グリーンとブルーがバリアに難儀する中、21番水道ではルナとレッドが寄り添うようにポケモンの上に乗っていた。

レッドはギャラドスの上に、ルナはジュゴンの上に。

スピードはギャラドスが、いや、レッドがルナに合わせてくれているらしい。

「この海をぬければマサラか〜」
「私達、カントーを一回りしたんですね」

思い返すと、色々あったなぁと感慨深く思う。

この旅路で自分は変われたのだろうかとちょっぴり不安になるが、旅路で仲間が増えた事は間違いなく前の自分より進歩したように感じる。

「まずは博士のところへ行かなくっちゃな」
「あー……、そうですね」

心の中でリナに謝りながらマサラへと真っ直ぐ向かった。


* * *



マサラタウンはシーンと静まりかえっていた。

見渡した所、誰も居ない。ポケモンの気配さえも感じない。

まるでこの町が空になったかのようで  

「誰もいない…? 変だな昼間なのに」
「家の中にさえ居ない、ですね」

二人は訝しく感じながらも、オーキド研究所へと足を運んだ。

レッドはインターフォンを鳴らしても応答が無い為に、ドアを開ける。

その様子を見ると、出会った時の事を思い出してしまう。

「…博士もいないのか?」
「それは珍しいですね。おーい、博士ー!」

いないなんておかしいと、ルナは博士を呼んだ時、オーキドの姿が視界に入った。

良かった、いた。と安心した様に息を吐く。

レッドも安心した様に博士のもとへ近付いて行く。

「博士ー! よかったあ。なんか町中静かなんでおどろいたよ! とりあえず図鑑の進みは順調だぜ! たださあ、ヤマブキって町にだけ入れないんだよ」

それはルナにはファーストイヤー、初耳だった。

「どうすりゃいいのかなって…」

レッドが図鑑を開いた時、博士の瞳が獣のように妖しく光る。

嫌な感じがしたルナは気が付いたら叫んでいた。

「レッド君、危ない!」
「へ!」

その嫌な感じが当たったようで、博士はガバアと状態を広げると、レッドを殴りかかった。

「うわあっ! ちょっ…ちょっと博士!?」
「博士、しっかりして下さい!」

しかし博士の攻撃は止まない。

レッドはこのままじゃ、らちが明かないと思ったのかフシギソウを出した。

「くそっ、ご…ごめん博士! フ…フッシー!」

フシギソウのツルは、博士を巻き付けた。

博士は興奮した顔で、鼻から息を思いっきり吐いた。

「どうなってるんだ?」

ルナはよく博士を観察して、隙を狙っていた。

博士はパイプのような物を掴むと、ツルがひきちぎられる。

そしてパイプが変な形に曲がる。周りからは何か力のオーラのようなものが出ている。

『超能力!?』

二人が叫んだ瞬間、博士の目から光線が出、フシギソウを攻撃した。

「フッシー!?」
「これは……」
「エスパーポケモンの、サイケこうせん!?」

その時、今度は部屋全体を攻撃するサイケ光線≠ェ発せられる。

「ぐっ」「うっ」

研究所にはみるみるひびが入る。

「ま…さか…、博士じゃないのか…?」
「い……や、それは最初に……気付いてあげましょうよ……」

博士を見ると、妖しげなオーラを全体にまとい始めていた。

博士に誰かが乗り移ってるのかとも思ったが、どうやら違うらしい。

「正体をあらわせ! フッシー、やどりぎのタネ≠セ!」

フシギソウの背中の蕾から吐き出された種は博士もどきの腕に植えつけられた。

そしてそこからツルが伸び始め、腕は固定され、博士もどきの体力を吸いとっていく。

「とにかく! 体力を吸いとって、動きをとめるんだ!」

すると博士もどきは顔から徐々に変化していく。

『あ…』

その姿には二人共、覚えがあった。

二人は自然と声を合わせて、声を荒げた。

『ユンゲラー!』

その時、どこからともなく大人の女性の声が部屋中に響く。

「ハハハハハ、どうかしら? ユンゲラーの特別製さいみん術は?」
「だれだ!?」「だれ!?」

レッドとルナが暗がりの研究所を見渡すと、艶やかで日本人形のような長い黒髪の女性がいきなり現れる。

「ポケモン相手だけでなく、人間に幻覚を見せることもたやすいわ」

女性の格好は、白いミニワンピのような服で、胸には『R』の文字が。

ルナは女性がロケット団だとわかったのもあるが、ただ者ではないと感じて目を細める。

「今までずいぶん我われのジャマをしてくれたらしいわね。今日はほんのごあいさつよ」

女性はユンゲラーと共に体を浮かせる。

「本物の博士、そしてこの町の人間を救いたければ…、ヤマブキにいらっしゃいな」
「町のみんなが……、このヤロー」

レッドが女性を睨み付けると、逆に睨み付けられる。

するとレッドは強制的に床に叩きつけられる。

そして動けないのか、顔を歪ませる。



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