「あそこだぜ、やつらのアジトは」

レッド達はまたロケット団達のアジトであるゲームセンター前の草むらに来ていた。

「しかし、せっかく逃げたってのに、また、やつらのところに案内しろだなんて…」
「しっ、し・ず・か・に!」

ブツブツと文句を言うレッドを横目にブルーは草むらを漁っていた。

「まあ、やつらも欲しがってたディスクを取り戻せたから、もう追ってはこないだろうけどなあ」
「ところで何を探してるんですか?」

そうルナが聞くと、ブルーは得意気に笑ってみせる。

そして、草むらから手を引き抜いたと思ったら何かを持っていた。

「ジャジャーン!  せっかく手に入れたものを簡単に返したりするもんですか!」

レッドとルナはブルーのちゃっかりさに唖然と口を開けていた。

「とられたのはニセモノよ、ホホ」
「それってそんなに大切なんですか?」
「そうよ! なにせ、これさえあればあこがれのミュウちゃんが…」
「ミュウ!?」
「……ミュウ」

ブルーはミュウの形をしたものを手の上に乗っけて二人に見せる。

ルナは特に反応を示さなかったが、レッドは何かを思い出した様な顔をする。

「こ、こいつはあの時の…。あいつがミュウだったんだ」
「まあ、これはメタちゃんがへんしん≠オたニセのミュウだけど、ちょっと見には本物と区別できないでしょ」

確かによく見ると、通常のミュウより艶っぽい気がした。

と言ってもミュウなんて普通の人はほとんどの人は実物を見た事など無いので気付かない様な差だ。

ミュウの存在を知らない人に変身出来損ないの目が線な、メタモンミュウを見せても疑問を抱かないだろう。

「さあ! もう一発あのロケット団をだましてきちゃってちょうだいね」
「オ…オイ、どうするつもりなんだよ!」
「あたしが本物のミュウちゃんを追っかける間、ロケット団のみなさんと遊んでもらうのよ!」

いっそ清々しいまでのちゃっかりさだった。

「と・こ・ろ・で、さっきのであなた達二人もあたしと仲間ってことになっちゃったからね。もちろん手伝ってもらうわよ」
『………!』

レッドとルナはずいっと迫るブルーに冷や汗を流すしか無かった。

三人がそんなやり取りをしている中、ロケット団はディスクがニセモノである事に気付いていた。

そしてまんまとブルーの企み通りに、ニセのミュウに釣られていた。


* * *



狙った様にゲームセンターから大勢のロケット団が大群を作って、ニセミュウを追っかける為に出てきた。

ふと、レッドの頭に疑問がよぎる。

「大丈夫なのか? すぐバレちまうんじゃねえのか?」
「でしょうね。メタちゃんは、外見は似せられても能力は同じにならないもの」

見事なまでにサラリと言われた。

思わずレッドはずっこける。

「それは?」
「あたしが作ったミュウ発見用のスコープよ」
「えっ、手作りですか!?」

手作りとは思えないゴツゴツとしていて複雑な構成だった。

思わずルナは驚きの声をあげた。

「エスパー系ポケモンはサイコキネシス%凾フ念力波を使う時、体から独特の波長を出してるの。波の形はポケモンによって違っているのよ」
「へー、そうなんですか!!」

ルナは数多の本を読破していても知り得ない知識にキラキラと目を輝かせてブルーを見る。

そんなルナにブルーは照れ臭い思いを感じながらスコープにディスクを挿した。

「だからこのミュウの波長を記録したディスクをセットすれば、ミュウの居場所をキャッチすることができるってわけ」
「わー、すごいですね!!」
「OK! 東南の方向に反応ありよ。これでロケット団のやつらを出しぬいちゃいましょ」

ウィンクをするブルーに、もはやノリノリになってしまったルナが元気に「はいっ」と返事をした事にため息を吐くしか無いレッドだった。


* * *



ブルーがスコープを装着して歩き回り、数十分。

不思議な風が吹く草原に来ていた。

三人は辺りをキョロキョロと見渡す。

しかし、ミュウらしきポケモンの姿も気配も無かった。

「このあたりのはずなんだけど…」

そう言ってブルーはスコープを弄る。

そしてそれを興味津々に除き混むルナ。

レッドはもう座り込んでしまっていた。

「あ…あのさ、オレ…ロケット団のアジトで見たんだけど…。奴ら、ミュウを使って凶悪なポケモンを作り出そうとしてるみたいなんだ」

ブルーが興味なさげに「ふうん」と呟くように言った。

「キミは…ミュウを何のためにさがしてるんだ?」
「そりゃあ決まってるじゃない」

仔犬の様にスコープを見るルナに、スコープを外し、渡しながら言う。

親指と人指し指で円を作り、ウィンク。



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