「ストライク……!?」

雄々しく刃である腕を広げて、呼び掛けに答えるように鳴いてみせる。

「あれ、チュカは!? ロコは!? サンは!?」

残りのボールを放つと、全く違うポケモンが出てくる。

「え……、ポリゴン? で、こっちは」

もう一匹は、グリーンのポケモンじゃなかった。

それだけで少し安心できた。

「フッシー……!」

ストライクとポリゴンとは違い、友好的な笑顔を向けてくる彼に思わずウルッときてしまう。

という事はレッドとグリーンとポケモンが入れ替わってしまったのか。

まさか。そんな事になる覚えは  

「あ」

あった。

あの時、三人のボールが散らばっていた。

拾う時に間違ったのだろう。

そんな……。ポリゴンに至ってはグリーンが目の前でボールに収めたではないか。

それでも間違えるなんて阿呆か。

「まぁ、でもこのメンバーでなんとかするしかない……よね?」

フシギソウに目配せするが首を傾げられた。

そんな動作も可愛らしくて、逆に憎らしくなってくる。

「それにしても、久し振りだね。ストライク君」

ニコリと笑うとぴくりと表情を強ばらせる。

なんだか困っている。

ルナは不思議に思うが、すぐにあぁと納得する。

「グリーンさんに言われたんだよね。他の奴と仲良くするな、って」

グリーンの真似をして言うルナに、ストライクがほんの少し笑った気がした。

「……でもね、私には昔と変わらない態度で良いんだよ? 遠慮なんていらない」

「ね?」と昔となんら変わらない無垢な笑顔で言うと、ストライクは静かにルナに擦りよった。

それをルナは、また昔のように頭を撫でてあげた。

小さい時の事を思い出す。

よく一緒にグリーンと遊んだ時に遊んだなぁと思い返す。

「とにかく、タマムシシティに行こっか」

ストライクが小さくうなずく。

「よし、じゃあポリゴンも  ってええぇぇ!?」

振り返ると、ポリゴンが凄く遠くにいた。

いつのまに。

「まっ、待ってくださいいぃぃぃぃ!!」

なるほどこういう風にグリーンとおいかけっこをしていたのかと納得する。


* * *



やっと捕まえたと思ったら、そこはグリーンとぶつかりボールが混ざった場所だった。

捕まえた場所まで同じとは……。

ふとレッドがいないか辺りを見回すと、地面に大型ポケモンの足跡が残っていた。

それはいい。いつのまにかポケモンの足跡がついている事なんてこの世界では当たり前の事だった。

だがその足跡によってできた窪みの中に見知った人間の形に跡がついてるなんて初めて見た。

レッドは大型ポケモン  サイドンかニドキングだろうか  に踏まれたらしい。

足跡の中で転んでめり込んだ、なんていう事がある以外。

なんだかすごい顔の跡がついていた。

「見なかった事にしましょう」


* * *



ゲームセンター。

そこではロケット団として潜入していた時とは違って、賑わいを見せていた。

むしろ五月蝿すぎて耳を塞ぎたくなってしまう。

それになんとなく煙草の臭いも漂ってくる。

ルナはその煙草の臭いに顔をしかめる。

ゲームセンターの中を一通りぐるりと回るが、ほとんどがスロットのようだ。

その際に、周りの男達はルナをアヒルばかりいる溜め池に白鳥が入った様な目で見ていた。

明らかに浮いているのだ。

ルナのあどけない容姿に、男達は鼻の下なんか伸ばしていた。

だがルナはそんな事に気付かずに、丸あきの椅子にすとんと腰かけた。

まぁ、幸か不幸か周りにはガランとして誰もいなかったが。

さてやるかと意気込んだは良いが、全くルールも始めかたすらもわからなかった。

頭を悩ませるも、スロットのルールがパッと天から落ちてくるわけでもなし。

ルナはこういう事に詳しい人にポケモンセンターで電話をかける事にした。


* * *



『はぁ、スロットのルールねえ?』

ルナの妹であるリナは、やっと電話をしてきたと思ったらそんな事かと呆れた。

それでなくとも、いきなり何の脈絡も無しに「スロットのルールを教えて!」なんて言われたら驚くのに。

「やっぱお金が必要なのかな?」
『……』

この言葉には呆れを通り越して、泣きたくなるのだった。



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