―水の町 ハナダシティ―

水の町と名前があるだけあって水が綺麗で、澄んだ水の匂いがルナの鼻をくすぐる。

ルナはこういう匂いが好きだった。なんというか自然が醸し出す匂いというか。

トキワの森やニビシティは慣れていなくとも、ハナダシティはよく行っていた  家のポケモンのテレポートで  ので用がある場所には真っ先に着いた。

むしろ、無意識に足が動いた。

ハナダ一の豪邸を目の前にして、ここまでポケモンセンターを見つめる様な顔をする人は珍しいだろう。

大きさとしてはルナの家とどんぐりの背比べと言った所だろう。

ただ羨ましい点としては、家の下に水が敷かれている事だった。

ルナの家は庭が大きいので、花が敷き詰められている。

ただやっぱり人の家の方が立派に見えるのは隣の芝生は碧いと言う事だろう。

「カスミの家は久しぶりだね!」

そう2匹に言うと、ご機嫌に頷く。

とりあえず、インターホンを押さなければ話は進まない。

少し緊張してインターホンを鳴らす。

すると、パタパタと音がしてくる。おそらくメイドさんだろう。

「どちらさ  ルナ様!」

見慣れたメイドにお久しぶりです、と丁寧にお辞儀をする。

「カスミ様、ルナ様がいらっしゃいました  !」

すると、すぐにドレスのカスミが顔を出した。

かと思っていると凄いスピードでルナの目の前に来る。

「久しぶりね、ルナ!」
「本当に!」

パン、とハイタッチする二人。

「今、食事にする所なの、食べていって!」

返事が返ってくる前に強引にルナを家に入れるカスミ。

相変わらずだな、と微笑ましく思ってしまう。


* * *



服はカスミに洗ってあげる、と言われ干してある。

ポケモン達は本格的な回復装置で回復している。ちなみに、ルナの家にも何台かあったりする。ただ、マサラの空気とトキワの空気でほとんど回復する事が出来るのだが。

服を干してあるなら、今の服装はと言うと  

「毎回思うんだけど、食事の時なのに何でドレスなの……?」
「良いじゃない! 可愛いんだから!」
「う〜……」

そう、今ルナは白銀のドレスを纏っていた。

腰のラインがはっきり見えてスタイルが良く見える。子供ながら恐ろしいスタイルだった。

いつもの可愛い雰囲気に綺麗が足されていて、それはもう言葉では言い表せない位美しかった。

別にドレスを着る事自体は慣れっこになっているが、ドレスを着て食事をするのはどうしても慣れなかった。

自然とドレスを汚すまいとしてしまって、食事の時でも気を抜けないのだ。

「ま、とにかく行った行った!」

気が進まないが、カスミに引っ張られて食事処に行く。


* * *



食事処では暖炉があり、壁には絵画が飾ってありいかにもお金持ちな雰囲気だった。

壁の側にはメイドさん達が一列にズラリと並んでいた。

大人数が座れそうな長机の上にはレストラン顔負けの豪華な感じに飾り付けられていた。蝋燭や観葉植物が味を出していた。

自分の家でもいつの日かはこんな感じだったな、とルナは懐かしむ。

「そういえば、言い忘れてたけど今日お客様がいるから」
「え!? それを早く言ってよ!!」
「まぁ、多分仲良く出来ると思うわ」

ルナが自身のドレス姿を気にしていると「あ、あれあれ」と指差す。あれって。

「あ、れ?」
「おまたせ、レッド!」
「ヒュ〜! 馬にも衣装とはこのことだぜ!」
「馬子にも…でしょ! それより私の友達が来たから仲良くしてね」
「友達? ……え」
『あ    っ!!』

ルナとレッドが顔を合わせたかと思えば互いに指を差す。

こんな偶然って、と思いながらルナは少し興奮しながらレッドの手を掴む。

「やはりレッド君でしたか!!」
「知り合い?」
「うん、一緒に旅をしたりしているの!」
「へ〜……」

カスミが意外そうな顔をする。

一方、レッドはルナがタメ口な事に驚いた。それ以前にこの二人が知り合いだなんて驚きだった。

性格が正反対過ぎて釣り合わなさそうだなんて思ってしまう。

「とりあえず、食事にしましょう」

ルナが笑顔で返事をする。

  が、大変なのはこの後だった。

「……ルナ、そのドレス、似合ってるし可愛いんだけどさ。なんか着慣れてないか?」
「え!?」
「そりゃあ、そうでしょ。だってルナは  
「わーわー!! そんな事ありません! ドレスなんて初めて着ました、スゴーイ!!」

突然わざとらしい声を出すルナに、真実を知っているカスミは訝しげに見つめる。


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