人に理解して貰えないのは、苦しくて、辛い事だった。

現に、ルナとカスミはレッドにわかってもらえず、辛かった。

「………カスミ」
「何?」
「私と、バトルしよう」
「!」

突然の御誘いだった。

だが、

「……ええ」

カスミはルナの真剣な瞳を見て、ゆっくりと頷いた。


* * *



場所変わってここはハナダジム。

レッドは知らないが、ルナは彼女がハナダのジムリーダーな事を知っていた。

カスミとは長い付き合いだから、知らないわけが無いのだが。

「使うポケモンは2体。入れ換えは無し」
「はい」
「……じゃあ」
『バトルスタート!!』

二人共、先程ポケモンセンターさながらの装置から出したばかりのボールを握る。

そして息がピッタリにボールを投げる。

「ロコ!」
「ヒトちゃん!」

ルナのポケモンはカスミのポケモンと相性が悪かった。

カスミは思わずニヤリと笑う。

「残念だったわね」
「……相性なんて、関係無いよ」

そう、彼が教えてくれたから。

「ロコ、妖しい光=v
「しまった! ヒトちゃん水鉄砲≠ナ吹き飛ばして!」
「させない……!」

ヒトデマンが光に向かって水鉄砲≠放つが、光は不思議な方向へと曲がる。

それを見たヒトデマンは混乱する。

「ヒトちゃん!」

その時、突然辺りが眩しくなる。

カスミが驚いて上を見上げると、ジム内にも関わらず、太陽が照っていた。

カスミはともかく、ルナの格好は暑くは無いのだろうか。

「……日本晴れ=v
「そう。これがある限り、炎タイプの技の威力が上がる!」

先程のルナに技を命令した素振りがあっただろうか。

カスミは思わず考えてしまう。

「スキあり!火炎放射=I」
  !高速スピン=I」

 ヒトデマンが素早く回り、火炎放射≠弾く。

  効かなかった。

そう見えた。が、

「ヒトちゃん!?」

ヒトデマンはパタリと力無く倒れた。

「ありがとう、ヒトちゃん。次は貴方よ、スタちゃん!」

ヒトデマンをボールに戻し、その進化型のスターミーを出した。

後ろの星がくるくると回る。見ていると目が回りそうだった。

「先手必勝! スタちゃんバブル光線=I」
「ロコ!」

 効果はバツグンだった。

 相性もあるが、一発KOできる位にスターミーは強いという事だろう。

「ゴメンね、ロコ。ゆっくり休んでね。  チュカ!」

ピカチュウはやる気満々な表情をしていた。

今度はカスミの方が相性は悪かった。

だが、力量はスターミーの方が上だろう。

「スタちゃん、バブル光線=I」
「チュカ、電気ショック=I」

ほぼ同時に技を出す。若干カスミが速かったのかもしれない。

電気ショック≠フ方が優勢かと思われたが、意外にもどちらにもヒットする。

「スタちゃん!」「チュカ!」

だが、どうやらピカチュウの方が打たれ強かった。

スターミーより速く起き上がった。

そして、互いにアイコンタクトをして動く。

「チュカ!電光石火=I」

その名の通り、電光石火の如くスターミーを攻撃する。

「くっ、スタちゃん、もう一回バブル光線!!」
「チュカ10万ボルト!!」


* * *



「負けたわ! なのに清々しい!」
「スゴい楽しかった!」

ふふ、と笑いあう二人。

ふとカスミがスッと目を細める。

「私、もう少し夜が更けったらレッドを襲おうと思うの」
「……えっ!?」
「そうすればレッドも少しはやる気に  
「ダメですよ! せめて18歳になってからじゃないと!」
「違うわよ!! 何て勘違いしてるの!」

どちらも真っ赤な顔だった。

ルナは至って真面目だ。そんな事は長い付き合いなのだから分かった。

だが、それが一番厄介だと思う。

詳しく説明すると「あぁ、そっちですか」とようやく分かったのか恥ずかしそうに頭を掻く。

「アイツには目を覚ましてもらわないとね!」

ウインクをして見せるカスミはとっても可愛いかった。

そして「だって……」と少し俯く。

「今までロケット団のせいでルナは辛い思いをしてきたのに……」


* * *



次の日。

ルナの目覚めは悪かった。

なぜかはわかっている。嫌な夢、見たくもない夢を見たからだ。



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