「グ…グリーン!?」
「グリーンさん……?」

  お前は独りじゃない。……覚えておけ。

そう言ってくれた彼は、もうあの時の様に優しく微笑んではくれなかった。

彼はリザードと共に禍々しい雰囲気を醸し出していた。

その目は冷たく光っていた。

確かにグリーンの目は鋭く、人相が悪く見えるが、ルナには優しい瞳だと思った。

だが、今はそれが微塵も感じられない。

それが……どうしようも無く、ルナには悲しかった。

「あの目…! グリーンもこの霧にあやつられて…」
「グリーンさん……」

ルナが一歩、近付いてグリーンの名前を呟く。

しかしグリーンは無言でリザードに攻撃をこちらに差し向ける。

またレッドがボーッとしているルナを引っ張って炎を避けさせる。

「うわっ! ルナ、ボーッとすんなよ!」
「……っ、ごめんなさい……」

レッドは、自分よりもグリーンとは長い付き合いで、しかもただでさえ心配性なルナは相当心配しているのだろうなと思った。

だが、うかうかしている場合でも無いのだ。

そう思っている時、リザードは回転をかけてフシギダネに向かって行くが、それをフシギダネがツルで阻む。

しかし、相手は進化系。進化をしていないフシギダネのツルがいつ切れるかわからなかった。

「くそっ! 防御だけじゃラチがあかないぜ!!」
「でも……!」
「ああ、分かってる。グリーンを攻撃はできない…」

という事は。

二人はグリーンの上を見る。

「サイコキネシスを使うガス状ポケモン…ゴース! こいつをモトから絶たなきゃダメってことか!」
「ですね!」
「よおし! 目標はゴースだ、フシギダネ!」
「ゴースは薄いガス状の生命体で、ガスに包まれるとインド象も2秒で倒れるそうです。気を付けて下さい」
「え」

レッドはフシギダネの葉っぱカッターで攻撃するが当たらず難儀していた。

こちらも負けじとルナはロコンを出す。

だがロコンはいきなり暗い所に出て状況が掴めないのか、キョロキョロと辺りを見渡す。

よりにもよって夜と判断したのか、眠り始めてしまった。

「ち、ちょっとロコー! こんな時に寝ないでー!」
「お、おいルナ! やべえ!ほのおのうず≠セ!」
「!」

そしてリザードはそれを放った。

もうダメ、そう思った時にロコンの口から、ルナが見たことも無い位大きな炎が出た。

リザードの炎とロコンの炎がぶつかり合い、消滅した。

「………………炎の渦=v

新しい技だった。

ロコンのちゃっかりした性格が出たちゃっかりさだった。

その時、風の様なものが起きる。するとゴースが引っ張られていく。

するとグリーンの洗脳が解け、グリーンが膝をつく。

何の風なのかと思い、後ろを振り返るとフシギダネがゴースを吸い込んでいた。

まさかフシギダネはそんな事が出来るなんて。

驚きの出来事に目をしばたかせる。

「よーし! ゴースを全部すいこんじまえ! フシギダネは植物だ! 息をしている背中のタネは、肺活量超ド級だぜ!」

全てを吸い込んだフシギダネは丸くなっていて可愛かった。

そして口を開け、それを壁に向かって放った。

壁に穴が開いた為、タワーに光が射し込む。

「ふいーっ」
「凄いです、レッド君!」

いやあ、と照れた様に頭を掻く。

その時何か倒れる音がした。グリーンだ。

慌てて二人はグリーンのもとに駆け寄る。

「おいっ、しっかりしろグリーン!」
「グリーンさん!」
「ううーん。ん? レッド…ルナ」

いつもの瞳に戻って起き上がるグリーンに思わず抱きつく。

「う……わ!」
「良かった……。良かった……」

引き剥がそうと思ったが、泣きそうな顔をしてくっつくルナに溜め息を吐き、すぐには引き剥がさなかった。

それを苦々しい顔で眺めるレッド。泣きそうなルナの手前、レッドとしても引き剥がせ無かった。

「よかった、もとにもどったな」

本当に良かったと思うが、ルナから離れて欲しい。切実に。

「…チッ! 今日のところはひとまず礼を言っとく。…助かったぜ…」

ルナを優しく引き剥がした後、立ち上がり体についた埃を取りながら言う。

レッドはもう少し素直になれよ、と思う。

「それと」とルナの方を軽く見ながら言葉を繋げる。

「心配かけたな。……すまない」

嗚呼、やっぱりグリーンはそうでなきゃ。

ルナはそう思いながら微笑む。

そのやりとりもレッドにとっては面白くないもので。

「ま、まずは塔を出よう。ここは、なんだかやばいよ。ルナもそうしたいだろ?」
「勿論!」

だが、グリーンは階段の方へ向かって行く。

「ちょっ…ちょっと待てよ! どうするつもりなんだ?」
「くそっ、あのヤロウ!」
『あのヤロウ?』

レッドとルナは声を合わせて、不思議そうにグリーンを見る。

どのヤロウなんだろうか。

だがグリーン様は相当お怒りの様で、

「オレにおかしな技をかけやがって…」


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