ここには『ポケットモンスター』、縮めて『ポケモン』が住んでいる。

ポケモンは森や池に住む人間以外の生き物のことである。

現在カントーで発見されているのは150匹。

そしてこの世界にはそのポケモン達をボールに入れて、戦わせる事が出来る人間達の事を『ポケモントレーナー』といった。

ポケモントレーナーが指示する事によってポケモンは動く事ができる。

しかし、野生に住んでいるポケモンは人間の命令無しに動く事が出来る。

その野生のポケモンを、自分のポケモンで戦わせ、捕まえる事によって初めて、自分のポケモンとなる。

また、戦わせる事なく、ペットとしてポケモンを育てる人もいる。

全てに共通して言える事は、

『ポケモンは無くてはならない存在』

という事だった。



「『無くてはならない存在』……うん、そうだよね」

読んでいた本をパタンと閉じた。

「私にとっても、チュカは無くてはならない存在だよ」と向日葵の髪の少女は、真っ白なリボンを揺らしてピカチュウに目を向けた。

彼女のポケモンであるピカチュウのチュカは、凄く嬉しそうに鳴いてみせた。

ピカチュウもまた、右耳に少女と同じ真っ白なリボンを着けていた。


『ポケモンのせいで、こんな事に』


ううん、違う、違うんだ……!

フルフルと首を振る彼女の顔は、一気に青ざめていた。

  ルナ?」

ビクゥ!!

少女の肩が有り得ない位に跳ねた。

振り替えると、自分の大好きで、尊敬している博士がそこにいた。

「オ、オーキド博士……」
「すまん! 驚かせてしまったか?」
「はい、少し……でも大丈夫です!」

考え事をしていた自分も悪いのだ、と少女は向日葵のような笑顔で言ってみせた。

  少女の名はルナといった。

彼女もまた、ポケモントレーナーであるが、戦わせる事はあまりしない。

というより、そういう機会にも巡り会えないのだ。

少女はここのポケモン研究所でオーキド博士の助手として、働いている。

齢は11歳になる所だった。

1月1日生まれは早生まれに値するので、まだ11歳にはなっていない。

そんな子供がなぜポケモン業界の権威であるオーキド博士の助手をやっているかと言えば、オーキド博士が誘ったからだ。

なぜ誘ったか、というのは今は省こう。

「あ、今日はこれから出かけの用事があるんですよね?」
「…………」
「博士?」
「……そうじゃった」

オーキド博士は絶望しきった顔で頭を抱えた。

もしかして忘れていたんだろうか?

「ふふ、心配しなくても準備万端なので大丈夫ですよ!」

オーキド博士の様子に、可笑しそうにクスクスと笑った。

「あ、ああ……良かった。さすがはわしの自慢の助手じゃ」
「い、いえ、それほどでも……」

ルナは顔を赤くして、パッとうつむいた。

今度はオーキド博士がその様子を見て、和やかに笑った。


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