『ユ…ユーレイ!?』

レッドとルナが同時に立ち上がる。

だが理由は全く逆だった。

「ぷっ! はっははははは!! ユーレイだって! ポケモンのユーレイ!!」
「ユ、ユ、ユユユユユユーレイ!?」

レッドとそのポケモンは大笑いし、ルナとピカチュウは恐怖で震え上がる。

そこまで笑う事も、恐怖を感じる事も無いと思うが。

「キミ達も見たろう、町の人々の様子を…」

ルナは先程の嫌な予感と疑心暗鬼の顔を思い返し、自分の背中に感じる寒気を必死に気のせいだと自分に言い聞かせる。

「みんな幽霊の噂に恐怖し、お互いを信頼することも忘れとる。ヨソ者になど見向きもせん!」
「……うぅ」
「ルナ、お前さっきから静かだと思ったら、ユーレイを信じてんのか?」
「だ、だって……」
「ユーレイなんていねーよ!」

そう自信満々に笑ってみせる。

だが、そんな事言われても怖いものは怖いのだ。

「まあ、信じる信じないはキミの自由じゃがね」

そう言いながら写真の様なものを取り出す。

レッドとルナは身を乗りだし、写真を見つめる。

そこには卵から産まれたばかりらしいドードーが写っていた。

「それ…、死んじゃったポケモンの…」
「そうじゃよ。できればあんな所でなく、キチンとしたお墓で眠らせてやりたいものじゃが…」
「かわいがってたんだね…」

写真を手にとって見る。

円らな瞳のドードーがなんとも可愛らしかった。

写真の中のドードーとフジ老人氏がとても幸せそうで、死んでしまったのかと思うと感受性豊かなルナは涙が出そうだった。

ふと、ルナの手の内の写真に気になるものが見える。

じっくりと見て、しばらくしてからやっと時間差で驚いてしまう。

「れ、レレレレッド君!」
「ん? なんだよ。………………グ…グググググリーン!?」

そう。その写真には、まだ生きていたドードーとフジ老人、そしてグリーンが仏頂面で写っていた。

「その子を…知っとるのかね!?」
「オ…オレ達、この図鑑に全ポケモンのデータを書き入れる旅をしているんだけど…、同じ目的で旅をしているライバルがこいつなんです!」
「そうか…。この子はドードーが死ぬ直前、この町にやってきてのう…」

切なげに写真を見ながら言うフジ老人に、レッドが興奮した様にグリーンの場所を尋ねる。

「キミと同じじゃよ。ユーレイの話をしたら笑いとばして…」

ルナはごくりという音が聞こえたが、自分がたてた音かレッドがたてた音かはわからなかった。

なんだか妙に緊張してしまう。

うなずいて続きを催促する。

「調べてくると言ってタワーへ出かけて行ったままもう2週間も戻ってこん」
『!!』

レッドとルナの目が見開く。

しかもグリーンだけで無く、ここ数ヶ月でタワーに言った者は誰一人戻ってきていないと言う。

二人はその話を聞いた後、しばらくしてフジ老人にお礼を言い、フジ老人宅を後にした。

その間二人は言葉を一切交わさずに、考え事をしていた。

ルナはフジ老人の事、幽霊の事、ここ数ヶ月の事、そしてグリーンの事。

グリーンとルナは以外に長い付き合いで、ルナは彼の実力は充分理解していた。

  グリーンさんがどうして。

「グリーンが行方不明…」
「おかしいですよね」
「あぁ。あいつはイヤミな性格だげど、ポケモントレーナーとしての実力はホンモノだ。そう簡単にやられるとは思えない…よなあ…」

どうやらレッドもルナと同じ事を考えていたらしい。

ルナが真剣な顔で軽くうなずく。

「だとしたら…、やっぱり出るのか? ユーレイが…!!」
  っ」

そのレッドの言葉にびくりと体を震わせる。

やはり幽霊は怖いし、『苦手』なのだ。それはルナの肩に乗っているピカチュウもそうだった。

そんなルナはお構いなしに、レッドはタワーを睨んだ後に思い切り走って行ってしまう。

「ええい! あのヤローが挑戦したってのに、このオレ様が逃げ出せるかってんだ!! 暴いてやるぜ、ユーレイとやらの正体!!」
「あ……、レッド君!」

行ってしまった。

「ユーレイ……やっぱり怖いです、よね」

ピカチュウが何度もうなずく。

ルナは手を口に添えて、考える素振りをする。

そして少し目を閉じて、口を開ける。

「よし、行こう!」

そう言ってタワーへと走って行く。

一瞬、目を閉じた時に見えたグリーンの笑顔を胸に  


* * *



急いでレッドの後を追いかけ、タワーへと二人で入っていく。ルナがレッドの腕にしがみついて。


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