岬の小屋。 バーを下に下げると、1と2と書いてある大きな機械が震える。 そして煙と共に機械の中から出てくる『人間』。 「やれやれ助かったわ。分離プログラムは内側におったら押せへんさかいに、困っとったんや」 「これって…」 「ポケモン転送マシンや。ポケモンやアイテムを離れた場所に転送できるっちゅうすぐれモンやでぇ!」 「ス…スゲエ!」 「ところが」と手を顎にあてがう。 「うっかり機械にまきこまれてしもうて、転送先にあのコラッタがおったさかいに合体してあのザマや」 それを聞いて苦笑いになるレッド。 同時に納得する。 「そや、あいさつのやりなおしや。わいはマサキ」 「あ…オレはレッド。オレ…、最強のポケモントレーナーを目指して旅をしてんだ!」 「最強か…。すごいやないか」 マサキに褒められ、レッドは「いやあ」と照れたように頭を掻く。 「そらええ。助けてもらたお礼や! ポケモン評論家のこのマサキ、何でも相談にのりまっせ! まずは、その重そうな荷物!」 「預かっとくわ」とボールをひったくる。 軽いノリでてきぱきと喋るマサキ。 「わっとと」 「この転送マシンで、どこにいても即時お届けしまっせ、ダンナ」 だがボールの中身は 「ひっ!? オ…オニドリル!」 そう驚いて引っくり返るマサキに声をあげて笑う。 だが、途中で思い出した様に横を見る。 横のルナは眉間に皺を寄せて、真面目な顔で俯いていた。 レッドが思わず自分はまた何か無神経な事を言っただろうか、と自分が言った言葉を思い返すが思い当たらない。 マサキもそれを見て首をかしげる。 「どうした、ルナ?」 「 「ん? 何や?」 次の瞬間、ルナがマサキの手を取り握り締める。 一瞬、レッドが苦い顔をするが、それは誰も見ていなかった。 「どうして戻ってしまったんですか!?」 「は!?」 「マサキさんのコラッタ姿はとても可愛らしかったのに!」 「ひ!?」 「あ! むしろ、今度はピカチュウと合体しますか!?」 「ふ!?」 「でも、マサキさんにはポケモン界のアイドルなピカチュウより、大量に出現するコラッタの方がピッタリだと思うんです!」 「へ!?」 「コラッタになって下さい!!」 「ほ!?」 ズイ、とマサキに顔を近付けるルナ。 目が怖すぎて、マサキの汗が止まらなかった。 突然、ベリッとマサキとルナを剥がすレッド。 「や、やっと戻れたんだから、可哀想だろ!」 顔を真っ赤にしながら言う。 軽く嫉妬してるなんて微塵も気付かずに首をかしげるルナ。 だがルナは何かを思い付いたのかポン、と手を叩く。 「レッド君がコラッタになってくれるんですね!」 「え!?」 「でも、レッド君の場合はコラッタよりピカチュウがピッタリです!」 「は!?」 「ピカチュウになって下さい!! さぁ!」 「う……、うわぁぁぁぁ!」 「あ! 逃げないで下さい!!」 漫才か、と呆れた様な目線を送るマサキ。 でも面白いお嬢ちゃんだとも思った。 この天然が旅を楽しくさせているのだろう。 鬼ごっこと漫才 (楽しい旅路に幸あれ) 20120930 ←|→ [ back ] ×
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