるボタンにたどり着かない。 そんなこんなしていると、また二匹は自由に動き回り始めてしまった。 「!! あ…オ〜イ!!」 二匹に振り回せるイエローを、最初は微笑ましく思っていたルナも、だんだん心配になってハラハラしていた。 「…あの2匹はもらったやつ。…しばらく言うことをきかないのはしかたないが、もともとはジムリーダー所有のポケモンだ。ならせば戦力に…」 「………なる、かなぁ?」 イエローはゴローンに石をぶつけられ、オムナイトには水をかけられる。 動作が止まったグリーンは、その後盛大に溜め息を吐いた。 「…まずイエローはあのポケモン知識の足らなさをなんとかしないと」 「はい、はいっ! 私それ得意です!」 ルナは急に生き生きとした表情で挙手した。 「じゃあ、お前が……教えられるのか?」 「ム、失礼ですね。任せて下さい!」 そう言って、無駄にある胸を反らして見せたのだった。 ◆ ◆ ◆ 「カビゴンは図鑑No.143で、居眠りポケモンです。2.1mで460.0kgという凄く大柄なポケモンです。 一日に食べ物を400キロ食べないと気が済みません。食べ終わると眠ってしまうという超燃費の悪いポケモンなんですね。 タイプはノーマルで、覚える技はのしかかり▽硬くなる▽捨て身タックル▽破壊光線≠ナす」 ペラペラと蘊蓄を語るルナに、イエローは頭が痛いというように、クレヨン片手に頭を抱えている。 ルナの話は、速くも遅くも無く、聞きやすい。 しかし、いきなり膨大な量の知識を詰め込まれても困る。 「す、すみません。一気に話しすぎましたか……?」 「え、い、いや、あの」 つい言葉を濁してしまうイエローに、ふわりと笑顔を浮かべた。 「本音は?」 「……グリーンさんは『おまえは知識がなさすぎだ。レッドが集めた図鑑の内容をルナの話を聞きながら覚えろ』って言ってましたけど…、多すぎますぅ〜」 笑顔で威圧感を出すルナに、イエローは本音を溢した。 「そうですよね」と同情するように、眉を下げて言うルナ。 「で、でも大丈夫です! 次は…と。しんかポケモンイーブイ…と」 図鑑のイーブイを見て、驚いたように図鑑をじっと見つめた。 「捕獲済を示す画面! レッドさんも…こんな珍しいのを捕まえてたんですね!」 「はい。 いままで笑顔が耐えなかったルナの顔に、笑顔が消える。 「そのイーブイが、改造された子ですから」 ←|→ [ back ] ×
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