その言葉に、自分の顔が火照るのを感じた。

火を焚いているため、それで誤魔化すように焚き火に近付く。

そんな事を言われたのは初めてだった。

誰もがルナの両親の事に感付き、触れないようにしてくれる。

確かに無駄に詮索されるよりは嬉しいが、そうすると両親の良さを誰にも伝えられない事になる。

「はい……っ、私の両親は、最高の両親です!」

ニコニコとレッドが優しく微笑んでくれる。

ルナは涙を流さないように必死に、違和感を出さずに瞬きを繰り返してスープをすすり、ご飯を口に入れた。


* * *



『こっちに来てはいけないよ』
『逃げなさい、ルナ』

……嫌だ。

『ルナだけは助けなくては!』
『貴女はこの世界に必要なの』

……嫌だっ、嫌だよ!!

『生きなさい、ルナ』

……嫌だよ、嫌なの、パパとママが居ないなんて!!

そんなの絶対耐えられない!

私は……、パパとママがいれば何もいらなかったのに!

どうしてあの幸せが崩れ去ってしまったの!? 何がいけなかったの!?

私も……パパとママの元に行きたい……。

またあの幸せを  

『ルナ!』

レッド君……?



『オレがお前の側にいる!』



* * *



また違う感じの夢を見たな、と深い溜め息を吐く。

しかし、暗い空間に希望の光をくれた夢の中のレッドに心を温かくならずにはいられなかった。

「起きたか? おはよう!」

レッドが突然横から、笑顔で『おはよう』と言うのに、ルナの心臓はトクトクと鳴り響いていた。

こんなに特別に感じた『おはよう』は初めてだった。

「あ……、おはようございます」
「なんだ〜? まだ寝惚けてねーか?」

ペチペチと頬を叩かれる。

「あぅ。寝惚けて無いですよ」

ただ、まだ夢見心地なのかもしれない。

そうルナが言うと、

「それを『寝惚けてる』っていうんだよ!」

と、レッドが笑う。

それに対してルナは、頬を脹らませ拗ねてしまう。

「誰のせいだと思ってるんですか!!」
「え? 何、オレ?」
「そーですよ」
「何でだよ……?」
「何でだと思いますか?」

少し悪戯っ子ぽく笑うルナ。

レッドは真面目に考えこむが、首をひねるばかりで何も浮かばなかった。

「………何でだよ!?」
「秘密、です!」

その後も、レッドがどう聞いても「秘密」だとしか言わなかったとか。


希望の光は貴方
(でも「秘密」です)


20121119

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