このバリアの中の敵の位置がわかって、それでいてこのバリアの中に入れればいいのに。

そんな絵空事を思い描いたってどうしようもない、そうため息を吐く。

その時、視界にグリーンとゴルダックが見えた。

「グリーンさんは何をしてるんですか?」
「! ……ルナか」

グリーンは何も言わなかったが、目は「来るなと言ったのに」という呆れた感情が現れていた。

ルナはそんな視線に気付きながらも、気にしないようにする。

すると、グリーンはそのルナの態度に負けたのか、説明し始める。

「今、ゴルダックのねんりき≠ナバリアを作り出しているやつとトレーナーの位置を読み取らせ、図鑑でそのゴルダックの思考を映像化している。後は……」

中に入るだけ。

グリーンの話を理解したルナは感心したように相槌を打つ。

「中に入る方法を探ってみます!」
「……頼む」

ルナが振り返ると、レッドがピカチュウを抱きながらバリアを見つめていた。

「……レッド君は何をやっているんですか?」
「今、ピカのみがわり≠ナバリアの中に入らせてるんだよ。後は……」

敵の位置を知るだけ。

レッドの話を聞いたルナは、苦々しい顔で相槌を打った。

何だろう、このすれ違いは。

否、これはすれ違いでは無いのかもしれない。いわゆる、ただの意地の張り合いなのかもしれない。

それにしても思い描いた絵空事がまさか実現しそうだとは。

思わず口をポカンと開けてしまう。

さてどうしようかと思った時、上空から落ち着いた可愛くて、それでいて綺麗な声が降ってくる。

「バッカみたい!! 二人でならバリア破れそうじゃない!?」

見上げると、プリンに乗ったブルーが少し呆れた顔をして寝そべっていた。

「いまはつまんない意地はってても、しょーがないでしょ!?」

ルナもブルーの脇で大きくうなずくと、レッドとグリーンはバリアを見つめる。

お互いの額には汗が。

グリーンは舌打ちをした後、レッドに話しかける。

「オイ…レッド。敵の位置…教えてやってもいいぜ」
「中に入って敵と戦えるのはオレのピカだけだぞ!」

それでもまだ意地を張るのか……。

ルナは肩を落としてため息を吐く。

「面倒臭いわねー。あの二人」
「ブルーさん……。そうですね」
「敬語」
「へ?」

いつのまにかルナの側に立っていたブルーはルナの口に指を添える。

「敬語じゃなくて良いわよ。おんなじ女同士でしょ? 後、ブルー! 呼び捨てで良いわ」
「え、で、でも……」
「い、い、か、ら」

凄いブルーの威圧感にルナはたじたじになる。

「はい、じゃない、うん……!」
「良く出来ました!」

何だかんだで嬉しいルナはほくそ笑みながら言うと、ブルーも少し嬉しそうにルナの頭を撫でる。

その時、バリアが消えた。どうやら二人が成功したようだ。

「うまくいっちゃった。なにもしないで、バリアをぬけられたわ、ホホ」

語尾にハートを付けてちゃっかりとした様子のブルーに苦笑いするしかないルナだった。

「ブルーさ……、ブルー。それが目的だったんだね……」
「ホホホ。行くわよ、ルナ!」
「……はーい」

ルナはブルーに引っ張られて、シルフカンパニーに駆けていく。

何だかんだでブルーと仲良くなれた気がして、ルナは嬉しそうに笑う。

ブルーは一瞬訝しげな顔をするが、ルナを見て吊られたように笑った。


* * *



シルフカンパニー本社内部。

窓から見えるルナを眺めながら、黒づくめの少年は悲しそうに眉を下げる。

「出来れば、お前と戦いたくなんか無い……! けど」

少年は羽織っているパーカーをめくる。

内側には『R』の文字が。

「オレはロケット団なんだ……!!」


大好きなものの為に
(私は戦う!)


20121126

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