「って、グリーンさんの居場所なんかわかりませえええん!!!」 ルナは力の限りカイリューの背中で叫んだ。 カイリューは不思議そうに首だけルナの方を向ける。 「あっ、ご、ごめんね……」 そんなカイリューにルナは申しわけ無さそうに頭を掻く。 しかし、なんだかんだで家を飛び出してから一週間は経とうとしていた。 これでは真新しい、出来立てほやほやの情報をリュウにもらった意味が全く無い。 もしかしたらブルー辺りがもう知ったかもしれない。 いや、それはそれで良いが、自分も遅れをとるわけにはいかない。 とにかくグリーンにレッドの失踪を知らせなくては。 グリーンなら頼りになると思い、只今捜索している最中である。 グリーンは修行をしにフラフラ(でも無いだろうが)出歩いて行ってしまったと博士は言っていた。 「(このままじゃ、元も子もない)……よし」 ルナは決意すると、腰では無く、カバンからボールを出す。 ルナの腰には六つ。という事は、七匹目だろうか。 その七個目のボールに話しかける。 「……お願い。グリーンさんの居場所を教えて」 少し、目を逸らして尋ねると、七個目の中のポケモンは反応を示す。 「わかった。あっちだね、……ありがとう」 ミュウとは割り切れたが、このボールの中のポケモンとはまだ割り切れていなかった。 いつになれば自分はこのボールの中のポケモンと向き合えるのだろう。 自分のまだ変わる事が出来ていない弱さに、苦しさを感じながら、示してくれた方向にカイリューを向かわせる。 ◆ ◆ ◆ 丁度カイリューが向かっている方向の空に、ピジョットが一匹。 ピジョットは何か探し物をしているように、辺りをキョロキョロしている。 しばらく探していると、目的のものが見つかったのか、マッハ2の速度でその目的のものの下へ向かった。 ピジョットが探していたのは人物のようで、その人物に、自身の足で掴んでいる筒を渡した。 「ありがとうピジョット」 その人物は少年のようで、低めの声を発して筒を受け取った。 彼は自分を纏ったマントをひるがえし、筒を開けた。 その中には、ワープロで打ったらしい手紙が入っていた。 それを見つめている少年のマントが、風でなびいている。 その時、少女の声が辺りを木霊する。 「見つけましたーっ!!」 「 空中約300メートルから少女が少年に向かって降ってくる。 なんとか少女を受け止めるように下敷きになる。 「痛ててて……、何をするルナ!!」 「見つけましたよ、グリーンさん!」 「いいから降りろ!!」 「あぅ」 なかなか降りないルナを、グリーンが引き剥がす。 「グリーンさん、そのマント……あ! いや、突っ込んではいけませんね」 「オイ、それどういう意味だ」 グリーンが凄みをきかせて言うが、ルナはなおも「いや、見なかった事にしますから」と言っている。 後に、何か思い出したようにグリーンに向き直る。 「大変です! レッドが失踪しました!!」 「知っている。今おじいちゃんから手紙がきた」 ルナが焦ったように言うと、グリーンが手紙をピラリと見せた。 それを見て、ムンクの叫びのような顔をした後に、ガックリと項垂れた。その時のルナはヒロインだとは思えない位のネタ顔だった。 「グリーンさんKYです……、普通は察して知らないフリをするものです……」 「じゃあ、知らない」 「もう手遅れですよ!!」 「どうしろと言うんだ……」それはそれは深 途端に、ルナは唇をつきだして、目線をさ迷わせながら言い訳をし始めた。 「だって、だって、グリーンさん、こんなに何も無いような所にいるとは思わなくて……一週間も探していたんですよ」 ルナの言う通り、グリーンのいる場所は、周りが岩山しか無い寂しい場所だった。 それにしたって、カイリューを使いながら一週間も探していたなんて長いと思ってしまったグリーンだった。 「なんでオレを探していたんだ」 「……私じゃ、まだ力不足だと思ったんです」 真面目な顔になったルナは少し眉を下げながら言った。 「私は、まだ無力だから……。レッドが消えた事にどう対応して良いかわからず、ただ不安で堪らなくなるだけで何も出来ないから……」 ギュッと拳を握り締める。 爪が手のひらに食い込んでいる。痛みは感じなかった。 ただただ無力な自分が恥ずかしくて、情けなくて、消えてしまいたいと思った。 そんなルナの心情を察してか、グリーンはルナの頭の上に、オーキド博士譲りの温かな手を乗せた。 「何も出来ないなんて事は無い。よく考えて行動すれば、見えてくるものもある」 まるでルナを慰めるような言い方だった。 ルナはブラウンの目を真ん丸にして驚いている。 「……ありがとう、グリーン」 ←|→ [ back ] ×
|