ラッキーのハピ≠ニいう仲間が増え まぁ、そんなこんなで旅路はかなり楽なものになっている。 今は19番水道に足を運んでいた。 「…………?」 満ち引きする潮をしばらく眺めた後、ルナは可愛らしく首をかしげる。 「道がありません……」 ピカチュウから溜め息が聞こえたが、聞こえないフリをしてイーブイを見る。 すると、クールな顔をしたイーブイが海水をパチャパチャ叩く。 「あ、そうか。海を渡れば良いんだね! じゃあ、波乗り≠……」 にぱにぱ笑っているルナに、一時の沈黙が訪れる。 「って……水ポケモンがいないんでした〜!!」 ルナはへなへなとその場に崩れ落ちる。 地図を開くと、ここから海を渡る事が出来るならば、マサラに帰る事が出来るらしい。 脳裏にはリナの笑顔がよぎり、ハッとする。 なんとかして波乗り≠手に入れなければ。 しかし……どうやって? ふと、イーブイをじっと見つめる。 イーブイは本来、進化ポケモンだ。石さえあれば水ポケモンに進化できる。 その意図に気付いてか、少し怯えた目でルナを見た。 イーブイは今では元気そのものだが、かつては進化の事で心がズタズタに傷つけられたポケモンなのだ。仕方がないだろう。 ルナはイーブイを安心させる為に優しく頭を撫でた。 「水ポケモンをどうやって捕まえよっか」 努めて明るく振る舞うと、イーブイは赤い顔でそっぽを向いてしまう。 最近イーブイがツンデレである件について。 その時、波の音に混じって船が素早く駆け抜ける様な激しい音が聞こえてくる。 目を凝らして見ると、少女が何かに乗って猛スピードでこちらに向かっている。 あれは 言葉に発する前に、少女がルナの元に来るが速かった。 その少女はスターミー≠ゥら降りて、ルナに笑いかけた。 「久し振り、ルナ!」 「か……、カスミ〜」 ルナは抱き締めようとカスミに突進するが、ヒラリとかわされた。 「カ、カスミ?」 「ゴメン、急いでるの。……はい」 カスミが手渡したのは一つのスーパーボール。 それに対して首をかしげると、カスミは軽く溜め息を吐く。 「どうせ、丁度今、水ポケモンがいない事に気付いたんでしょ」 「……う」 「で、捕獲下手くその癖に、どうやって捕まえるか考えてたんでしょ」 「………全くその通りです」 ボールを投げてみると、中からパウワウが出てくる。 黒真珠の様な瞳がこちらを向く。あまりの可愛さにくらっとしてしまう。 パウワウはルナに突進する。 牙が当たって痛かったが、それ以外は至福だった。 「あぅ〜、モフモフ〜」 「ゴンちゃん≠諱B波乗りももちろん、使えるわ」 「ありがとう、カスミ!!」 ルナが満面の笑みでカスミにお礼を言う。 カスミはその笑顔を見てたじろぐ。 昔からこの笑顔が、カスミには好きと同時に苦手だった。 ルナの笑顔を見ると、純粋な心を見せつけられているようで、嘘や隠し事をしている自分が酷く情けなく感じるのだ。 「……この先に、レッドがいるわよ」 「へ、レッド君?」 いきなり話が飛躍したように感じたのだろう。目をしばたかせている。 「そう。今頃ふたご島にいるんじゃないかしら」 淡く微笑み、「じゃあね!」と言って走り去ってしまった。 ルナは立ち尽くしていた。 なんだかカスミの去り際の笑顔が、泣きそうな笑顔に見えて 何か自分は悪い事をしたんだろうかと考えていると、足にチクリと痛みが。 「……ゴンちゃん」 何も知らずに新しいご主人様にかまってと言わんばかりに甘えるパウワウ。 まぁ、いいか、なんて思ってしまう。 「じゃあ……目指すはふたご島!」 おー、とルナとポケモン達が拳を空に突き上げた。 去り際の切なき笑顔 (貴女には………敵わない) 20121117 ←|→ [ back ] ×
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