ルナはタマムシ内をさ迷っていた。

別に迷子になったわけでは無い。単純に買い物をしているだけなのだ。

レッドはタマムシシティの外れで特訓しながら待っていると言っていた。

勿論、両者不安はあったが、新しき仲間『サン』と親睦を深めようと思っての事だった。

しかし思ったよりサンドは人懐っこいのか、すぐに仲良くなる事ができた。

そしてピカチュウとロコンとも仲良さげに戯れる。

性格はロコンよりちゃっかりしている様に見えて、案外しっかりしていた。

ピカチュウがより一層、良いお姉さんになっていた。

それも含めて微笑ましかった。

「えーと、後はポケモン達のご飯かな」

ペチペチとルナの足を叩くサンド。

そちらを向くと、小さな爪で果物屋を指す。

「あ、あった。ありがとう、サン」

撫でてあげると、尻尾をパタパタと振って愛らしかった。

後ろでロコンが嫉妬のオーラを出しているが、ルナは全く気付かない。

「すみませんリンゴを8個!」
「お、お嬢ちゃん可愛いね〜。負けちゃうよ!」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

得しちゃったな、と嬉しくなるルナは金持ちにあらぬ貧乏性だった。

大荷物によろけていると、荷物の間から可愛い女の子が見える。

何してるのかと疑問に思っていると少女は手を広げて声を張り上げた。

「さあさあよってらっしゃい! ポケモンアイテムの大バーゲン! 安いわよーっ」

あまりアイテムには詳しくないルナは素直に、自分と同い年位の少女が売ってるなんて凄いなと思った。

その時、見知った声が割って入る。

「ああーっ、おまえは!」
「あちゃあ、やば…!」

レッドだった。

レッドを見た瞬間、血相を変えた少女は一目散に逃げて行ってしまった。

ルナはそれをただ唖然として見ているだけだった。また、少女の周りに集まっていた人もしかり。

ハッとした時に思った事は、

「レッド君、待ってるって言ったのに……」

だった。

そんな事より追いかけなさいよ、とでも言いたいかの様にピカチュウが呆れた様にルナのスカートを引っ張る。

「そうだね、追いかけないとね」

ピカチュウの言いたい事が伝わり、ルナが少し苦笑いでうなずいた。

しかし……どうやって?

凄いスピードで二人は駆けていってしまった。

ルナのスピードじゃ、追い付かない。

サンドが何か思い付いたのか、ニコニコして自分の背中を指  正確には爪だが  指す。

「へ? 背中に乗れって事?」

コクコク。

肯定された。

「え、でも潰れちゃうんじゃ……」

だが、サンドの皮膚は硬く出来ているから易々と潰れないか。

そう考え直したが、潰れないとしてもどうやって移動するのだろうか。

その時  サンドが高速に回転し始めた。

「高速スピン≠チて……危ないんじゃ」

そう良いながらも、サンドの背中に足をかける。

「へ? え、うわ、いやあぁぁぁぁぁ!!」

玉乗りの如く、ルナが高速に前に進んでいく。

今度はピカチュウとロコンが置いていかれた。

ピカチュウとロコンは顔を見合わせて、そしてゆっくり歩き出す。


* * *



当たり前と言ったら当たり前だが、ルナは途中で吹っ飛ばされてしまった。

とは言え、レッド達に近付いた事には変わらなかった。

しばらく目が回って動けなかったが。

「はぁ、草むらで助かったー。じゃなきゃ死んでましたよ」

側ではサンドが申し訳なさ気に肩を落としていた。

「でも結果的にレッド君達におそらく近付いてるんだから結果オーライだよ」

そう笑うと、サンドが膝にすり寄ってくる。

本当に可愛らしいなと思った。

しばらくすると、ピカチュウとロコンが追い付いて来た。

「最初からこうすれば良かったね。……走るよ!」

一人と三匹でレッドのもとへ走って行く。



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