タマムシシティ郊外

レッドとルナはブルーに散々振り回され、ミュウ騒動が起きた後だった。

ロケット団アジトがある町にいつまでいたくないというレッドの願いにより、走って町を出ているところだった。

「さてと、こんな物騒な町、さっさと出ちまわないと…と」
「ブルーさんの一件は大変でしたもんね」
「大変ってもんじゃねーよ」

ため息を吐くレッドに苦笑いするしか無かった。

確かに立て続けにロケット団に遭遇してしまって、ルナ的には精神的負担が大きかった。

とは言え、ブルーの事は憎めなかった。

ルナは元々人の事を簡単に憎いとか嫌いとか言いたくない主義の為に、あまり憎むとかしないのだが。

だが、ブルーの場合はそういうものなんだろう。

最初から彼女は憎めない存在なのだと思う。

顔が可愛いというのもあるが、根は優しい。と思う。

とにかく、ブルーとはまた会いたいものだ。

「まてー!!」
『ん?』

突然うしろから大声がし、二人は振り返った。

すると体がカクカクしているポケモンが飛んでくる。

それをなんとかかわすレッド。

「うわっとっとっ」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、……なんだぁ?」

その時、誰かがレッドとルナにぶつかってくる。

その衝動で二人のボールが勢い良くはずれ、ばらまかれる。

「あいててて…。オイ! 気をつけ…」
「あ…」
『グリーン(さん)!』

顔をあげると特徴的なツンツンのうに頭。

間違い無くグリーンだった。

グリーンのボールもばらまかれた様で、地面には三人分のボールが散らばっていた。

「…てことは、さっきのポケモンは…」
「もどれ! ポリゴン!!」

グリーンがボールを投げ、ポリゴンをボールに収めた。

「ポリゴンかあ、すっげえ珍しいのを手に入れたんだな!」
「バーチャルポケモンで人工に作られたポケモンだと言われてます! 初めて見ました!」

興味深げにレッドとルナがグリーンに近付く。

ルナに至っては、ポケモンが沢山住んでいるあの家でさえいないポケモンに、目を輝かせている。

「相変わらずの博学だな……。どこにいたんだ?」
「…スロットの景品だよ」

確かポリゴンを交換する為に必要なコインは9999枚だった気がするのだが。

レッド達がロケット団と戦っている間、ずっと、スロットで遊んでいたのだろうか……。

ルナは今度スロットで遊んでみようかしら、なんて思ったのだった。

「まったく…、自分で捕まえて育てた奴でなきゃ、いうことをきかないとは聞いていたが…、これほどとはな。まったく使えねぇぜ」

その言葉にルナが少し眉をハの字にする。

珍しく、グリーンに対して、というかロケット団以外の人に怒っているらしい。

「使えない、なんて言わないでください。ポリゴンだって貴方になついてくれますよ。なつかせようともしないでそんな事言わないでください」
「……………ふん。…じゃあな、オレはいくぜ」

グリーンはそのルナの言葉に無関心そうに、ボールを腰に付けた。

レッドが慌てて自分の分のボールを拾い集める。

「お〜い、ちょっとまってくれよ」

しかしグリーンは歩を止める事も遅くする事も振り返る事も無く「オレは急いでるんだよ!」と言った。

「やれやれ、あいかわらずヤなヤツだね〜。ま、いいけど」
「私はタマムシに戻ります。先に行っていてください」
「ええ〜?」

突然のルナの言葉に、レッドが不満そうな顔をする。

「な、何ですか?」
「何でわざわざロケット団がいる町なんかに戻んだよ〜」
「ちょっ、ちょっと用事が……」
「ふ〜ん? ……ま、いいか」

レッドは訝しげな顔をするも、ルナが隠すなんてよほどな事なのだと思い詮索はしなかった。

ルナは顔に出していないつもりかもしれないが、安堵したのがバッチリ顔に出ていた。

さすがの鈍感なレッドでも丸わかりだった。

「まぁ、まだここら辺にいると思うから、用事が終わったら一緒に行こうぜ!」
「っはい!」

二人は笑顔で手を振って別れた。

なるべく用事を早く終わそうと決意したり。


* * *



「さすがに、ポリゴンを手に入れる為に、スロットをしに行くなんて言ったら遊びに行くのと勘違いされるよね……」

苦笑いで癖のように自分の脇を見ると、誰もいなかった。

そうだ。ポケモン達はボールの中だ。

ちょっと恥ずかしくなりながらも、ボールを出し、投げた。

次の瞬間、口をポカンと開ける事しか出来なくなる。

自分の目の前には小型でないポケモンが。


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